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米国惑星協会エグゼクティブディレクター  ルイス・フリードマン「競争しながら協力できるチャンスをつくる」
 ルイス・フリードマン 写真 これからは国際協力を全面に出していくべきだと思います。先ほど松尾先生がお話なさっていたIACGが誕生した1980年代は、アメリカがまだ惑星探査に積極的に参加していない時期でした。現在は、アメリカ独自のミッションを確かに持っていますが、同時に多くの国がそれに参加できるというような状況に変わってきています。国際協力を本格的に進められる機運が高まってきたといえるでしょう。月探査に関しても、各国で競争しながら協力できるチャンスがたくさんあると思います。
月に関して、私たちは「International Lunar Decade(国際的な月の10年間)」という表現をしますが、2007年から2020年、必ずしも10年である必要はありませんが、だいたいそれくらいの期間において、月のプロジェクトの国際協力を進めてはどうかという話をしています。「International Lunar Decade」においては、各国が独自に月の探査を行うと共に、国際的なプログラムに参加できるチャンスがあります。日本やヨーロッパだけでなく、中国やインドも月探査に参加しつつありますが、きっと日本の構想にも影響を与えることでしょう。

日本は「はやぶさ」で非常に素晴らしい業績を残しました。世界における日本の認識が着実に変化してきていると思います。今後も宇宙探査ミッションをぜひ推進して頂きたいです。また、日本には有人ミッションに対する期待もあります。
ところで、私は「JAXA長期ビジョン2025」を拝見しました。かつて日本の宇宙プログラムでは、ロボット的なこと、技術開発に重点が置かれていたと思いますが、長期ビジョンを見ると、有人飛行、あるいは月探査にも重点が置かれるようになったと思いました。中国や欧米に影響されて、日本もそう変わったのか? 日本が今後どういう方向を目指しているか、火星探査についてどう考えているかも含めて、逆に質問させていただきたいと思います。

的川:宇宙開発委員会の松尾先生にお答えいただきましょう。

松尾:日本の場合、あるターゲットを決めたとしても、その方針は、固体惑星の内部、始原天体、上層大気(プラズマ物理学)といういずれも日本が得意とする分野に絞ってやっていこうという話になっています。ですから、火星についても、火星というカテゴリーで見たのでなく、むしろプラズマ物理学の観点から火星探査機「のぞみ」を打ち上げました。
また、有人飛行については、 ISS(国際宇宙ステーション)に参加することによって、有人技術を学ぼうとしたところは確かにあります。しかし、日本が有人飛行に乗り出すには、一般の皆様の気運といいますか、国としての高まりみたいなものが必要であり、それがまだ欠けているんじゃないかと思います。

的川: 現在、JAXAの長期ビジョンを元に、宇宙開発委員会がリードして、国としての長期ビジョンを作りつつあります。先ほど松尾先生が、我が国の基本方針をしっかりと確立し、それに沿った形で国際協力をやっていく。国際協力に流されるという形ではなく、自分自身の立場を確立するのが重要だとおっしゃいましたが、そのような方向でぜひ日本の宇宙開発の議論をリードしていただきたいと思います。
確かに日本は、アメリカに比べると、宇宙開発の層が薄いですが、「はやぶさ」のようなミッションを積み上げることによって、それを見ながら育った世代が、10年後、20年後にとても大きな力になってくることは確かです。ですから、宇宙に熱い思いをもって日本を担う、そういう若者をぜひ育てていきたいと思います。そして、その中で有人宇宙も無人探査も両方考えていくというのが正道ではないかと思います。
皆さんも、ぜひご家庭や職場で、宇宙についていろいろな議論をしていただけたらと思います。また、今後も宇宙探査、さらには宇宙開発全般へのご支援をお願いします。


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