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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(12) 平和目的のための宇宙の探査及び利用における協力のための損害賠償責任に係わる相互放棄に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定
(1995年4月24日ワシントンで署名、1995年7月20日発効)

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、平和目的ための宇宙の探査及び利用における共同活動に適用される損害賠償責任に係る相互放棄に関する協定を締結することを希望し、
 次のとおり協定した。
第1条 この協定の目的は、平和目的のための宇宙の探査及び利用における共同活動に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協力を促進するため、損害賠償責任に係る相互放棄に関する枠組を確立することを目的とする。この目的を達成するため、この損害賠償の相互放棄は、幅広く解釈するものとする。
第2条 この協定は、附属書に掲げる共同活動であって、この協定の効力の発生の時に既に実施されているもの又はこの協定の有効期間中に開始されるものに適用する。日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、附属書に掲げる共同活動の一覧表の見直しを行うために定期的に協議するものとし、また、相互の合意により当該附属書を修正することができる。この協定は、1988年9月29日にワシントンで作成された常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、開発、運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府及びカナダ政府の間の協定(以下「IGA」という。)又はIGA協定の後に効力を生ずる協定であってIGA協定を修正し若しくはそれに代わるものに従って行われる活動については、適用しないものとする。
第3条 本条の規定の適用上:
1.
(a) 「当事者」とは、日本国政府及びアメリカ合衆国政府並びにこれらの機関をいい、それぞれの国の宇宙開発計画を実施するために日本国又はアメリカ合衆国の法令により設置された団体及び附属書において特定の共同活動(この活動のためにそれらの団体が指定される。)に関して指定されるその他の団体を含む。
(b) 「関係者」とは、以下のものをいう。
(1) 当事者の契約者又はその下請契約者(あらゆる段階の契約者を含む。);
(2) 当事者にとっての利用者又は顧客(あらゆる段階の利用者又は顧客を含む。);
(3) 当事者にとっての利用者若しくは顧客(あらゆる段階の利用者又は顧客を含む。)の契約者又はその下請契約者(あらゆる段階の契約者を含む。)。
「関係者」には、日本国及びアメリカ合衆国以外のいずれかの国又はその政府機関若しくは団体が、当事者との関係において(1)から(3)までのいずれかに該当する者である場合又はその他の形態により附属書に掲げる共同活動に関係する場合には、当該いずれかの国又はその政府機関若しくは団体を含める。
「契約者」及び「下請契約者」には、あらゆる種類の供給者をも含む。
(c) 「損害」とは、次のものをいう;
(1) 人の傷害、その他の健康障害又は死亡;
(2) 財産の損傷若しくは滅失又はその利用価値の喪失;
(3) 収入又は収益の喪失;
(4) その他の直接的、間接的又は二次的な損害。
(d) 「打上げ機」とは、搭載物又は人を運ぶ物体若しくはその一部であって、打上げ予定のもの、地球から打ち上げられたもの又は地球に帰還しつつあるものをいう。
(e) 「搭載物」とは、打上げ機に搭載され又は打上げ機で飛行し又は使用されるすべての財産をいう。
(f) 「保護される宇宙作業」とは、地球上若しくは宇宙空間で行われ又は地球と宇宙空間との間を移動中に行われる打上げ機及び搭載物に係るすべての活動を含む、附属書に掲げる共同活動の下で行われるすべての活動をいう。「保護される宇宙活動」には、少なくとも次の活動を含む。
(1) 打上げ機、移動機、搭載物、機器又はこれらに関連する支援のための装置、設備若しくは役務の研究、設計、開発、試験、製造、組立て、統合、運用又は利用:
(2) 地上支援、試験、訓練、模擬実験、誘導・制御装置又は関連の設備若しくは役務に係わるすべての活動。
「保護される宇宙作業」には、宇宙から帰還した後に地上で行う活動であって、関係共同活動以外の活動における使用を目的として搭載物の生産物又は搭載物に係る作業方法を更に開発するために行われるものを含めない。
2.
(a) 当事者は、損害賠償責任に関する相互放棄に合意し、これによって、保護される宇宙作業から生ずる損害についての請求であって、次の(1)から(3)までに掲げる者に対するものをすべて放棄する。この相互放棄は、損害を引き起こした者又は財産が保護される宇宙作業に関係しており、かつ、損害を受けた者又は財産が保護される宇宙作業に関係していたために当該損害を受けた場合に限り適用する。この相互放棄は、次の(1)から(3)までに掲げる者に対する損害賠償請求について適用し、当該損害賠償請求の法的基礎が不正行為(あらゆる程度及び種類の過失によるものを含む。)、契約その他のいかなるものであるかを問わない。
(1) 他方の当事者;
(2) 他方の当事者の関係者;
(3) (1)又は(2)に掲げる者の被雇用者;
(b) 更に、当事者は、自己の関係者に対し、契約その他の方法により(a)の(1)から(3)までに掲げる者に対するすべての請求の放棄に同意するよう要求することにより、(a)に規定する損害賠償責任に係る相互放棄を自己の関係者に及ぼす。
(c) この相互放棄は、損害を引き起こした者又は財産が保護される宇宙作業に関係しており、かつ、損害を受けた者又は財産が保護される宇宙作業に関係していたために当該損害を受けた場合において、1972年3月29日にワシントン、ロンドン及びモスクワで作成された宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約から生ずる責任についても、適用する。
(d) この条の他の規定にもかかわらず、この相互放棄は、次に掲げる請求には、適用しない。
(1) 当事者とその関係者との間又は一の当事者の関係者の間の請求;
(2) 自然人の傷害、健康障害又は死亡についての当該自然人又はその遺産管理人、遺族若しくは代位権者によって行われる請求;
(3) 悪意によって引き起こされた損害についての請求;
(4) 知的所有権に係る請求;
(5) 当事者が(b)に定める損害賠償請求の相互放棄を及ぼさなかったこと又は自己の関係者が(b)に定める損害賠償請求の相互放棄を及ぼすよう確保しなかったことから生ずる損害請求;
(6) 当事者間の契約の明示の規定に基づく請求。
(e) 本条のいかなる規定も、請求又は訴えの基礎を創設するものと解釈してはならない。
第4条 この協定の第3条の規定にかかわらず、この相互放棄は、附属書に掲げる共同活動の特性を考慮して、両政府間の相互の合意により制限することができる。
第5条
1. この協定は、日本国政府及びアメリカ合衆国政府が、この協定の効力発生のために必要なそれぞれの国内法上の手続を完了した旨を相互に通告する公文を交換した日に効力を生ずる。この協定は、5年間効力を有するものとし、その後は、いずれか一方の政府が6カ月前に他方の政府に対して文書による通告を行うことにより終了させない限り、引き続き効力を有する。
2. この協定の終了は、附属書に掲げる共同活動がこの協定の終了の時までに完了しているかいないかどうかを問わず、当該共同活動から生ずる請求についてのこの協定の適用に影響を及ぼすものではない。

