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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(13) 宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約
(第29会期国際連合総会決議3235(第2回会期)号、1974年11月12日採択、1976年9月5日発効)

 この条約の締約国は、

 平和目的のために宇宙空間を探査し及びその利用を推進することが全人類の共同の利益であることを認識し、
 1967年1月27日の月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約が、宇宙空間における活動について国の国際的責任を確認していること及び宇宙空間に打ち上げられた物体が登録されている国に言及していることを想起し、
 また、1968年4月22日の宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定が、宇宙空間に打ち上げられた物体であって打上げ機関の領域外で発見されたものの返還に先立ち、要請に応じ、打上げ機関が当該物体の識別のための資料を提供することを定めていることを想起し、
 更に、1972年3月29日の宇宙物体によって引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約が、宇宙物体により引き起こされる損害についての打上げ国の責任に関する国際的な規則及び手続を定めていることを想起し、
 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約に照らして、宇宙空間に打ち上げられた宇宙物体の打上げ国による国内登録に関する規定を定めることを希望し、
 更に、宇宙空間に打ち上げられた物体を義務として登録するための中央登録簿が、国際連合事務総長により設置され及び保管されることを希望し、
 また、宇宙物体の識別に資する追加の手段及び手続を締約国に提供することを希望し、宇宙空間に打ち上げられた物体の義務的な登録の制度が、特にそれらの物体の識別に資すること並びに宇宙空間の探査及び利用を律する国際法の適用を容易にし及びその発展に寄与することを確信して、
 次のとおり協定した。
第1条 この条約の適用上、
(a) 「打上げ国」とは、次の国をいう。
(i) 宇宙物体の打上げを行い、又は行わせる国
(ii) 宇宙物体が、その領域又は施設から打ち上げられる国
(b) 「宇宙物体」とは、宇宙物体の構成部分並びに打上げ機及びその部品を含む。
(c) 「登録国」とは、次条の規定により宇宙物体が登録されている打上げ国をいう。
第2条
1. 宇宙物体が地球を回る軌道又は地球を回る軌道の外に打ち上げられたときは、打上げ国は、その保管する適当な登録簿に記入することにより当該宇宙物体を登録する。打上げ国は、国際連合事務総長に登録簿の設置を通報する。
2. 地球を回る軌道又は地球を回る軌道の外に打ち上げられた宇宙物体について打上げ国が2以上ある場合には、これらの打上げ国は、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約第8条の規定に留意し、宇宙物体及びその乗員に対する管轄権及び管理の権限に関して当該打上げ国の間で既に締結された又は将来締結される適当な取極を妨げることなく、1の規定により、当該宇宙物体を登録するいずれか1の国を共同して決定する。
3. 各登録簿の内容及び保管の条件は、登録国が決定する。
第3条
1. 国際連合事務総長は、次条の規定により提供される情報を記録する登録簿を保管する。
2. 1の登録簿に記載されるすべての情報は、公開される。
第4条
1. 登録国は、登録したそれぞれの宇宙物体に関し、できる限りすみやかに国際連合事務総長に次の情報を提供する。
(a) 打上げ国の国名
(b) 宇宙物体の適当な標識又は登録番号
(c) 打上げが行われた日及び領域又は場所
(d) 次の事項を含む基本的な軌道要素
(i) 周期
(ii) 傾斜角
(iii) 遠地点
(iv) 近地点
(e) 宇宙物体の一般的機能
2. 登録国は、登録した宇宙物体に関する追加の情報を随時国際連合事務総長に提供することができる。
3. 登録国は、従前に情報を提供した宇宙物体であって地球を回る軌道に存在しなくなったものについて、実行可能な最大限度においてかつできる限りすみやかに、国際連合事務総長に通報する。
第5条 地球を回る軌道又は地球を回る軌道の外に打ち上げられた宇宙物体に前条1(b)の標識若しくは登録番号又はその双方が表示されている場合には、登録国は、同条の規定により宇宙物体に関する情報を提供する際に、国際連合事務総長にその旨を通知する。通知を受けた場合には、同事務総長は、登録簿に当該通知につき記録する。
第6条 いずれかの締約国が、自国又は自国の自然人若しくは法人に対して損害を与えた宇宙物体又は危険若しくは害をもたらすおそれのある宇宙物体を、この条約の規定を適用した場合においても識別することができない時は、他の締約国(特に、宇宙物体の監視及び追跡のための施設を有する国を含む。)は、公平かつ合理的な条件で、当該締約国により又は当該締約国のために国際連合事務総長を通じて行われる当該宇宙物体の識別についての援助の要請に実行可能な最大限度において応ずる。そのような要請を行う締約国は、要請を行う契機となった事件について、時刻、性質及び状況に関する情報を実行可能な最大限度において提供する。援助の態様は関係当事国間の合意により定める。
第7条
1. この条約において締約国に言及している規定は、次条から第12条までの規定を除くほか、宇宙活動を行ういずれの国際的な政府間機関にも適用できるものとする。ただし、当該政府間機関が、この条約に規定する権利及び義務の受諾を宣言し、かつ、当該政府機関の加盟国の過半数が、この条約及び月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約の締約国である場合に限る。
2. この条約の締約国であって、1の政府間機関の加盟国であるものは、当該政府間機関が1の規定による宣言を行うことを確保するため、すべての適当な措置をとる。
第8条
1. この条約は、ニューヨークの国際連合本部においてすべての国による署名のために開放される。3の規定に基づくこの条約の効力発生の前にこの条約に署名しなかった国は、いつでもこの条約に加入することができる。
2. この条約は、署名国により批准されなければならない。批准書及び加入書は国際連合事務総長に寄託する。
3. この条約は、5番目の批准書が国際連合事務総長に寄託された時に、批准書を寄託した国の間で効力を生ずる。
4. この条約は、その効力発生の後に批准書又は加入書を寄託する国については、批准書又は加入書の寄託の日に効力を生ずる。
5. 国際連合事務総長は、すべての署名国及び加入国に対し、署名の日、この条約の批准書及び加入書の寄託の日、この条約の効力発生の日並びに他の事項をすみやかに通報する。
第9条 いずれの締約国も、この条約の改正を提案することができる。改正は、締約国の過半数が改正を受諾した時に、受諾した締約国について効力を生じるものとし、その後に改正を受諾する他の締約国については、その受諾の日に効力を生ずる。
第10条 この条約の効力発生の10年後に、この条約の過去における適用状況に照らして、この条約の改正が必要であるか否かを審議するため、この条約の検討の問題を、国際連合総会の仮議事日程に含める。ただし、この条約の効力発生の後5年を経過した後はいつでも、この条約の締約国の1/3以上の要請により、締約国の過半数の同意を得て、この条約を検討するための締約国の会議が召集される。その検討にあたっては、宇宙物体の識別に関する技術その他の関連技術の進歩を特に考慮する。
第11条 いずれの締約国も、この条約の効力発生の後1年を経過した後は、国際連合事務総長に宛てた文書による通告により、この条約からの脱退を通告することができる。脱退は、脱退を通告する文書の受領の日から1年で効力を生ずる。
第12条 アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語を等しく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄託するものとし、同事務総長は、その認証謄本をすべての署名国及び加入国に送付する。

 以上の証拠として、下名は各自の政府から正当に委任を受けて、1975年1月14日にニューヨークで署名のために開放されたこの条約に署名した

(署名消略)

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