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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(11) 衛星により送信される番組伝送信号の伝達に関する条約
(1974年5月21日ブリュッセルで作成、1979年8月25日発効)

 締約国は、
 番組伝送信号の伝達のための衛星の使用が、量的にも、また地理的な到達範囲においても、急速に増大しつつあることを了知し、
 衛星により送信される番組伝送信号をその送り先でない伝達機関が伝達することを阻止する世界的制度が存在しないこと及びこのような制度の欠如が衛星通信の使用を阻害するおそれがあることを懸念し、
 この点に関して、著作者、実演家、レコード制作者及び放送事業者の利益の重要性を認め、
 衛星により送信された番組伝送信号をその信号の送り先でない伝達機関が伝達することを阻止する手段を講ずるための国際制度を確立すべきことを確信し、
 国際電気通信連合条約及び同条約に附属する無線通信規則を含む、既に実施されている国際協定を何ら害しないこと、並びに、特に実演家、レコード制作者及び放送事業者に保護を与える1961年10月26日のローマ条約の一層広い受諾を何ら害しないことの必要性を意識して、
 次のとおり協定した。
第1条 この条約の適用上、
(i) 「信号」とは、番組を送信することができる電子的に生成された伝送体をいう。
(ii) 「番組」とは、最終的な伝達を目的として発信された信号中に含まれる映像、音又は映像と音よりなる生の又は記録された素材の集合体をいう。
(iii) 「衛星」とは、信号を送信することができる地球外空間中の装置をいう。
(iv) 「発信信号」又は「発信された信号」とは、衛星に送られる又は衛星を経由する番組伝送信号をいう。
(v) 「派生信号」とは、介在する一又は二以上の固定物の有無にかかわらず、発信された信号の技術的 特性を変更することによって得られる信号をいう。
(vi) 「原送信機関」とは、いかなる番組を信号により伝送するかを決定する人又は法人をいう。
(vii) 「伝達機関」とは、一般公衆又はその一部への派生信号の送信を行うことを決定する人又は法人をいう。
(viii) 「伝達」とは、伝達機関が派生信号を一般公衆又はその一部に送信する操作をいう。
第2条
(1) 各締約国は、衛星に向けて発信された信号又は衛星を経由する信号の送り先でない伝達機関が番組伝送信号を自国において又は自国から伝達することを阻止するための適切な手段を講ずることを約束する。この義務は、原送信機関が他の締約国の国民であって、かつ、伝達される信号が派生信号である場合に適用される。
(2) 第1項にいう手段の適用が時間的に限定される締約国においては、その期間は、その国の国内法によって定めるものとする。その期間は、批准、受諾若しくは加入の時に、又は国内法がその後に効力を生じ若しくは改正される場合には、当該法の効力発生若しくはその改正の時から6カ月以内に、国際連合事務総長に文書によって通告されるものとする。
(3) 第1項に規定する義務は、発信信号の送り先である伝達機関によって既に伝達された信号からの派生信号の伝達には適用されない。
第3条 この条約は、原送信機関によって又は原送信機関に代わる機関によって発信された信号が一般公衆による衛星からの直接受信を目的とする時は、適用されない。
第4条 いずれの締約国も、発信信号の送り先でない伝達機関により自国内で伝達された信号が次の各号のいずれかに該当する場合には、第2条(1)に規定する手段を適用することを要しない。
(i) 発信信号によって伝送される時事の事件を報道する番組の短い抜粋を伝送する信号。ただし、そのような抜粋が、報道の目的上正当とされる範囲内のものに限る。
(ii) 発信信号によって伝送される番組の短い抜粋を引用として伝送する信号。ただし、そのような引用が公正な慣行に合致し、かつ、報道の目的上正当とされるものであることを条件とする。
(iii) 発信信号によって伝送される番組を国際連合総会の確立された慣行に従って開発途上国とみなされる締約国の国内で伝送する信号。ただし、伝達がもっぱら教授(成人教育の枠内における教授を含む。)又は学術研究を目的とすることを条件とする。
