Q. 先生が特に興味を持っている研究は何でしょうか?
個人的に興味があるのは、太陽系外の惑星系の光を見ることです。先ほど、惑星の原料となる塵の円盤の話をしましたが、惑星系の塵は、惑星ができる前からあったものだけではありません。惑星系の形成が始まって間もない頃、惑星の基となる小天体がぶつかりあって新たに大量の塵を作り出す時期があると考えられています。惑星を作り終わり、元々の塵は無くなったと思われる成熟した星の周りにも、塵円盤が観測されることがあります。惑星系が形成されるどの段階のどのような現象による「塵」を見ているのかはまだはっきりしませんが、私たちは、何らかの途中の過程を見ているのです。
例えば、こと座のベガという星があります。0等星のベガは、星の明るさを決めるときの基準として使う、天文学では特別な星です。このベガは、可視光で見ると普通の星なんですが、赤外線で見ると、ほかの星よりも明るいことが、1980年代の赤外線天文衛星IRASにより発見されました。「あかり」は全天の観測によって、沢山の新しいサンプルを見つけています。これまでよりも塵の少ない、従って赤外線が暗いものまで観測しています。分析を進めるうちに、きっと新しい発見があると期待します。太陽系外の惑星が作られる過程を、「あかり」でぜひ見たいと思います。
Q. 天文学の魅力は何だと思われますか?
基本にあるのは、好奇心です。私たちは宇宙の中にある地球に住んでいます。自分たちが存在する宇宙というのは、人間にとってとても興味深いところです。「知りたい」という欲求があって、その欲求をすべて満たすことは難しいけれども、自分たちで少しずつでも見て解き明かしていくのは、とても面白いことだと思います。宇宙のことを理解するためには、とにかく、いろいろ観測するしかありません。また、個人的に一番興味があるのは、「私たちと同じような仲間が宇宙のどこかにいるのか?」ということで、それを自分で見てみたいという思いがあります。
宇宙はまだまだ分からないことだらけです。21世紀のはじめ、アメリカのWMAP衛星の観測などによって、宇宙の構造を決めるエネルギーの約7割は、これまで私たちが知らなかったダークエネルギーであることが分かりました。これまでの研究で宇宙のいろいろなことが分かってきたと思っていたのに、突如、「あれ?実は何も知らなかった」ということになってしまったんです。そういう意味でも、宇宙の謎は尽きることがありません。そして、私たちの探究心も尽きることなく、続いていくのだと思います。