2010年11月に北京で行われたGEO閣僚級会合(提供:GEO)
北京で行われたGEOの閣僚会議では、政策決定にかかわる関係機関に、観測データへのアクセスを提供し続けることの重要性、観測の必要性が改めて確認されたほか、各プロジェクトや、要求性の高いことについて話し合われました。政府や官僚は、あらゆる要素に関して「観測」を必要としていますし、GEOが構築する「複数システムからなる全球地球観測システム(GEOSS: Global Earth Observation System of Systems)」の有用性を高く評価しました。そして、GEOを維持し、さらに長い期間活動を続けていくことで合意を得ました。
将来に関して決まったことの1つが、GEOの活動を、2015年以降も続けていくための法的な枠組みについて検討し始めることです。なぜなら、従来GEOは、2005年に制定された10年実施計画に基づいて進められていたからです。そのほか、データへの自由なアクセスを実現するため、GEOに提供された観測データをできる限り幅広く、数多く提供し、利用できるようにするシステムを設けるべきだとの合意が得られました。具体的には、データコア(DataCore)と呼ばれるシステムを使い、GEOの観測データをだれでも自由に無料で利用できるようにします。データのユーザーは、各国の政府や機関の政策を決めるうえで顧問を務める専門家や科学者です。
さらに、今後も新しいプロジェクトを発展させていくということで、閣僚たちの合意が得られました。例えば、炭素プロジェクトや森林炭素トラッキング、森林炭素の将来的な貯蔵量に関する研究、GEO-BON(The Groupe on Earth Observation Biodiversity Observation Network:地球観測グループ生物多様性観測ネットワーク)といったプロジェクトです。GEO-BONはGEOSSの下に組織されたもので、従来は地域単位でしか行われていなかった生物多様性に関する観測を、地球規模で把握することを目的にしています。
陸域観測技術衛星「だいち」
JAXAは以前から、人工衛星を用いた地球観測において、素晴らしい活動をしてきました。その結果、現在、陸域観測技術衛星「だいち」によって、Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)を使った森林の観測を、世界に先駆けて実現しています。これは、森林の面積や炭素量を算出するうえで、とても貴重なものです。
また温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」は、大気中の炭素の量を観測することを専門とした世界で唯一の人工衛星です。「いぶき」による観測データに加えて、欧州宇宙機関やNASAの地球観測衛星の観測データも利用されるわけですが、「いぶき」のデータはとても貴重です。本来は、NASAによる炭素観測衛星「OCO」の観測データも利用できるようになるはずだったのですが、残念なことに2009年の打ち上げに失敗し、OCO 2号機の打ち上げが行われない限り、「いぶき」の観測データは、現在、世界で最も貴重なものとなっています。 Q. 炭素プロジェクトに対して、今後JAXAに期待することは何でしょうか?JAXAがこれまで情熱を傾けてきた温室効果ガスの観測プロジェクトについては、それをさらに推進してほしいです。「いぶき」の観測データの分析を進め、炭素プロジェクトに利用できるようになればと思います。
ジョゼ・アシャシュ(José Achache)
地球観測に関する政府間会合(GEO)事務局長
パリ第6大学(ピエール・エ・マリー・キュリー大学)で地球物理学の博士号、パリ第5大学(ルネ・デカルト大学)で物理学の博士号を取得。1989年、パリ地球物理学研究所(IPGP)教授に就任。IPGPの地球科学大学院の大学院長を務めた後、1996年にフランス地質学鉱物学研究局の研究開発部副部長。1999年、フランス国立宇宙研究センター(CNES)の大統領顧問。2000年、CNES副理事長。2002年、欧州宇宙機関(ESA)の地球観測プログラムのディレクター。2004年、イタリアにあるESAの地球観測センター(ESRIN)のディレクターを兼任。2005年、GEO事務局長に就任し、現在に至る。