第5条 いずれの締約国も、この条約が、その締約国について効力を生じる前に発信された信号について、この条約を適用することを要しない。
第6条 この条約は、いずれかの国内法又は国際協定に基づいて著作者、実演家、レコード制作者又は放送事業者に与えられる保護を制限し又は害するものと解してはならない。
第7条 この条約は、独占の濫用を阻止するために国内法を適用する各締約国の権利を制限するものと解してはならない。
第8条
(1) 第2項及び第3項に従うことを条件として、この条約には、いかなる留保も認めない。
(2) いずれの締約国にも、1974年5月21日現在においてその国の国内法がその旨の規定を有する限り、国際連合事務総長に寄託する通告書により、この条約の適用上、第2条(1)の「原送信機関が他の締約国の国民である場合」という用語が、「信号が他の締約国の領域から発信される場合」という用語に置き換えられたものとみなす旨を宣言することができる。
(3)
(a) いずれの締約国も、1974年5月21日現在において、番組伝送信号を有線、ケーブルその他の類似の通信手段により一般加入者に伝達することについて保護を制限し又は保護を与えていない限り、国際連合事務総長に寄託する通告書により、その国内法が保護を制限し又は保護を与えていない間はその限度においてこの条約をそのような伝達に適用しない旨を宣言することができる。
(b) (a)の規定に従って、通告書を寄託した締約国は、(a)の規定に基づく留保を適用できなくし又は範囲を一層制限する国内法上の変更を、その効力の発生の時から6カ月以内に、国際連合事務総長に文書によって通告するものとする。
第9条
(1) この条約は、国際連合事務総長に寄託されるものとする。この条約は、国際連合の加盟国、国際連合との連携関係を持ついずれかの専門機関の加盟国、国際原子力機関の加盟国又は国際司法裁判所規程の当事国である国による署名のため1975年3月31日まで開放される。
(2) この条約は、署名国による批准又は受諾を要するものとする。この条約は、第1項に掲げる国による加入のために開放される。
(3) 批准書、受諾書又は加入書は、国際連合事務総長に寄託するものとする。
(4) 各国は、この条約により拘束されることとなる時には、自国の国内法に従って、この条約の規定を実施することができる状態になっていなければならないものとする。
第10条
(1) この条約は、5番目の批准書、受諾書又は加入書の寄託の後3カ月で効力を生ずる。
(2) 5番目の批准書、受諾書又は加入書の寄託の後に、この条約を批准し、受諾し又はこれに加入する各国については、この条約は、その文書の寄託後3カ月目で効力を生ずる。
第11条
(1) いずれの締約国も、国際連合事務総長に寄託された通告書により、この条約を廃棄することができる。
(2) 廃棄は、第1項にいう通告書の受領の後12カ月で効力を生ずる。
第12条
(1) この条約は、等しく正文である英語、フランス語、ロシア語、スペイン語による本書一通について署名するものとする。
(2) 公定本文は、国際連合教育科学文化機関事務局長及び世界知的所有権機関事務局長が関係国政府との協議の後、アラビア語、オランダ語、ドイツ語、イタリア語及びポルトガル語で作成する。
(3) 国際連合事務総長は、第9条(1)に掲げる国並びに国際連合教育科学文化機関事務局長、世界知的所有権機関事務局長、国際労働機関事務局長及び国際電気通信連合事務総局長に対し、次に掲げる事項を通告するものとする。
(i) この条約の署名
(ii) 批准書、受諾書及び加入書の寄託
(iii) 第10条(1)に基づくこの条約の効力発生の日
(iv) 第2条(2)又は第8条(2)若しくは(3)に関する通告書の寄託及びそれに伴う文書
(v) 廃棄の通告書の受領
(4) 国際連合事務総長は、第9条(1)に掲げるすべての国に対し、この条約の認証謄本二通を送付するものとする。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けて、この条約に署名した。
1974年5月21日にブラッセルで作成した。

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