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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

第5条 責任に関する相互放棄

5.1 この条の目的は、宇宙基地を通じての宇宙空間の探査、利用及び投資への参加を助長するため、この協定の当事者及び関連団体による損害賠償責任に係る請求の相互放棄を定めることにある。更に、IGA第16条に要求される損害賠償責任の要件に照して、この条の第二の目的は、宇宙基地計画におけるアメリカ合衆国政府の関連団体に対して損害賠償責任に関する相互放棄を拡大することについての参加国としてのアメリカ合衆国の義務を履行することである。かくして、この条に従って、NASA及びアメリカ合衆国政府の関連団体としてのRSAは、この条の適用上、IGA参加国によって合意された損害賠償責任に関する請求の相互放棄の適用によって保護される。損害賠償責任に係る請求の相互放棄は、宇宙活動への参加を奨励する目的を達成するために幅広く解釈するものとする。
5.2 本条の規定の適用上、
(a) 「損害」とは、次のものをいう。
(1) 人の身体の傷害その他の健康の障害又は死亡
(2) 財産の損傷若しくは滅失又はその利用価値の喪失
(3) 収入又は収益の喪失、若しくは
(4) 他の直接的、間接的、又は二次的な損害
(b) 「打上げ機」とは、搭載物又は人、若しくはその双方を運ぶ物体(又はその一部)であって、打上げ予定のもの、地球から打ち上げられたもの又は地球に帰還しつつあるものをいう。
(c) 「参加国」とは、IGAの署名国をいう。「参加国」には、その協力機関を含む。「参加国」には、また、NASAと日本国政府との間の了解覚書において当該協定の実施について日本国政府の協力機関を補佐するものと定められる団体を含む。
(d) 「搭載物」とは、打上げ機に搭載され又は打上げ機で使用されるすべての財産、若しくは宇宙基地上に搭載され又は宇宙基地上で使用されるすべての財産をいう。
(e) 「保護される宇宙作業」とは、この協定、IGA、NASA及び宇宙基地参加主体の協力機関との間の了解覚書、又はIGA及び当該了解覚書の実施取極の実施として、地球上若しくは宇宙空間で行い又は地球と宇宙空間との間を移動中に行う打上げ機、宇宙基地及び搭載物に係るすべての活動をいう。「保護される宇宙運用」には、少なくとも次の活動を含む。
(1) 打上げ機、移動機(例えば軌道上作業機)、宇宙基地、搭載物、並びにこれらに関連する支援のための装置及び設備又は役務に関わる研究、設計、開発、試験、製造、組立て、統合、運用又は利用
(2) 地上支援、試験、訓練、模擬実験、誘導及び制御装置、又はこれらに関連する設備若しくは役務に係るすべての活動
「保護される宇宙作業」には、また、IGA第14条に定めるところに従い、宇宙基地の発展に関わるすべての活動を含む。「保護される宇宙作業」には、搭載物を宇宙基地から回収した後に地上で行う活動であって、この協定又はIGAの実施としての宇宙基地関連活動以外の活動における使用を目的として、当該搭載物の生産物又は当該搭載物内の作業方法を更に開発するために行うものを含まない。
(f) 「関係者」とは、次のものをいう。
(1) 当事者又は参加国との契約者又はその下請契約者(あらゆる段階の契約者又は下請契約者を含む。)
(2) 当事者又は参加国にとっての利用者又は顧客(あらゆる段階の利用者又は顧客を含む。)、又は
(3) 当事者又は参加国にとっての利用者若しくは顧客(あらゆる段階の利用者又は顧客を含む。)との契約者又はその下請契約者(あらゆる段階の契約者又は下請契約者を含む。)
「契約者」及び「下請契約者」には、あらゆる種類の供給者を含む。
5.3
(a) 各当事者は、損害賠償責任に関する請求の相互放棄に合意し、これによって、保護される宇宙作業から生ずる損害についての請求であって、次の(1)から(4)までに掲げる者に対するものをすべて放棄する。この相互放棄は、損害を引き起した者又は財産が保護される宇宙作業に関係しており、かつ、損害を受けた者又は財産が保護される宇宙作業に関係していたために当該損害を受けた場合に限り適用する。この相互放棄は、次に掲げる者に対する損害賠償請求に適用し、違法行為及び不法行為(あらゆる程度及び種類の過失を含む。)並びに契約を含むが、それに限定されない当該請求の法的基礎がいかなるものであるかを問わない。
(1) 他の当事国
(2) アメリカ合衆国以外の参加国
(3) (1)又は(2)に掲げる団体の関連団体、又は
(4) (1)又は(3)に掲げる団体の被雇用者
(b) 更に、各当事者は、自己の関係者に対し、契約その他の方法によって(1)から(4)までに掲げる者に対するすべての請求を放棄することに同意するよう要求することにより、(a)に規定する損害賠償責任に関する請求の相互放棄を自己の関係者に及ぼす。
(c) この損害賠償責任に関する請求の相互放棄には、損害を引き起した者又は財産が保護される宇宙作業に関係しており、かつ、損害を受けた者又は財産が保護される宇宙作業に関係していたために当該損害を受けた場合に、1972年3月29日の宇宙物体によって引き起された損害に関する国際賠償責任に関する条約から生ずる責任に関する請求の相互放棄を含むことが確認される。
(d) この条の他の規定にかかわらず、この損害賠償責任に関する請求の相互放棄は、次の請求には適用しない。
(1) NASA及びRSA間のいずれかの契約に基づいて行われた活動から生ずるNASA及びRSAとの間の請求
(2) 当事者及びその関係者との間若しくはその関係者間の請求
(3) 自然人の身体の傷害又は死亡について当該自然人、その遺産管理人、遺族若しくは代位権者によって行われる請求
(4) 悪意の行為によって引き起こされた損害についての請求
(5) 知的所有権に係る請求
(e) この条のいかなる規定も、請求又は訴訟の基礎を創設するものと解してはならない。

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