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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(6) 平和目的のための宇宙空間の探査及び利用における協力に関するアメリカ合衆国とロシア連邦の間の協定(1992年6月17日ワシントンで署名、発効)

 アメリカ合衆国とロシア連邦(以下「当事国」という。)は、
 平和目的のための宇宙空間の探査及び利用における両国の役割を考慮して、
 宇宙空間の探査及び利用の成果を両国の人民並びに世界のすべての人民の利益のために提供することを希望し、
 一般的な利益のための宇宙技術の商業的応用の可能性における当事国の各々の利益を考慮して、
 月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約、双方の国が当事国たる宇宙空間の探査及び利用に関するその他の多国間協定の規定を考慮して、
 天文学、宇宙物理学、地球科学、宇宙生物学並びに宇宙医学、太陽系探査並びに太陽―地球物理学の分野における協力の達成に満足の意を表し、これらの分野並びにその他の分野における協力を継続し及び向上させようという希望を表明し、
 次のとおり協定した。
第1条 当事国は、その実施機関を通じて、平等、相互性並びに相互利益に基づく、宇宙科学、宇宙探査、宇宙応用、及び宇宙技術の分野における民事宇宙協力を実施するものとする。
協力は、有人及び無人宇宙飛行プロジェクト、地上からの活動及び実験、次の分野のその他の活動を含む。
宇宙からの世界的な環境の監視、
アメリカ合衆国の宇宙飛行士並びにロシアの宇宙飛行士の参加を含むスペース・シャトル及びミール宇宙基地のミッション、
宇宙飛行活動の安全性、
宇宙生物学並びに宇宙医学、及び
火星探査のようなその他の領域における共同作業の可能性の検討。
第2条 当事国は、これにより、この協定の第1条に掲げる協力を発展させ及び実施するために、各々、主たる実施機関として、合衆国については国家航空宇宙局及びロシア連邦についてはロシア宇宙庁を指定する。
当事国は、この協定の第1条に定める分野における特定の協力活動の実施を容易にするために必要と考える追加の実施機関を指定することができる。
各協力プロジェクトは、プロジェクトの性質及び範囲、プロジェクトに関連する指定実施機関の連帯責任、出資分担がある場合には、財政取極、及びこの協定の規定に適合する知的所有権の保護を定める指定実施機関の間の特定の文書による合意の対象となる。
第3条 この協定に基づく協力活動は各当事国の国内法令に従い行われるものとし、利用可能な資金の限度にとどまるものとする。
第4条 この協定に基づき進行中の二国間協力の政府レベルでの再検討のための仕組みを提供するため及びこれらの宇宙に関する様々な問題についての見解を交換するために民事宇宙協力に関する年次協議を開催するものとする。これらの協議は、また、この協定の範囲に該当する新しい活動についての提案を行うための主たる手段を提供することができる。
第5条 この協定は、いずれか一方の当事国の他の国及び国際組織との協力を害するものではない。
第6条 当事国は、この協定並びにこの協定の第2条に従い締結された関連協定に基づき創出された又は提供された知的所有物の適切かつ効果的な保護を確保する。知的所有物に対する権利の配分がこれらの協定に定められている場合には、この配分は、この協定の不可分な一部である、この協定に附随する附属書に従い行われるものとする。この協定は、必要かつ適当な限度で、知的所有物の保護並びに配分についての異なる規定を含むことができる。
第7条 この協定は、当事国による署名により効力を生じ、5年間効力を有するものとする。この協定は、外交覚書の交換により、更に5年の期間延長することができる。この協定は、いずれか一方の当事国が、外交経路を通じて、他方の当事国に文書による通告を与えることによって6カ月後に終了させることができる。

 1992年6月17日にワシントンで、等しく正文である英語及びロシア語により本書2通を作成した。
(署名省略)

附属書:知的所有権
 この協定の第6条に基づき、
 当事国は、この協定及びこの協定の第2条に従って締結された関連協定に基づき創出された又は提供された知的所有権の適切かつ効果的な保護を確保するものとする。当事国は、相互に、適時、この協定に基づき生ずる発明又は著作権付き製作品を通告し、かつ、適時この知的所有権の保護を求めることに同意する。この知的所有物に対する権利は、この附属書に定める所により配分される。

