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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(2) 宇宙空間における武力行使及び宇宙空間から地球に対する武力行使の禁止に関する条約草案
(ソ連、1983年8月23日、A/38/194、国際連合総会第38会期の議事録に補足事項を含めることについての要請)

 ソビエト社会主義共和国連邦閣議の第一副議長、ソビエト社会主義共和国連邦外務大臣から国際連合事務総長宛の1983年8月19日付の書簡

 ソビエト連邦は、国際連合総会第38会期の議事録に、「宇宙空間における及び宇宙空間からの地球に対する武力行使の禁止に関する条約の締結」と題する事項を含めることを要請する。
 ソビエト連邦は、当該事項を提案するにあたり、宇宙空間の軍事化を避けようと務めている。この点に関して、宇宙空間における目標及び地球上の目標の双方を破壊することができる様々な宇宙兵器システムを作り出しかつ展開するための計画は特に危険である。
 ソビエト連邦は、軍備競争が未だ浸透していない宇宙空間に当該競争を拡大することを防止するための緊急かつ有効な措置を講ずることによって、宇宙空間を全人類にとって死滅の危険の源とするこれらの計画に対抗するための信頼できる手段を有することが絶対に必要であると考える。
 ソビエト連邦は、この目的のために、1981年に、宇宙空間においていかなる種類の兵器をも配置することを禁止する条約の締結に関する提案を国際連合に付託した。当該提案は、総会によって承認されたが、周知の理由で、当該条約の起草は未だ現実に開始されていない。
 しかし、時間は切れており、今や、ソビエト連邦は、それ以上の段階が宇宙空間における武力行使及び宇宙空間から地球に対する武力行使の一般的禁止に関する協定の形式で直ちに講ぜられるべきであることを提案している。ソビエト連邦は、関連条約草案を現在の会期に審議のために提出している。
 条約草案の最も重要な特徴は、宇宙空間の軍事化を禁止することを目的とする具体的な性質の措置によって、国家間相互の関係において、宇宙空間における武力行使及び宇宙空間からの武力行使を認めないという、国家の政治的、法的義務を組み合わせていることである。
 より正確には、ソビエト連邦は、地球上、大気圏及び宇宙空間における目標の破壊のために、宇宙空間に配置される兵器の宇宙空間における実験及び展開に関して完全な禁止を提唱している。
 ソビエト連邦はまた、対衛星兵器に係る問題の合理的な解決を提案している。新しい対衛星システムを作り出さない及び自国が既に所有する対衛星システムを破壊するという国家の無条件の誓約である。
 条約の締約国はまた、いかなる手段によっても、他の国の宇宙物体を破壊し、損傷を与え、その通常の機能を妨げ又はその飛行経路を変更することを慎むことを約束する。更に、条約は、対衛星を含む有人宇宙船の軍事目的での実験及び利用を禁止する。有人宇宙船は、科学的、技術的及び経済的な様々な種類の問題を解決するためにのみ使用されるべきである。
 ソビエト連邦によって提案される一連の広範囲な措置に関する行動は、国際連合によって早期に承認された目標、即ち、宇宙空間が専ら平和的な目的のために利用されることを確保することという目標の達成に向けての主要なかつ真の実体的な貢献を行うことである。
 私は、貴官がこの書簡を総会の手続規則に基づく説明覚書とみなし、同封の条約草案と共に総会の公式文書としてこれを配布することを要請する。

