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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(3)国家航空宇宙局規則(米国、抄訳、C.F.R.Title 14)

1214.3. [NASA又はNASA関連搭載物のための搭乗科学技術者]

1214.301. 定義


(a) 搭乗科学技術者(訳者注:ペイロード・スペシャリスト:payload specialist):搭乗科学技術者とは、NASAの宇宙飛行士(船長、操縦士、及び搭乗運用技術者)以外の個人で、1以上の搭載物の運用その他の基本的な運用活動に関して専門的な任務を遂行するためにスペースシャトルへの搭乗を必要とされるものをいう。
(b) NASA又はNASA関連搭載物:NASA又はNASA関連搭載物とは、NASA計画室により又はNASAが利益を共有する他の当事者により開発された器具、宇宙装備及び支援ハードウエアの特別な補足物で、宇宙空間における運用又は別個の活動を遂行するするために宇宙に運搬されるものをいう。
(c) 運用:計画目標を達成するために宇宙における整合する一組の調査又は活動を実施すること。単一の運用が一以上の飛行を必要とし、又は一以上の運用が単一の飛行で達成されることもある。
(d) 運用管理者(ミッション・マネジャー:mission manager):運用管理者とは、STS飛行の搭載物の部分の実施について責任を有する職員をいう。
(e) 搭乗運用技術者(ミッション・スペシャリスト:mission specialist):搭乗運用技術者とは、搭載物の運用に関連するSTSシステムの運用の訓練を受け、これに熟練したかつ搭乗運用技術者の飛行に伴って搭載された搭載物の運用上の要件と目的に完全に精通しているNASAの宇宙飛行士をいう。搭乗運用技術者は、飛行のために任命された場合には、運用の立案に参加し、全体的な搭載物/STS相互活動の調整について責任を有する。搭乗運用技術者は、承認済の飛行計画に基づく飛行の搭載物の運用段階中、結合した搭載物の目的達成のためのSTS資源及び乗員資源の割当てを指揮する。


1214.305. 搭乗科学技術者の責任

(a) 飛行要員との関係:船長は乗員の統合及び運用の安全かつ成功裡の実施につき責任を有する。船長は、乗員と機体の安全に関して、最終的責任を有し、かつ、乗員に割り当てられたすべての義務につき権限を有する。搭乗科学技術者は船長の権限に対して責任を有し、運用規則及び搭載物運用管理センターの指令に従い運用する。搭乗科学技術者は乗員の不可欠な一員として運用するよう期待され、船長により定められる乗員活動に参加する。
(b) 搭載物の要素の運用:搭乗科学技術者は、割り当てられた搭載物の要素の運用について責任を有する。割り当てられた搭載物の運用に関する機上での決定は搭載物専門家によって行われる。搭乗科学技術者は、搭載物の要素間の問題を解決するために任命されるのであり、装備の失敗又はSTSの要素から生じ得る飛行計画の変更を承認する。STSの要素の場合に、搭乗運用技術者は、搭乗科学技術者による搭載物に関連する決定のための可能な選択を提示する。
(c) STSの装備の運用:搭乗科学技術者は、ハッチ、食料及び衛生システムのような若干のオービター・システムの運用方法に精通しかつ、非常時の脱出を含む、安全な乗員の活動に必要な通常及び緊急時の手続きに熟達する責任を有する。オービター・システム及び付属の搭載物支援システムの軌道上での管理の責任、並びに船外活動及び遠隔操作システムによる搭載物の運用についての責任は、長期訓練がこれらのシステムの安全かつ能率的な運用のために必要なので、飛行要員にある。NASAの飛行要員は、スペースラブ及び暫定的な上段システムのようなオービター・システム及び標準搭載物支援システムを運用する。搭乗科学技術者は、船長の承認を得て、搭載物との広範なインターフェースを有する搭載物支援システムを運用する。



1214.7. 宇宙輸送システム(STS)の船長の権限


1214.701. 定義

(a) STSの要素:STSの要素は、オービター、外部タンク、二基の固体燃料ロケット、スペースラブ、上段ロケット(スピン式固定上段部及び臨時上段部)及びNASA管理指令第8040.9に規定された他の部分からなる。
(b) 飛行要員:飛行要員は、船長、操縦士及び搭乗運用技術者からなる。
(c) 飛行:飛行とは、スペースシャトルの打ち上げから着陸までの期間、地球軌道を一周する飛行をいう(不時着の場合には、スペースシャトル船長の権限は、管轄権を有する機関がオービター、機上の乗員及び財産についての責任を引き継ぐまで継続する。)
(d) 飛行段階:飛行段階は、打上げ、軌道上、軌道離脱、突入、着陸及び着陸後からなる。
(e) 搭載物(ペイロード;payload):搭載物とは、科学的ミッション又は別個の活動を達成するために宇宙空間に運搬される器具、宇宙装備及び支援ハードウエア/ソフトウエアの特別な補足物をいう。
(f) 搭乗要員:搭乗要員とは、STSの飛行期間中オービター又はスペースラブに実際に搭乗しているこれらの飛行士その他の者(他の宇宙機より移乗した者を含む。)をいい、達成すべきミッションと関連した船外活動を行う者を含む。


