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第1回赤道諸国会合宣言
(次の赤道諸国、即ち、ブラジル、コロンビア、コンゴ、エクアドル、インドネシア、ケニア、ウガンダ、ザイールのコロンビア、ボゴタでの第1回会合で1976年12月3日採
択) |
赤道が通過する諸国の下名の代表は、これら諸国の国家の領土、領海、島嶼領域に対応する天然資源とみなされる静止軌道の研究をするために、1976年11月29日から12月3日までコロンビア共和国ボゴタに会合した。情報の交換及び当該軌道に近接する国の国家主権の行使に含まれる様々な技術的、法的及び政治的側面を詳細に研究した後、次の結論に達した。
1. 天然資源としての静止軌道
静止軌道は、衛星の(恒星)周期が地球の(恒星)周期に等しく、衛星が地球の自転の方向と同方向に動く、赤道面上の周回軌道である。衛星がこの特殊な軌道を描く場合には、これを静止軌道という。地球上から見ると当該衛星は天空に静止しているように見え、赤道の所定の地点の天頂に位置する。その経度は定義により衛星の経度にあたる。
この軌道は地球の赤道上空約35,871kmの距離に位置する。
赤道諸国は、静止同期軌道が、その存在がもっぱら地球により発生する重力現象との関係に依存する故に、地球の現実に結びつけられた物理的事実であり、従って、宇宙空間の一部とみなしてはならない旨宣言する。従って、静止同期軌道部分は、赤道諸国がその国家主権を行使する領域の一部をなす。静止軌道は、その重要性及び価値が宇宙技術の発達及び通信の必要の増大と共に急速に増大している希少な天然資源である。従って、ボゴタで会合する赤道諸国はこの天然資源に対する主権の存在を宣言しかつ自国の人民のために当該主権を守る決定を行った。静止軌道は、同軌道のみが、電気通信業務並びに静止衛星を必要とするその他の利用のために提供できる固有の便宜を示している。
周波数及び静止衛星軌道は限られた天然資源であり、国際電気通信連合の現行基準により、そのようなものとして完全に容認されている。技術的進歩がこの軌道を使用する衛星の数を引き続き増大させ、そのため、近い将来飽和状態になり得る。
切迫した飽和状態を防止する静止軌道のよりよい利用を達成しようとする関連文書において国際電気通信連合により提案された解決策は現在実行不可能かつ不公平であり、静止同期軌道の開発及び利用の明らかな独占権を享受する工業諸国に比較して、特に、技術的及び財政的資源に関して不利な立場にある開発途上国にとって、この資源の開発費をかなり増大させるであろう。連合員が、宇宙無線通信用の周波数帯の使用において、静止衛星用の周波数及び軌道は当該軌道及び周波数の公平な使用を認めるために効率的かつ経済的に使用されなければならない限られた天然資源であることを考慮する旨の1973年の国際電気
通信条約第33条2によって確立された原則にかかわらず、我々は、静止軌道及び周波数の両方が、大が有する技術的及び財政的手段を持たない開発途上国の公平な利用を認めない方法で利用されていることを確認できる。従って、静止軌道上の赤道諸国対応部分に自らの主権を行使することは絶対に必要なのである。
2. 静止軌道上赤道諸国対応部分に対する赤道諸国の主権
赤道諸国は、この軌道を天然資源とみなし、「開発途上国の天然資源に対する恒久的な主権及び経済開発のための国内に蓄積された資源の拡大」と題された、国際連合総会の決議第2692号(第25会期)に規定された国家開発及び関係国の人民の福祉のために行使されなければならない国家の富及び天然資源に対する恒久的な主権に対する人民及び国家の権利を再確認する。
更に、決議第3281号(第26会期)によって国際連合総会により厳粛に採択された国家の経済的権利及び義務に関する憲章が、第2条1において、自国の天然資源に対する国家の主権的権利の存在を次のように再度確認している。「すべての国は、自国の富、天然資源及び経済活動の所有、使用及び処分を含む完全かつ恒久的な主権を有し、かつ、当該主権を自由に行使する。」
従って、赤道諸国は、上記の規定により、天然資源である同期静止軌道が赤道諸国の主権の下にあることを確認する。
3. 静止軌道の法的地位
赤道諸国は、静止軌道部分に対する主権的権利の存在に留意し、この領域において適用可能な法的協議は次のことを考慮しなければならないと考える。