 以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの協定に署名した。1995年4月24日ワシントンで、等しく正文である日本語及び英語により本書2通を作成した。
    日本国政府のために     栗山尚一
    アメリカ合衆国政府のために ティモシー・E・ワース
    附属書

第2条の規定に従い協定が適用される共同活動 第3条1(a)にいう機関,団体又はその他の者
日 本 米 国
1地球観測プラットフォーム技術衛星
 (ADEOS)計画
宇宙開発事業団 航空宇宙局
2宇宙飛行士訓練計画 宇宙開発事業団 航空宇宙局
3マニュピュレーター飛行実証試験計画 宇宙開発事業団 航空宇宙局
4熱帯降雨観測衛星(TRMM)計画 宇宙開発事業団 航空宇宙局
5環境観測技術衛星(ADEOS-II)計画 宇宙開発事業団 航空宇宙局
海洋大気庁
6資源探査用将来型センサー(ASTER)計画 通商産業省 航空宇宙局
7超長基線電波干渉計宇宙天文台計画
 (VSOP)計画
宇宙科学研究所 航空宇宙局


外務大臣 河野洋平
内閣総理大臣 村山富市

(日本側書簡)
 アメリカ合衆国地球規模問題担当
 国務次官 ティモシー・E・ワース殿
 本使は、本日署名された平和目的のための宇宙空間の探査及び利用における協力のための損害賠償責任の相互放棄に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(以下「協定」という。)を締結するための交渉に言及するとともに、日本国政府に代わって以下を提案する光栄を有します。
 協定第3条に関し、
1. 平和目的のための探査及び利用に関する共同活動を促進するために損害賠償責任に係わるより広範な相互放棄によって得ることができる相互の利益を考慮し、両政府は、いずれか一方の政府が同条2(d)(2)の規定により代位権者として同条2(a)(1)から(3)までに掲げる者に対し、保護される宇宙作業から生ずる損害について請求を行う場合には、当該請求を行う政府は、当該者の関連する金銭上の負担が可能な限り生じないよう適当かつ必要な措置をとることに合意する。
2. 両政府は、また、1の措置がそれぞれの国の関係法令及び利用可能な予算に従ってとられることに合意する。
 本使は、更に、前記のことがアメリカ合衆国政府にとって受諾し得るものであるときは、この書簡及び貴官の返簡が両政府の合意を構成し、その合意が協定の効力発生の日に効力を生ずるものとすることを提案する光栄を有します。
 本使は、以上を押し進めるに際し、ここに貴官に向かって敬意を表します。
    アメリカ合衆国駐在
    特命全権大使 栗山尚一

(米国側書簡)
 日本国大使 栗山尚一閣下
 書簡をもって啓上いたします。本官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

 [日本側書簡]
 本官は、更に、前記のことがアメリカ合衆国政府にとって受諾し得るものであることをアメリカ合衆国政府に代わって確認するとともに、閣下の書簡及びこの返簡が両政府間の合意を構成し、その合意が平和目的のための宇宙の探査及び利用における協力のための損害賠償責任の相互放棄に関するアメリカ合衆国政府と日本国政府との間の協定の効力発生の日に効力を生ずるものとすることに同意する光栄を有します。
 本官は、以上を押し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。
    アメリカ合衆国地球規模問題担当
    国務次官 ティモシー・E・ワース

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