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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(3) 放射線保護に関する国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告及び声明
(抄訳、1977年1月17日採択、声明は1985年採択)

自然放射線及び線量当量の制限

(87) 人間は、常に、その自然的環境からの放射線に曝されている。自然放射線被爆の基本的な発生源は、宇宙線、岩石及び土の放射能、及びその組織に含まれる放射核種である。人が受ける自然放射線量は彼が居住する海抜高度、人の近くの土の中の放射核種の量及び種類、及び人が空気、水及び食物により体内に摂取する量のような多くの要素に依存している。ほとんどの人間の組織における自然放射線からの総吸収線量率は年間約1/1,000グレイであるが、年1/1,000グレイ以上の吸収線量率は、世界の若干の限られた地域から報告されている。
(88) 環境の人為的な変更及び人間の活動は、自然放射線への「通常」被爆を増大し得る。この例としては、採鉱、高高度での飛行、及び自然に生じ得る放射線核種を含む建築材料の使用が含まれる。通風が制限されることにより、放射性ガス及びそれが崩壊する際の生産物が蓄積される結果となるために、家の中にいることさえしばしば放射線被爆を増大するのに十分なのである。…
 

公衆の個々の構成員についての線量当量制限

(117) 放射線の危険は、公衆の構成員が被爆する環境上の危険の総数のうちの非常に小さい部分である。従って、公衆が日常生活のその他の危険を受けることの観点から公衆の放射線による危険の規模を考慮することが妥当である。(減少させることができない又は完全に避けられない危険に関連する場合に)これを容認することは、他の方法では得られない利益、危険を減少することができるようにするための社会費用の評価、又は危険が無視できるという明瞭な判断により動機づけられる。
(118) 公衆の構成員にとり確率的な現象たる危険の容認可能な水準は、個人が小さな水準のみに変更することができ、かつ、放射線の安全のように、国の法令により規制できる危険の考慮から推論される。このような危険の一例は、公共輸送使用のそれである。日常生活において規則的に受けた危険に関連する入手可能な情報の再検討から、公衆に対する免れがたい危険の容認可能な水準は、職業上の危険のそれ以下の範囲であると結論し得る。この基礎に基づいて、年間10-6から10-5の範囲の危険が公衆のいずれの個人にとっても容認可能で有り得る。
(119) 10-2Sv-1(第60節参照)の大きさの総危険率の推定は、公衆の個々の構成員に対する一生の線量を年間1mSvの一生を通じての体全体への被爆に対応する数値に制限することを意味する。次の節において示される理由で、本委員会により勧告された年間5mSv(0.5rem)の体全体への線量当量制限は、重要な集団に適用されるように、この安全水準を与えるために認定され、かつ、本委員会は、第120-128節に定められる条件に基づきその継続的使用を勧告する。…


1985年国際放射線防護委員会パリ会合声明

公衆の構成員の線量限界

 1977年に作成された公衆の構成員についての効果的な線量当量制限に関する勧告(ICRP刊行物第26号)において、二つの数値に言及している。年間5mSvの制限の使用は、ICRP刊行物第26号の第120-128節に掲げられる条件に基づいてのみ支持される。その他の状況については、本委員会は、生涯平均年間線量1mSvに基づき被爆を制限するのが賢明であろうと勧告した。
 本委員会の現在の見解は、主たる限界が年間1mSvであるということである。ただし、生涯平均年間有効線当量が年間1mSvの主たる制限を越えないことを条件として、数年間にわたり、年間5mSvの補足的な線量制限を使用するのは認められる。…

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