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赤道諸国により提唱された主権的権利は、当該軌道が主に最先進国を利するために使用されている今の現実とは完全に異なり、これらの国の人民及び地球社会に実体的な利益を与えるようにする。 |
(b) |
公海に対応する軌道部分は諸国の国家管轄権の外にあり、人類の共同財産とみなされるだろう。従って、管轄権を有する国際機関が人類の利益のためにその利用及び開発を規制すべきである。 |
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赤道諸国は、国際電気通信条約により承認され、許可された衛星が自国の静止軌道の外で、重力飛行によって自国の宇宙空間を通過する場合には、当該衛星の自由な軌道通過を拒否しない。 |
(d) |
赤道国の静止軌道部分に恒久的に配置される物体は当該関係国の事前の明示の許可を必要とし、当該物体の運用は物体が配置される領域国の国内法に従わなければならない。当該許可は、無線通信規則に規定される衛星システム間の干渉の場合に必要な調整とは異なることを理解しなければならない。当該許可は、非常に明瞭にその領域内で固定無線通信局の運用を許可する国家の権利に言及する。 |
(e) |
赤道諸国は、既存の衛星又は当該衛星が自国の静止軌道部分に占める位置を容認しないし、また当該衛星の存在は、当該部分に対して主権を行使する国家によって明示に許可されるのでなければ、衛星を配置する権利又は当該部分の使用の権利を与えるものではない。 |
4. 1967年の条約
開発途上国が適切な科学的な助言を頼りにすることができず、従って、工業諸国が自国の利益のために、巧みに準備した提案の欠落、矛盾及び結果に気づくことも評価することもできなかった時に作成された国際法のすべての条件を国際社会が問題にする場合が少なくとも、1967年1月27日に署名された月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する1967年の条約は、宇宙空間の探査及び利用の問題に対する最終回答とみなすことはできない。
静止軌道が宇宙空間に含まれるという議論を支持するために援用することができる宇宙空間の有効な又は十分な定義は存在しない。国際連合宇宙空間平和利用委員会に属する法律小委員会は宇宙空間の定義に関して長期間作業してきたが、現在までのところこの点に関するいかなる合意も存在していない。
従って、宇宙空間の法律上の定義を作成することが緊急に必要であり、宇宙空間の定義がない場合は、1967年の条約の履行が既に静止軌道を使用している国の存在に承認を与える唯一の方法である。いわゆる国家による非専有の原則の名目の下で、現実に展開されたことは軌道の技術的分割であった。この分割は、明瞭に国家による専有であり、赤道諸国によって廃棄されなければならない。現在まで観察された経験及び近い将来予見し得る発達は、赤道諸国に静止軌道の除外を要求することを余儀なくさせる1967年の条約の明白な欠落を際立たせる。
既に言及された1967年の宇宙条約における宇宙空間の定義の欠如は、第2条が静止軌道に適用されるべきではなく、従って、既に条約を批准した赤道諸国の権利に影響するものではないことを意味する。
5. 外交上及び政治上の行動
前記の条約の第2条が、赤道諸国の領域の不可分な要素としての同期静止軌道に関する明示的な例外を設けていない限り、当該条約を批准していない赤道諸国は、その法的欠落が既に表明された規定の実施を許可する手続を開始することを、慎むべきである。
ボゴタにおいて会合に出席する赤道諸国の代表は静止軌道を自国の主権に服する領域の不可分な一部とみなすことを確認する国際連合におけるコロンビア及びエクアドルの宣言に関する自国の立場を明瞭に陳述することを希望する。この宣言は、赤道諸国の主権的権利の弁護のための歴史的背景である。これらの諸国は、同一の主題を扱う国際機関において類似の宣言を行うように努力し、当該文書において作成された諸原則に基づき自国の国際政策を適合させるように努力する。
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