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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(4) 国際衛星監視機構に関するフランス政府の覚書
(1978年2月24日国連軍縮総会特別会期に提出)

1. フランスは、国際連合軍縮総会特別会期の準備委員会に1978年2月24日に提出した覚書において、衛星監視機構の創設を提案している。
2. フランスは、この会期中に行われるべき作業を考慮して、他の国がその所見及び批評を述べることを可能にするために、より詳細な提案を示すことを希望する。
3. 地球監視衛星の分野において行われた宇宙技術の進歩が国際的な生活における新しい展開をなす。
4. これらの衛星、特に軍事型のものが、既にその監視能力において非常に高い精密度に達した。この技術は疑いなく一層進歩するであろう。現在、当該衛星によって確保された情報は宇宙技術における最大の経験を有し、かつ、自国が選択する場所及び観測周期で、地表の監視を行うことができる二つの国によって収集されている。更に、これらの二つの国が利用できる衛星は二国間軍縮協定の検証において重要な役割を果たす。
5. フランスは、現行の軍縮努力の枠内で、この新しい監視方法が国際社会の役務に利用されるべきであると考える。
6. 監視衛星によって収集された情報は、軍縮協定を管理し、国際的な信頼及び安全を強化するのに役立つ新しいアプローチ及び方法を検討することができるものである。国際連合の多くの決議は、軍縮協定が厳格かつ有効な国際的な監視に従うべきことが、いかに不可欠なことであるかを強調してきた。従って、当該監視を行う手段としての監視衛星の利用は、これらの困難のうち若干のものを克服することを可能にし、それによって、軍縮に向けて進歩することになる。
7. 監視に係る問題は別として、監視衛星によって収集された情報は、後日決定すべき条件で、紛争を生じさせる事実について、より納得のいくように評価することを可能にすることによって、国家間の紛争を解決するための基本的な要素を提供することができる。
8. この目的のために、衛星監視機構は、軍縮協定、並びに、関係当事者に彼らが請求する権利を有する情報を提供することによって、国際的な信頼及び安全を増大するための措置の基本的な補助機構となる。
9. フランスは、ここに以下の項目に基づき、衛星監視機構の主要な要素を提出する。


指導原則、任務、規程、技術的資源、財政、紛争の解決


1. 機構の作業の指導原則
10. 衛星監視機構の目的は、軍縮努力の促進並びに国際的な安全及び信頼の強化であるものとする。
11. 機構は、軍縮に関して国際連合が従う政策に基づき、かつ、当該政策に従い締結された国際法に基づくすべての協定に従って、国際連合憲章の目的及び原則に従い行動するものとする。
12. 機構は、地球監視衛星によって確保された情報を収集し、処理し、かつ配布することについて責任を有するものとする。機構は、その任務の達成に必要な技術的な資源を使用することができる。これらの資源は、その規程の条項に従って、徐々に拡大されるものとする。
13. 機構は、その任務を遂行するにあたって、その規程及び当該規程の条項に基づいて機構と国家又は国家集団との間で締結された協定の規定に留意して、国家の主権を尊重するものとする。
 
2. 機構の任務
14. 機構の任務は次のものを含むものとする。
 国際的な軍縮及び安全保障協定の履行監視への参加。
 特別な状況の調査への参加。
 (a)国際的な軍縮及び安全保障協定の履行を監視すること
15. これらの協定における機構の参加についての措置は、これらが既に効力を有する協定か又は未だ締結されていない協定かどうかによって異なる。
16. 機構は、既に有効な協定の場合には、これらの監視にあたって、より大きな有効性を確保するための新たな道具となる。更に、当該協定において、国家の監視手段の措置が既に講ぜられていた場合には、機構の措置は同じ部類のものになる。
17. 手続に関しては、含まれる軍備及び効力を生じた誓約の性質に従って、監視衛星による監視が、これらにどの程度まで適用できるかを決定するために、現行の協定の目録を作成する。機構は、監視衛星による監視が適用できることが明らかになった場合には、その役務が当該協定の締約国に提供されるべきである旨提案する。これらの締約国は、この申出を全会一致で受諾した場合には、共同で当該協定と機構の監視作業との間に設定される関係を明記する。
18. 機構は、同様に、将来の軍縮及び安全保障協定の場合に、機構によって収集された情報を当該監視のために有効に利用することができる場合には、協定の監視の基本的な付属物となる。
19. この目的のために、協定の標準条項が機構によって準備され、他の国と軍縮協定を締結することを希望する国に提出される。
20. 同時に、安全保障の領域において、機構の役務を懇請する任務を有する地域的国際組織についての措置を講ずることができる。
 (b)特別な状況の調査
21. 国家は、自国が締約国である協定が他の国によって侵害されていると信ずるのに十分な理由がある場合又は他の国の行為が自国の安全を危うくする場合には、機構に報告することができる。機構は、調査を行うために、調査される当該他の国の同意を得る。
22. 安全保障理事会はまた同理事会に「いかなる紛争又は国際的な摩擦に至る又は紛争を発生させる恐れのあるいかなる事態をも調査すること」を許可している国際連合憲章第34条を援用して、行動を執ることができる。
 
