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JAXAのX線天文観測「世界をリードする日本のX線天文観測 ―――激動する宇宙のシグナルをとらえて謎を解く」
X線天文学とは 人間には見えない光――X線で宇宙を探る
可視光――人間が見ることのできる光は、光の中のほんの一部に過ぎません。私たちが目で直接見ることができない光も、特殊な望遠鏡を使えば見ることができます。
						X線で見える宇宙は、数千万度から数億度という超高温で凄まじいエネルギーが発せられている世界です。その主役は、中性子星やブラックホール、超新星の残骸そして銀河や銀河団など。広大な宇宙を読み解くために不可欠なX線の観測も、はじまってからまだわずか40年あまりで、まだまだわからないことだらけ。しかし、言い換えると、“新たな発見に溢れた領域”――X線天文学は、これまで人類が知りえなかった現象に挑む学問なのです。

X線とは

X線は光の一種です。光とは、真空中で秒速30万kmの速さで進む波のことで、「電磁波」とも呼ばれます。
紫外線や赤外線も「光=電磁波」の一種で、人間が肉眼で見ることのできる可視光も同様です。光のエネルギーと温度は密接な関係があり、低い温度なら低いエネルギーの光、高い温度なら高いエネルギーの光を出しています。人間の場合、体温がおおよそ36゚Cだとすると、赤外線を出していることになります。X線のエネルギーは赤外線や可視光に比べて非常に大きく、X線を放つものの温度は数百万〜1億゚Cという超高温。
エネルギーが高いので透過力に優れているのですが、宇宙からのX線は地球の厚い大気に吸収されてしまい、地表には届きません。
 



なぜX線なのか

X線を見るということは、非常に高温の状態にある宇宙を見るということ。
太陽の表面温度は約6000゚Cで、主に可視光を出していますが、X線を発するような星は、太陽の1000〜10000倍くらいの温度、つまり1000万゚C以上ということになります。宇宙空間でのX線観測が可能となるまで、そうした非常に高温な宇宙は、人類にとって想像すらできない世界でした。
X線を観測する前に私たちが見ていた宇宙は、可視光で見える星や銀河でした。対して、X線で見える宇宙は、ブラックホールや、超新星の残骸など熱く激動する世界です。銀河が数百個から数千個集まった銀河団では、X線を出す高温のガスの中に銀河が浮かんでいるということもわかってきました。現在では、こうした激しい現象が百数十億光年のかなたから、私たちの銀河にいたるまで宇宙のさまざまな領域にわたって起きていることがわかっています。その世界を解明することなしに、宇宙を知ることはできません。X線は、宇宙の起源、誕生、運命を解き明かす非常に重要な手がかりなのです。

1  2  3 X線で見る世界
1.X線天文学とは 2.世界をリードする日本のX線天文学 3.ASTRO-EII--2005年夏、宇宙へ
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