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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(5) 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約
(1966年12月13日採択、第21会期国際連合総会決議2222号、1967年10月10日発効)

 この条約の当事国は、
 人間の宇宙空間への進入の結果、人類の前に展開する広大な将来性に鼓舞され、
 平和目的のための宇宙空間の探査及び利用の進歩が全人類の共同の利益であることを認識し、
 宇宙空間の探査及び利用がすべての人民のために、その経済的又は科学的発展の程度にかかわりなく、行われなければならないことを信じ、
 平和目的のための宇宙空間の探査及び利用の科学面及び法律面における広範な国際協力に貢献することを希望し、
 この国際協力が、諸国間及び諸人民間の相互理解の増進及び友好関係の強化に貢献することを信じ、
 1963年12月13日に国際連合総会が全会一致で採択した決議1962号(第18会期)「宇宙空間の探査
及び利用における国家活動を律する法原則に関する宣言」を想起し、
 核兵器若しくは他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せること又はこれらの兵器を天体に設置することを慎むように諸国に要請する1963年10月17日の国際連合総会の全会一致の採択による決議1884号(第18会期)を想起し、
 平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為を誘発し若しくは助長することを意図し、又はこれらを誘発し若しくは助長する恐れのある宣伝を非難する1947年11月3日の国際連合決議110号(第2会期)を考慮し、かつ、この決議が宇宙空間に適用されることを考慮し、
 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約が、国際連合憲章の目的及び原則を助長するものであることを確信して、
 次のとおり協定した。
第1条 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用は、すべての国の利益のために、その経済的又は科学的発展の程度にかかわりなく行われるものであり、全人類に認められる活動分野である。
月その他の天体を含む宇宙空間は、すべての国がいかなる種類の差別もなく、平等の基礎に立ち、かつ、国際法に従って、自由に探査し及び利用できるものとし、また天体のすべての地域への立入は、自由である。
月その他の天体を含む宇宙空間における科学的調査は、自由であり、また、諸国はこの調査における国際協力を容易にし、かつ、奨励するものとする。
第2条 月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用若しくは占拠又はその他のいかなる手段によっても国家による取得の対象とはならない。
第3条 条約の当事国は、国際連合憲章を含む国際法に従って、国際の平和及び安全の維持並びに国際間の協力及び理解の促進のために、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における活動を行わなけばならない。
第4条 条約の当事国は、核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せないこと、これらの兵器を天体に設置しないこと並びに他のいかなる方法によってもこれらの兵器を宇宙空間に配置しないことを約束する。
月その他の天体は、もっぱら平和目的のために、条約のすべての当事国によって利用されるものとする。天体上においては、軍事基地、軍事施設及び防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験並びに軍事演習の実施は、禁止する。科学的研究その他の平和的目的のために軍の要員を使用することは、禁止しない。月その他の天体の平和的探査のために必要なすべての装備又は施設を使用することも、また、禁止しない。
第5条 条約の当事国は、宇宙飛行士を宇宙空間への人類の使節とみなし、事故、遭難又は他の当事国の領域若しくは公海における緊急着陸の場合には、その宇宙飛行士にすべての可能な援助を与えるものとする。宇宙飛行士は、そのような着陸を行ったときは、その宇宙飛行士の登録国へ安全かつ迅速に送還されるものとする。
いずれかの当事国の宇宙飛行士は、宇宙空間及び天体上において活動を行うときは、他の当事国の宇宙飛行士にすべての可能な援助を与えるものとする。
条約の当事国は、宇宙飛行士の生命又は健康に危険となるおそれのある現象を、月その他の天体を含む宇宙空間において発見したときは、直ちに、これを条約の他の当事国又は国際連合事務総長に通報するものとする。
第6条 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間における自国の活動について、それが政府機関によって行われるか非政府団体によって行われるかを問わず、国際責任を有し、自国の活動がこの条約の規定に従って行われることを確保する国際的責任を有する。月その他の天体を含む宇宙空間における非政府団体の活動は、条約の関係当事国の許可及び継続的監督を必要とするものとする。国際機関が、月その他の天体を含む宇宙空間において活動を行う場合には、当該国際機関及びこれに参加する条約当事国の双方がこの条約を遵守する責任を有する。
第7条 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間に物体を発射し若しくは発射させる場合又は自国の領域若しくは施設から物体が発射される場合には、その物体又はその構成部分が地球上、大気空間又は月その他の天体を含む宇宙空間において条約の他の当事国又はその自然人若しくは法人に与える損害について国際責任を有する。
