第1条 |
定義
この協定の適用上、
1. |
「商業宇宙打上げ業務」とは、国際的な顧客に対して商業的に申し出られ又は提供された、少なくとも通信衛星を含む、宇宙機又は衛星の宇宙空間への打上げ業務をいう。 |
2. |
「ロシアの宇宙打上げ業務供給者」とは、ロシア連邦政府により商業宇宙打上げ業務又は当該業務のための宇宙打上げ機の提供を許可された団体、又は当該団体に代わって行動する機関又は組織をいう。 |
3. |
「国際的な顧客」とは、宇宙機又は衛星の最終的な所有者又は運用者であり、又は当該宇宙機若しくは衛星をこの最終的な所有者又は運用者による利用のために軌道に投入する人、又はいずれかの種類の社団法人、会社、組合、ベンチャー、パートナーシップその他の団体(営利目的で組織されているかどうか、また民間又は政府が所有し又は管理しているかどうかを問わない。)、又はアメリカ合衆国政府及びロシア連邦政府を除く、いずれかの政府機関、又は少なくともインテルサット、インマルサット及びその法律上の後継機関を含む、政府間機関若しくは準政府コンソーシアムをいう。 |
4. |
「契約」とは、
(i) |
打上げを国際的な市場における競争から実際上外すように、商業宇宙打上げ業務の供給に同意し又はそのような約束を行うこと、若しくは、 |
(ii) |
当該合意又は約束をいう。 |
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5. |
「比較可能な商業宇宙打上げ業務」とは、当該業務の価格及び条件を評価する際に考慮することができる、予定軌道、危険管理、資金調達、衛星の軌道上での寿命及び統合経費を含む特別な要素を考慮して、打上げ競争の主体である重量級の宇宙機の打上げを申出る商業宇宙打上げ業務をいう。 |
6. |
「誘因」とは、少なくとも、打上げ業務に係る競争に無関係な商業的な価値を有するいずれかの資源の供給並びに有利な条件の下での国家の安全保障政策及び計画並びに開発援助政策及び計画の実施への参加の提案を含む、商業宇宙打上げの購入に影響する誘因の提供をいう。 |
7. |
「不正な商慣習」とは、いずれかの者のための又はいずれかの者との取引を獲得し又は保持し、若しくはいずれかの者に取引を仕向けるためにいずれかの公務員、個人その他の団体に対して、何らかの申出を行うこと、支払を行うこと、支払を約束すること、価値を有するいずれかの物を約束すること又は提供すること若しくは価値を有するいずれかの物の支払を許可すること又は支払を行う約束をすることを含み、支払のすべて又は一部が、取引を獲得し又は保持するために、直接的又は間接的に、いずれかの公務員、個人その他の団体に提供され、与えられ、又は約束されることを承知で、いずれかの者に対する支払を行うことを含む。 |
8. |
「静止地球軌道」とは、搭載物が地球に対して定位置を保持しながら、24時間で地球軌道を一周する、赤道地表面上空約19,400マイル(35,900km)の軌道をいう。 |
9. |
「静止遷移軌道」とは、宇宙機又は衛星を静止地球軌道に移すために利用される一時的な軌道をいう。 |
10. |
「低地球軌道」とは、地球表面上空約100から1,000マイル(185〜1,850km)の軌道をいう。 |
11. |
「主たる搭載物」とは、電気通信衛星、又は当該衛星がない場合には、その他の宇宙機又は宇宙機を組合せたものをいう。 |
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第2条 |
範囲
この協定は静止地球軌道又は静止遷移軌道への打上げのための商業宇宙打上げ業務に適用する。第5条2に定められる価格設定の規定を除いて、この協定は、その他の軌道への打上げ及び弾道打上げのための商業宇宙打上げに適用する。この協定のいかなる規定も、独立国家共同体加盟国によって、主として自国の利用のために、既存の協力協定に従って行われる宇宙機又は衛星を利用する計画を含む、各々の締約国の軍事目的のための又は非商業的な民事宇宙計画における利用のための搭載物の打上げに適用するものではない。
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第3条 |
一般規定
1. |
当事者は、低価格設定及び不正な商慣習を避けることを含む、商業宇宙打上げ業務の供給者間の国際的な競争への市場原理の適用を確保するように努めるものとする。 |
2. |
いずれの当事者も少なくとも次のものを含む、商業宇宙打上げ業務の供給者間での競争を歪める慣行に従事してはならない。
a. |
商業宇宙打上げシステムの供給者に対し製造費又は運用経費を歪める交付金又は補助金を与えること。 |
b. |
商業宇宙打上げ業務の国際的な顧客又は潜在的な国際的な顧客に誘因を与えること。 |
c. |
比較可能な危険についての国際的な市場において通常行われている率及び慣習と同等のものを除く、保険又は再飛行保証のような追加業務の提供。 |
d. |
経済協力開発機構(OECD)の「公的支援による輸出信用の指針に関する取極」の条件に従うものを除く、商業宇宙打上げ機又は業務に対する政府支援による融資の供与。 |
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3. |
その機関及び代理機関を含む当事者は、商業宇宙打上げ業務を提供する契約を確保するために不正な商慣習に従事してはならない。各当事者はまた、当該当事者により所有されるか又は管理されるかを問わず、自国の管轄権に従ういずれかの団体又は組織が商業宇宙打上げを提供する契約を確保するために不正な商慣習に従事しないことを確保するように努める。 |
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第4条 |
数量制限
1. |