A.グロムイコ(GROMYKO)
  ソビエト社会主義共和国連邦閣議第一副議長
  ソビエト社会主義共和国連邦外務大臣

附属書
宇宙空間における武力行使及び宇宙空間から地球に対する武力行使の禁止に関する条約

 この条約の締約国は、
 国際連合加盟国が、その国際関係において、国際連合の目的と両立しない武力による威嚇又は武力の行使を慎まなければならないという原則を指針として、
 宇宙空間における軍備競争を避け、従って、人類にとっての核戦争の脅威の危険を軽減し、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用が専ら平和的な目的のために行われるという目標の達成に向けて貢献することを希望し、
 次のとおり協定した。
第1条 地球周回軌道上の、天体上の又はその他の方法で宇宙空間に配置した宇宙物体を破壊の道具として利用することによって、宇宙空間、大気圏及び地球上における武力の行使又は武力による威嚇に訴えることを禁止する。
更に、地球周回軌道上の、天体上の又はその他の方法で宇宙空間に配置した宇宙物体に対する武力の行使又は武力による威嚇に訴えることを禁止する。
第2条 この条約の締約国は、第1条の規定に基づき、次のことを誓約する。
1. 地球上、大気圏又は宇宙空間における物体の破壊のために宇宙空間に配置する兵器を地球周回軌道上に投入し又は天体上に配置し若しくはその他の手段で配置することによって実験し又は展開すること。
2. 地球周回軌道上の、天体上の又はその他の方法で宇宙空間に配置された宇宙物体を、地球上、大気圏又は宇宙空間にある目標を破壊するための手段として利用しないこと。
3. 他の国の宇宙物体を破壊し、損傷を与え、その通常の機能を妨げ、又はその飛行経路を変更させないこと。
4. 新しい対衛星システムを実験し又は作り出さないこと及び既に所有する対衛星システムを破壊すること。
5. 有人宇宙船を対衛星を含む軍事目的のために実験し又は利用しないこと。
第3条 この条約の締約国は、いずれの国家、国家集団、国際組織又は自然人若しくは法人が、この条約によって禁止された活動に従事することを援助し、奨励し又は勧誘しないことに同意する。
第4条
1. 各締約国は、この条約の規定に従うという保障を与えるために、国際法の一般的に承認された原則に基づいて、当該国が利用可能な検証のための自国の技術的手段を使用するものとする。
2. 各締約国は、本条1の規定に従って運用する他の締約国の検証のための自国の技術的手段を妨害しないことを誓約する。
第5条
1. この条約の締約国は、相互にこの条約又はその履行の目的に関連して生ずる問題を解決するにあたって協議しかつ協力することを約束する。
2. 本条1に定める協議及び協力はまた、国際連合の枠内の適切な国際的な手続を援用することによってかつ国際連合憲章に基づいて行うことができる。この援用はこの条約の締約国の諮問委員会の役務の利用を含めることができる。
3. この条約の締約国の諮問委員会は、この条約のいずれかの締約国の要請の後1カ月以内に寄託者が招集するものとする。いずれの締約国も同委員会の委員をつとめる一人の代表を任命することができる。
第6条 この条約の各締約国は、その管轄下又は管理下にあるいずれの場所においても、この条約の規定に反する活動を行うことを禁止し又は妨げるために、その憲法上の要件を満たすのに必要と考えられる国内措置を採択することを約束する。
第7条 この条約のいかなる規定も、国際連合憲章に基づく国家の権利及び義務に影響するものではない。
第8条 この条約の履行に関連して生ずるいずれの紛争も国際連合憲章に定める手続を援用することによって専ら平和的な手段によって解決するものとする。
第9条 この条約の存続期間は無期限とする。
第10条
1. この条約は、ニューヨークの国際連合本部で署名のためにすべての国家に開放するものとする。いずれの国も、本条3の規定に基づく効力発生以前にこの条約に調印しない場合には、いつでもこの条約に加入することができる。
2. この条約は署名国による批准を必要とする。批准書及び加入書は国際連合事務総長に寄託するものとする。
3. この条約は、第5番目の批准書の国際連合事務総長への寄託によって、批准書を寄託した国の間で効力を生ずるものとする。ただし、ソビエト社会主義共和国連邦及びアメリカ合衆国が批准書を寄託していることを条件とする。
4. この条約の効力発生の後に、批准書又は加入書を寄託する国については、条約はその批准書又は加入書の寄託の日に効力を生ずるものとする。
5. 国際連合事務総長は、すべての署名国及び加入国に、この条約の各々の署名の日、各々の批准書及び加入書の寄託の日、効力発生の日その他の通告を迅速に通知する。

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