3. 機構の規程
23. 機構は、軍縮努力を前進させるという目的及びその本質的な普遍性のために、国際連合システムの一部であるべきである。
24. フランスは、この目的上、機構が国際連合の専門機関の一つとして創設されるべきであることを提案する。
25. 専門機関としての特性は、機構の特別な役割及び機構に実質的な財政的、技術的資源を与える必要―これらは新しい種類のものである―にとり理想的な立場にある。
26. フランスによって提案された機構のための規程の詳細はなお一層の提案を必要とする。ただし、現在のところ、次の一般的な概要が提案されている。

機構の加盟国の地位は国際連合又はその専門機構の加盟国に開放される。
機構の決定及び審議機関は、少なくとも、総会及び世界のすべての地域が均衡して代表される限定的な機関を含む。
機構は、その任務の遂行に必要な職員を有する。職員は、特に監視衛星によって収集されたデータを処理し、分析するのに適任の技術的要員を含む。
 
4. 技術的資源
27. 監視衛星施設の複雑さ及び宇宙応用(地上部分及び宇宙部分)が高額であることは、機構の技術的資源を漸進的に拡大するのが望ましいことを示唆している。機構の資源の増大は、いずれにしても、機構に割り当てられる任務の拡大に並行して行うことができる。
28. 従って、機構は、運用を開始した場合には、自己が所有する衛星がないのであるから、衛星を所有する国の監視衛星によって収集されたデータに頼ることができなければならない。当該データを機構に伝送するための手続は、これらの国との協定において作成することができる。
29. ただし、機構が十分な程度の自立性を有することを確保するためには、機構が運用を行う場合には、機構自体がそのように伝送されたデータを解読する技術的能力を持つべきである。この目的のために、機構は自己の処理センターを持つべきである。
30. 従って、フランスは、機構の技術的資源の拡大が、次の三つの連続する段階において行われる必要のあることを提案する。
段階1. 機構は、監視衛星を有する国によって提供されたデータを処理するためのセンターを持つ。
段階2. 機構は、これらの国の衛星に直接的に連結するデータ受信局を設置する。
段階3. 機構自体が自己の任務の遂行に必要とされる監視衛星を持つ。
31. これらの一連の段階は、特にその権限の漸進的な拡大を考慮して、機構の規程によって決定される。
32. 更に、機構の規程は、収集し、受信した情報が機構の任務遂行以外のいかなる目的にも利用されないことを定めるべきである。
 
5. 財政
33.

機構が利用することのできる技術的資源の規模は、次の様々な資金が利用されることを必要とする。

国際連合のそれに比較し得る予算規則によって定められた、義務としての支払。
監視衛星を有する国によって機構の利用に提供された技術的資源を勘定に入れる、任意の支払。
特に、国家が、自国が締結した軍縮及び安全保障に関する協定を監視するために機構の役務を利用する場合には、機構によって提供された役務の対価として支払われた資金。

 
6. 紛争の解決
34. 国家間又は国家と機構の間に紛争が生ずる場合には、紛争解決制度が与えられるべきである。フランスは、機構の任務の特殊性を鑑み、当該紛争が平和的な手段によって解決されない場合には、仲裁裁判に付託されることを提案する。この目的のために仲裁委員会が設立され、その構成及び運用についての措置を機構の規程の中に含める必要がある。
35. フランスは、この目的上、紛争解決の仕組みに関する条項案を提出する。
36. フランスは、これらの衛星監視機構に関する提案を国際連合軍縮総会特別会期に参加する国に提出するにあたり、当該提案を会期の審議中に検討することができるよう期待する。
37. ただし、フランスは、当該提案の範囲及びそれによって提起される問題を知っているので、衛星監視機構が設立される条件を考慮するために、専門家委員会を設置することを提案する。
38. 当該委員会は限られた数の専門家で構成され、その十分な機能を確保するために、衡平な地理的配分が考慮される。当該委員会に、総会の第34会期にその作業に関する報告を行うように指示することができる。
39. フランスは、この目的上、国際衛星監視機構についての提案を審議するための専門家委員会の参考条件が次の点を含むべきことを提案する。
(a) 機構の作業の指導原則。
(b) その任務、即ち、
(i) 既に効力を生じているか又は締結すべきか否かにかかわらず、国際的な軍縮又は安全保障協定の履行の監視への参加。
(ii) (一の国の要請によって、監視されるべき国の同意を得て、又は安全保障理事会の要請によって)特殊な状況の調査への参加。
(c) その制度(国際連合システムの構造におけるその位置、決定を行うための規則)
(d) 機構が利用することができる技術的資源及びその漸進的な拡大。
(e) その活動の様々な段階における機構の財政。
(f) 紛争解決制度。

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