この協定の有効期間中、ロシアの宇宙打上げ業務供給者は、国際的な顧客と(インマルサット3号衛星に加えて)8機までの主たる搭載物の静止地球軌道又は静止遷移軌道への打上げのための商業宇宙打上げ業務を提供する契約を締結することができる。ただし、ロシアの打上げ業務供給者が2回以上のこれらの打上げを12カ月間内に実施することができない場合を除く。ロシア連邦は、ロシアの宇宙打上げ業務供給者による契約の比例配分をいずれか2年の期間内に確保する。 |
2. |
主たる搭載物の静止地球軌道又は静止遷移軌道への4回までの打上げは単一の打上げ機に2機の搭載物を搭載することにより行うことができる。
当事者は、共同で、各打上げを事例毎に評価し、かつ、国際的な商業宇宙打上げ市場における現状を考慮して、相互の合意により、第4条1の適用上、単一の主たる搭載物として当該打上げを扱うことを決定することができる。 |
3. |
この協定の有効期間中、ロシアの宇宙打上げ業務供給者はイリジウム・システムのための低地球軌道への衛星の3回までの打上げについて商業宇宙打上げ業務を提供する契約を締結することができる。 |
4. |
第7条1に基づく協議の過程で、締約国は、競争的な比較可能な商業宇宙打上げ業務が存在する場合には、弾道軌道への商業打上げ及び静止地球軌道、静止遷移軌道並びにイリジウム・システムのための低地球軌道以外の軌道への追加の商業打上げについて、共同で事例毎に考慮し、かつ、ロシア商業宇宙打上げ業務供給者による提案に関して、相互の合意により、決定する。 |
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第5条 |
価格設定
1. |
ロシアの宇宙打上げ業務供給者により国際的な顧客に申し出られ又は提供される商業宇宙打上げ業務に係る価格を含む契約上の条件は、合衆国を含む市場経済諸国の商業宇宙打上げ業務供給者により申し出られる、価格を含む、比較可能な商業宇宙打上げ業務についての条件に匹敵するものでなければならない。 |
2. |
ロシアの宇宙打上げ業務供給者による、合衆国を含む市場経済諸国の商業宇宙打上げ業務供給者による最も低い入札又は申出を7.5%以上下回る価格での商業宇宙打上げ業務提供の入札又は申出は、この協定の第8条2の規定に基づく当事者間の特別な協議を必要とするものとする。 |
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第6条 |
技術管理
1. |
この協定の他の規定にかかわらず、締約国は、各打上げに先立ち、合衆国の輸出免許に従い、各搭載物について十分な技術保護協定を交渉し及び締結する。この技術保護協定は、合衆国の輸出免許の交付を容易にすることを意図し、かつ、ミサイル技術の移転の管理に関する要件を含むものとする。 |
2. |
合衆国輸出免許の申請は、合衆国の法令に従い、事例毎に検討される。この協定のいかなる規定も、合衆国が自国の輸出免許に関して適当な措置を講ずるのを妨げることを意味すると解釈されてはならない。合衆国は、自国の法令に従い、この協定に従う技術移転の許可及び達成を確保するために最善の努力を払う。 |
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第7条 |
協議
1. |
当事者は、協定の履行及び商業宇宙打上げ業務における市場開発を再検討し及び調査するための年次定期協議を開催する。 |
2. |
両当事者は、可能な場合には、商業宇宙打上げ業務についての契約の締結に先立ち、いずれか一方の当事者が当該契約又は係争中の契約がこの協定の規定に従っていないと信ずる理由がある場合には、当該締約国の要請により、緊急の特別協議を開催するものとする。 |
3. |
この協定に基づいて定められる協議の後に、いずれか一方の当事者が他方の当事者がこの協定の規定に違反していることを決定する場合には、各当事者は、自国の国内法令に基づいて認められる措置を講ずる権利を留保する。 |
4. |
1に定められる年次再検討の過程で、双方の当事者が商業宇宙打上げ業務が予想される以上に順調に発展していることに合意し、各当事者が、他方の当事者がこの協定の規定に適合していることに満足する場合には、双方の当事者の文書による合意により、この協定の第5条に定める割当数量を増加することができる。 |
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第8条 |
情報の交換
1. |
当事者は、価格、商業宇宙打上げ業務についての提供の条件を含む、この協定の履行の監視及び定期的協議及び特別な協議実施に必要なすべての情報を交換する。この情報は、直ちに、どのような場合でも、他方の締約国による当該情報の要請を受理した後30日以内に提供しなければならない。ただし、当該情報が商業宇宙打上げの入札に先立ち提供される必要はない。 |
2. |
当事者は、交換した情報の機密を保護し、当該情報を金銭的な利益を得るために利用してはならず、かつ、当該情報を第三者に公表してはならない。 |
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第9条 |
期限及び再検討
1. |
この協定は署名により効力を発生し、2,000年12月31日まで引き続き効力を有する。 |
2. |
当事者は、効力発生から3年を経過した後、この協定の履行を再検討する。この再検討に続いて、当事者は、相互の文書による合意により、この協定を終了させることができる。 |
3. |
いずれか一方の当事者は、商業宇宙打上げ業務の国際的な市場における発展並びにロシアの宇宙打上げ部門の市場制への移行における進捗状況を考慮して、この協定の期限の改正のための交渉を要請することができる。 |
4. |
この協定に基づき締結された契約は、たとえ契約期間がこの協定の終了期限以上に及ぶとしても、引き続きこの協定の規定に従うものとする。この協定の終了は、この協定に基づき締結された契約に影響するものではない。 |
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