1214.702. 船長の権限及び責任

(a) STSの船長は、STS飛行期間中、自己の裁量で次の目的のために必要な行動をとる絶対的な権限を有する。(1)秩序及び規律を強化する。(2)機上のすべての要員の安全及び安寧を与える。(3)STSによって運搬され、役立てられたSTS飛行要素及び搭載物を保護する。船長は、飛行中、物理的な力の使用を含む、これらの目的を達成するために合理的かつ必要な手段を使用する権限を有する。
(b) 船長の権限は、連邦公務員、使用人及び合衆国の国民であるかどうかを問わずその他のすべての者に及ぶ。
(c) 船長の権限はスペースシャトルのすべての要素、搭載物、及びスペースシャトルの運用に起因する又はその一部と定義されるすべての活動に及ぶ。
(d) 船長は、そのような行動がスペースシャトルの要素及び機上の乗員の安全のために必要であると考える場合には、機上の要員のうちのいずれの者をも、その者を適当な当局に引き渡すことが可能となる時点まで、状況により必要とされる拘束に従わせることができる。


1214.704. 違反

(a) STSの飛行中、機上にあるすべての乗員は船長の権限に従わねばならないのであり、本項によって認められた船長の命令及び指令に従う。
(b) この規則は、合衆国法第18.799の意味における規則であり、本条項の規定若しくは本条項に基づき発令される命令又は指揮に故意に違反する又は違反しようとする若しくは違反しようと共謀するものは誰でも、5,000ドル以下の科料又は1年以下の禁固刑又はその両方に処するものとする。


1214.908. 特許及びデータの権利


 NASAは、利用者により私的に資金調達された又は本条項に規定される政策に基づき利用者がNASAに償還した活動から生ずる発明、特許又は所有権が設定されたデータに対する権利を得ることはない。ただし、NASA長官が、活動が公衆衛生、安全又は福祉に著しい影響を有するということを決定する場合には、NASAは、その成果がその状況下において合理的な期間及び条件で公衆の利用に提供されるという保証を利用者から得ることができる。


1214.909. 搭載物に対する損害


 利用者価格は、合衆国政府、その契約者その他のSTS利用者の過失により搭載物に対して生ずることのある損害についての偶発的な危険に対する準備金又は保険料を含んでいない。従って、合衆国政府は、利用者の搭載物に対する損傷又は滅失についての危険を負担しない。利用者は、当該危険を負担するものとし又は当該危険に対する保険の保護を得るものとする。利用者及び打上げ業務を移転され、分担され又は割り当てられたいずれかの者は打上げ業務協定において賠償責任の相互放棄に同意するよう要求される。



1214.17 宇宙飛行参加者


1214.1703 定義

(a) 宇宙飛行参加者:この規則に基づきスペースシャトルの飛行中、スペースシャトル上にあることを許可されるすべての者をいう。
(b) 委員会:宇宙飛行参加者評価委員会は、宇宙飛行参加者計画を運営し、管理するためにNASAの本部に設置される。この委員会は、次のNASAの本部職員で構成される。次席次官(議長)、法律顧問、国際局局長、管理局局長、宇宙飛行局局長、公報局局長、及び機会均等局次長。


1214.1704 政策

(a) NASAの政策はスペースシャトル上にあることが搭載物の運用その他の基本的なミッション活動のために必要とされるものではないけれども、NASA長官によってNASAの他の承認済の目的に貢献し又は国益に適う旨決定される者(NASAの宇宙飛行士及び搭乗科学技術者の職種以外の個人)にスペースシャトルによる飛行機会を与えることである。ただし、宇宙飛行参加者の飛行機会は短期的に提供されるものではない。NASAは、安全性及びミッションの検討に従い、いつ将来の宇宙飛行参加者に宇宙飛行の機会の配分及び割当を開始することができるかを決定するために、毎年シャトルの運用並びにミッション及び搭載物の要件を評価する。NASAが飛行機会を宇宙飛行参加者に提供することができると決定する場合には、最初の優先権は、宇宙教育案の実施のために「宇宙空間における教師」に与えられる。
((b)は省略)
(c) 宇宙飛行参加候補者として認められた者は、訓練、飛行、報告及び飛行後の活動につきNASAと協定を締結する。この協定は、少なくとも各当事者の責任及び権限、適当な場合の補償、保険、及び賠償責任のような関連事項を含む。


1217 宇宙物品の免税入国


1217.101 適用可能性

 この項は、1983年1月27日と1994年12月31日の間に合衆国の関税領域における消費のために倉庫に入る又は倉庫から出される適格な物品及びNASAにより宇宙から帰還する物品に適用される。


1217.102 背景


 公法第97-446号第116条は、宇宙空間の探査及び利用のためのNASAの打上げ業務の使用を奨励し、促進するために、次の二つの条件を満たす若干の物品の合衆国への免税入国の措置を講ずる。第一に、当該物品は、NASAの宇宙関連活動用に輸入され、又は、当該物品がその他の人又は団体によってNASAとの打ち上げ業務協定に基づく自己の義務を履行するために輸入されるものでなければならない。第二に、NASAは、関税局長官に対して、免税入国する物品が宇宙空間に打ち上げられるために輸入されること又は宇宙空間への打上げに関する使用のための予備部品若しくは当該使用のために必要かつ固有の関連支援装備であることを証明しなければならない。この免税は合衆国の関税調整表(HTSUS)(19U.S.C. 1202)の項目9808.00.80号において定められる。合衆国の関税調整表第8章98-25頁は、公法第97-446号第116条に基づき、NASAによる宇宙空間からの物品の合衆国への帰還は輸入とみなされず、従って関税を必要としないと定めている。

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