このように宇宙には多様なブラックホールが存在するので、「星がつぶれてブラックホールになる瞬間を見てみたい」と思うのが人情でしょう。実はそれに対応すると思われる現象が分かってきています。それは「ガンマ線バースト」という天体現象です。 冷戦のさなかの1960年代、アメリカはソ連の核実験を監視すべく、核実験に伴って発生するガンマ線をとらえる人工衛星を打ち上げました。幸い地上からのガンマ線は来なかったのですが、かわりに宇宙からときおりガンマ線が津波のように到来する謎の現象が発見され、「ガンマ線バースト」と呼ばれるようになりました。しかしガンマ線バーストがいつどこで起こるのかは全く予測できず、ガンマ線がピカッと光っても、数秒から数分で消えてしまいます。運よくガンマ線の発生位置を決め、後からそのあたりを望遠鏡で探しても、怪しい天体は何も見つからない状態でした。 1997年、ついにイタリアの衛星が、バーストの発生から数時間のうちに、天球上のその位置を決めることに成功しました。それを地上に伝え、光の望遠鏡で観測したところ、ガンマ線よりずっとゆっくり消えてゆく、爆発の「残光」が見つかったのです。さらに残光が消えたあと、その位置を可視光でよく調べたところ、ひじょうに遠方にある銀河、すなわち宇宙が若かったころの銀河が、そこに発見されました。したがってガンマ線バーストは、宇宙の果てで発生する大爆発らしいということがわかってきたのです。そんな遠方で発生しても、なおかつ強烈なガンマ線がキャッチされるわけですから、とてつもなく巨大なエネルギーの解放が起きていることは、間違いありません。
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