I.範囲
a. この附属書は、この協定に基づいて行われるすべての協力活動に適用される。ただし、当事国又はその指定機関により別段に特別に合意される場合を除く。
b. この協定の適用上、「知的所有権」とは1967年7月14日にストックホルムで締結された世界知的所有権機関を創設する条約の第2条に掲げる意味を有するものとする。
c. この附属書は、当事国間での権利、利益、及び特許使用料の配分を定める。各当事国は、他方の当事国が、必要な場合には、契約その他の法的手段により自国の参加者からこれらの権利を得ることによって、この附属書に従って配分される知的所有物に対する権利を得ることができるよう確保する。この附属書は、一の当事国の法律及び慣行により決定される、この当事国とその国民の間の、配分を別段に変更し又は害するものではない。
d. この協定に基づき生ずる知的所有物に関する紛争は、関係参加機関の間の又は、必要な場合には、当事国又はその指定機関の間の討議により解決すべきである。当事国相互の合意により、紛争は、国際法の関係規則に従い拘束力を有する仲裁のために仲裁裁判所に付託される。当事国又はその指定機関が別段に文書により合意するのでなければ、国連の仲裁規則を適用する。
e. この協定の終了又は失効はこの附属書に基づく権利又は義務に影響するものではない。

II.権利の配分
a. 各当事国は、すべての国において、この協定に基づく協力から生ずる科学・技術雑誌の論文、報告及び書籍を翻訳し、複製し及び公的に配布することについての非独占的な、変更不可能な、使用料無料の許可を与えられる。この規定に基づき準備された特許権付き著作の公的に配布されたすべての写しは、著作の著者名を表示するものとする。ただし、著者が名前の表示を明示的に拒否する場合はこの限りではない。
b. a.に定める権利以外のすべての種類の知的所有物に対する権利は、次のように配分される。
1. 客員研究員及び主として自己の知識を深めるために滞留している科学者は、受け入れ機関の方針に基づき知的所有権を得るものとする。更に、発明者として名前を表示される各客員研究員及び科学者は、当該知的所有物の免許交付から受け入れ機関が得る使用料の一部の配分を受ける権利を有する。
2.
(a) 両当事国からの参加による共同研究の期間中創出された知的所有物については、当事国、参加機関、又は参加要員が実施前に作業の範囲に関して同意している場合には、各当事国は、自国におけるすべての権利及び利益を得る権利を有する。第三国における権利及び利益は、各当事国による知的所有物の創出に対する経済上、科学上、及び技術上の貢献を正当に尊重して配分されるものとする。研究がこの協定の第2条に基づいて締結された関連協定において「共同研究」に指定されていない場合には、研究から生ずる知的所有物に対する権利はb1.に従い配分されるものとする。更に、発明者として名前を表示される各要員は、当該所有物の許可から当該機関が得る使用料の一部の配分を得る権利を有する。
(b) b2(a)の規定にかかわらず、一の種類の知的所有物が一方の当事国の法律に基づいて利用することができるが、他の当事国の法律の下では利用できない場合には、自国の法律がこの種の保護を定める当事国は、当該知的所有物に対する権利を定めるすべての国においてすべての権利及び利益を受ける権利を有するものとする。それにもかかわらず、発明者として名前が表示される要員は、b2(a)に定める使用料に対する権利を有する。

III.商業上の秘密情報
 各当事国及びその参加者は、適時、商業上の秘密として指定された情報がこの協定に基づいて提供され又は創出される場合には、関係法、規則及び行政上の慣行に従い、当該情報を保護する。情報は、情報を有する者が当該情報から経済的利益を得ることができる場合若しくは当該情報を持たない者に対して競争における利益を得ることができる場合、情報が一般的に知られていないか又は他の出所から公的に入手されない場合、及びその所有者が以前に適時当該情報を秘密にする義務を課すことをせずには提供しなかった場合、「商業上の秘密」とみなすことができる。

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