第8条 宇宙空間に発射された物体が登録されている条約の当事国は、その物体及びその乗員に対し、それらが宇宙空間又は天体上にある間、管轄権及び管理権を保持する。宇宙空間に発射された物体(天体上に着陸させられ又は建造された物体を含む。)及びその構成部分の所有権は、それらが宇宙空間若しくは天体上にあること又は地球に帰還することによって影響を受けない。これらの物体又は構成部分は、物体が登録されている条約の当事国の領域外で発見されたときは、その当事国に、返還されるものとする。その当事国は、要請されたときは、それらの物体又は構成部分の返還に先立ち、識別のための資料を提供するものとする。
第9条 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用において、協力及び相互援助の原則に従うものとし、かつ、条約の他のすべての当事国の対応する利益に妥当な考慮を払って、月その他の天体を含む宇宙空間におけるすべての活動を行うものとする。条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間の有害な汚染、及び地球外物質の導入から生ずる地球環境の悪化を避けるように月その他の天体を含む宇宙空間の研究及び探査を実施、かつ、必要な場合には、このための適当な措置を執るものとする。条約の当事国は、自国又は自国民によって計画された月その他の天体を含む宇宙空間における活動又は実験が月その他の天体を含む宇宙空間の平和的探査及び利用における他の当事国の活動に潜在的に有害な干渉を及ぼすおそれがあると信ずる理由があるときは、その活動又は実験が行われる前に、適当な国際的協議を行うものとする。条約の当事国は、他の当事国が計画した月その他の天体を含む宇宙空間における活動又は実験が月その他の天体を含む宇宙空間の平和的な探査及び利用における活動に潜在的に有害な干渉を及ぼすおそれがあると信ずる理由があるときは、その活動又は実験に関する協議を要請することができる。
第10条 条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国際協力をこの条約の目的に従って促進するために、条約の他の当事国が打ち上げる宇宙物体の飛行を観測する機会を与えられることについての当該他の当事国の要請に対し、平等の原則に基づいて考慮を払うものとする。
その観測の機会の性質及びその機会が与えられる条件は、関係国間の合意により決定されるものとする。
第11条 月その他の天体を含む宇宙空間における活動を行う条約の当事国は、宇宙空間の平和的な探査及び利用における国際協力を促進するために、その活動の性質、実施状況、場所及び結果について、国際連合事務総長並びに公衆及び国際科学界に対し、実行可能な最大限度まで情報を提供することに合意する。
国際連合事務総長は、この情報を受けたときは、それが迅速かつ効果的に公表されるようにするものとする。
第12条 月その他の天体上のすべての基地、施設、装備及び宇宙機は、相互主義に基づいて、条約の他の当事国の代表者に開放される。これらの代表者は、適当な協議が行われるため及び訪問する施設等における安全を確保し、かつ、そこでの正常な作業に対する干渉を避けるように最大限の予防措置が執られるために、計画された訪問につき合理的な予告を行うものとする。
第13条 この条約の規定は、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における条約の当事国の活動に適用するものとし、それらの活動が条約の一の当事国により行われる場合であるか他の国家と共同で行われる場合(政府間国際機関の枠内で行われる場合を含む。)であるかを問わない。
月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における政府間国際機関が行う活動に関連して生ずる実際的問題は、条約の当事国が、当該国際機関又はその加盟国でこの条約の当事国である一若しくは二以上の国と共同して解決するものとする。
第14条
1. この条約は、署名のためすべての国に開放される。この条約が3の規定に従って効力を生ずる前にこの条約に署名しない国は、いつでもこの条約に加入することができる。
2. この条約は、署名国により批准されなければならない。批准書及び加入書は、寄託国政府として指定されたアメリカ合衆国、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国並びにソヴィエト社会主義共和国連邦の政府に寄託するものとする。
3. この条約は、この条約により寄託国政府として指定された政府を含む5の政府が批准書を寄託したときに効力を生ずる。
4. この条約の効力発生後に批准書又は加入書を寄託する国については、この条約はその批准書又は加入書の寄託の日に効力を生じる。
5. 寄託国政府は、すべての署名国及び加入国に対し、署名の日、この条約の批准書及び加入書の寄託の日、この条約の効力発生の日その他についてすみやかに通報するものとする。
6. この条約は、寄託国政府が国際連合憲章第102条の規定に従って登録するものとする。
第15条 条約のいずれの当事国も、この条約の改正を提案することができる。改正は、条約の当事国の過半数がこれを受諾した時に、その改正を受諾した条約の当事国について効力を生じ、その後は、条約の他の各当事国については、その国による受諾の日に効力を生ずる。
第16条 条約のいずれの当事国も、この条約の効力発生の後1年を経過したときは、寄託国政府にあてた通告書により、条約からの脱退を通告することができる。その脱退は、通告書の受領の日から1年で効力を生ずる。
第17条 この条約は、英語、ロシア語、フランス語、スペイン語及び中国語による本文をひとしく正文とし、寄託国政府に寄託するものとする。この条約の認証謄本は、寄託国政府が署名国及び加入国の政府に寄託するものとする。

 以上の証拠として、下名は正当に委任を受け、この条約に署名した。
 1967年1月27日にワシントン市、ロンドン市及びモスクワ市で本書3通を作成した。


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