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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(5) 日本国とアメリカ合衆国の間のスペースシャトル緊急着陸協定(1980年1月28日署名、発効)

 書簡をもって啓上いたします。
 アメリカ合衆国は、日本国外務省に敬意を表すると同時に、合衆国及び日本国の両政府によって、1967年10月10日に批准された月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約(宇宙条約)に言及する光栄を有します。
 合衆国政府は、日本国政府に対し、平和目的のために宇宙空間を探査するという目標を促進するにあたって、合衆国政府が、合衆国政府及び商業上の利用者並びに外国の利用者のために、使い捨て打上げ機に代わる低価格で、再利用可能な宇宙輸送システムを提供するため、また、宇宙空間における日常的で、確実かつ単純な作業を提供するため、1980年代にスペースシャトルの打上げ計画を有していることをお知らせいたします。
 スペースシャトルは、4ないし6回の軌道飛行試験が必要になります。これらの飛行はその目的上実験ですので、宇宙飛行士の安全確保のために緊急着陸が必要とされる可能性があります。スペースシャトルの飛行経路が制限されているために、いかなる緊急状態の下にあっても、合衆国領域内にスペースシャトルを着陸させることができません。従って合衆国政府は、合衆国外で必要となり得る措置を執ることを求めています。この緊急着陸を必要とする場合には、当該オービターの合衆国政府への送還を準備するため、合衆国の職員(米国航空宇宙局及び送還請負者)が着陸地点に派遣されます。
 合衆国政府は、飛行士の生命を守るため、日本国の領域内の飛行場にスペースシャトルが緊急着陸を行う場合には、宇宙条約第5条の規定に基づき、日本国政府が可能な限りのあらゆる援助を行うことを要請いたします。
 合衆国政府は、当該緊急事態に対処するため、計画情報を日本国政府に提供し、スペースシャトルの可能な限り安全な着陸を確保するために、日本国政府と協議いたします。
 合衆国政府は、宇宙条約第7条及び宇宙物体によって引き起こされた国際損害賠償協定に基づき、日本国の領域内でスペースシャトルが引き起こした損害に対する賠償責任を引き受ける用意をしております。
 合衆国政府は、以上を申し進める際に、ここに外務省に向かって敬意を表します。

1980年1月28日 東京にて
アメリカ合衆国大使館

科科第27号
昭和55年1月28日

口上書
 外務省は、在本邦アメリカ合衆国大使館に敬意を表すると共に、スペースシャトルの緊急着陸に関する1980年1月28日付同大使館口上書第65号を受領したことを確認し、更に同大使館に対し、次の通り通報する光栄を有します。
1. 日本国政府は、スペースシャトルが緊急着陸を行わざるを得ないような場合に、その乗員の生命を守るため、日本国の領域内にあって、係る着陸に適した飛行場に着陸を行い得るようにするためにすべての可能な援助を与えることは、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家間の活動を律する原則に関する条約(宇宙条約)第5条の規定に基づく、日本国政府の義務であることを十分理解するものであります。
2. 日本国政府は、両国政府の関係当局間で、緊急事態に関する十分な協議(情報の交換を含む。)を行うことが適当であると考えます。
3. 日本国政府は、合衆国政府が、宇宙条約第7条の規定に基づき、かつ宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約に従って、スペースシャトルによりに本国の領域内で引き起こされる損害について、責任を負う用意がある旨上記口上書において言明していることに留意します。
外務省

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