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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(10) サン・マルコ射場からのNASAの衛星打上げに関するアメリカ合衆国とイタリアの間の交換公文によって発効した了解覚書
(1969年4月30日及び6月12日にローマで署名され同年6月12日に発効)

アメリカ側書簡
 1969年4月30日、ローマにおいて
 書簡をもって啓上いたします。

 本使は、サン・マルコ射場において、NASAの実験衛星のための打上げ及び関連業務が提供される条件に関する、アメリカ合衆国国家航空宇宙局(NASA)及びイタリアのローマ大学との間の、1969年2月18日の了解覚書に言及する光栄を有します。

 本公文の附属書に示されている了解覚書は、特に、当該覚書が交換公文によってイタリア政府及びアメリカ合衆国政府による確認を要すると規定している。

 合衆国政府は、宇宙活動に関係するイタリアの機関の最近の再組織化に留意し、かつ、国家学術会議が、NASAの打上げについて提案されたミッションの性格が受け入れ可能なものであることを確認し及び了解覚書第3条で原則として合意された財政的な取極を承認することについて、イタリア内で、唯一の責任を有することを了解する。

 本使は、合衆国政府が、上記にいう了解覚書の規定、並びに、1971年12月以前に、サン・マルコ射場から少なくとも2機の宇宙機を打ち上げることについての、NASAの意思を確認することを閣下に通知する光栄を有します。

 本使は、イタリア政府もまた了解覚書及び本公文の規定を確認する場合には、本公文及びこの主旨の閣下の返簡が、この問題に関する両政府の間の合意を構成し、閣下の返簡の日付をもって効力を発生し、反対の主旨の了解覚書第6条にもかかわらず、相互の合意によって延長されない限り、1971年12月31日で終了することを提案する光栄を有します。

Gardner Ackley

  附属書:了解覚書
Gian Vicenzo Soro大使閣下、
外務省経済問題局長(在ローマ)


イタリアのローマ大学と合衆国国家航空宇宙局との間の了解覚書

 平和的な宇宙研究における相互利益を確認して、イタリアのローマ大学及び合衆国国家航空宇宙局は、実験用宇宙機のために実費償還方式に基づき、イタリアのローマ大学の航空宇宙研究所(CRA)のサン・マルコ射場において、NASAに打上げ業務及び打上げ関連業務が提供される条件並びに打上げについての各自の責任に関する双方の一般的な合意を本了解覚書において規定する。
 CRAとNASAは、サン・マルコ射場から打ち上げられるNASAの実験用衛星のための打上げ業務及び関連
業務が提供される特別な条件を表明する契約を締結することを意図する。これらの契約は、本覚書に規定された一般的な了解に従う。


第1条 責任

A.NASAは、以下の責任を有する。
1. 両当事者の財政、調達及び運用の要件を満たすことを可能にするために、可能な限り早い日付で、かつ、いずれにしても打上げ予定日の充分前に、CRAに対して、特別な衛星打上げプロジエクトについての要件を提供すること。この助言は、宇宙機ミッションの細目、ペイロードの記述、軌道の特性、打上げ要素、打上げ予定日、並びに打上げ支援要求及び計画のために、CRAが必要とするその他の情報を含む。
2. 打上げ場に、各ミッションに必要な飛行準備の整った宇宙機を提供すること。
3. 各ミッションに必要な熱シールド、宇宙機の結合及び分離のメカニズム、並びに宇宙機の予備部品を含む、適切な形態のスカウト打上げ機を提供すること。
4. ミッションに固有の地上支援装備(GSE)、及びその運用に必要な要員を提供すること。ただし、CRAが特に提供し及び/又は操作することに合意する、若干のGSEの品目を除く。
5. 相互に合意されるイタリアの要員のための訓練又は再履習を行うこと。
6. 相互に合意される技術的助言及びデータを提供すること。

B. CRAは、以下の責任を有する。
1. 引き渡しの際の形状のスカウト機に必要なプラットフォーム、射場設備、及びスカウト機の検査、並びに、打上げ設備を含むサン・マルコ射場の施設の確立、装備、保持及び運用。
2. 射場の安全を含むスカウト機の組立て、点検及び打上げ。
3. 相互に合意した追跡、データ獲得施設及び運用。
4. 相互に合意した訓練及び再履習計画におけるイタリアの要員支援。


第2条 履行

A. この協定の一般的な条件に基づいて実施されるすべての打上げプロジェクトに関する、次のような総体的な任務を持つ、CRA及びNASA双方の代表が共同議長となるサン・マルコ射場運用共同作業グループ(SMROWG)を設置する。
1. 運用上の要求を確立し、そしてこの了解覚書に基づき合意される打上げプロジェクトの便宜を図るのに適当なように、サン・マルコ射場の打上げ予定を調整すること。
2. 打上げ操作の段階を管理すること。
3. イタリアの要員のための訓練の要件を決定すること。
4. この覚書に基づき、続いて交渉される打上げ業務契約の起草に関する基礎的な情報及びデータを提供すること。
5. この了解覚書き及びその後の打上げ業務契約に基づく、NASAとCRAによって合意される責任の履行を検討すること。
6. SMROWG共同議長によって相互に合意されるその他の事項を考慮し、及び、適切な場合には、措置を講ずること。

B. NASAとCRAは、打上げ業務契約に基づき確立される詳細な取極に従って、合意された相互の役割と責任を調整することについて責任を有する、各打上げプロジェクトのための打上げ業務調整官を任命する。

C. CRAは、スカウト機の組立て、点検及び打上げに対する操作上の権限を有する。

D. 通常の慣行に従って、NASAによって任命されたミッション監督官は、いつ宇宙飛行システムが飛行の準備ができるのかを決定し、かつ、いつでも打上げ操作を停止できる。

E. それぞれの責任を履行しながら、NASAとCRAは、サン・マルコ射場の安全その他の運用規則及び手続に従う。


第3条 財政上の原則

 NASAは、打上げ期間ではない期間中に、射場の保持及び運用に関連する経費を超過するNASAの衛星の打上げに関して負担された費用については、原則としてCRAに償還することに同意する。NASAによって償還される費用の種類と支払手続は、打上げ業務契約において合意するものとする。


第4条 賠償責任

 CRAとNASAは、この協力プロジエクトの施行期間中の、それぞれの国民に対する損害についてすべての責任を負う。この協力協定の当事国でない国の国民に対する損害の場合には、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における活動を律する原則に関する条約の原則及び国際法に基づき、CRAとNASAは、必要とされる解決のための支払の公平な分担に関して、迅速に協議することに合意する。両機関は、180日以内に合意に達しない場合には、1958年の国際法委員会の仲裁手続に関するモデル規則に従って、当該請求の分担を解決するために、早期の仲裁の措置を講ずるために迅速に行動しなければならない。


第5条 公式情報

 この了解覚書に関する公式情報の発表は、プロジェクトの自国の担当部分については、当該機関が行う。他方の当事者が参加している限りにおいては、公式情報の発表は、適当な調整の後に行われるものとする。


第6条 終了

 この了解覚書は、ローマ大学とNASAが当該覚書を終了すべきであるということを相互に決定するまで有効とする。


第7条 確認

 この了解覚書は、交換公文によるイタリア政府及びアメリカ合衆国政府による確認を必要とする。

  P.A. D'Avack、学長                        T.O. Paine
  ローマ大学のために                  国家航空宇宙局のために


1969年2月18日
イタリア側書簡
  外務省
  1969年6月12日、ローマにて
 書簡をもって啓上いたします。

 私は、サン・マルコ射場からの、実験用の衛星の打上げのために提案された取極に関する、1969年4月30日の閣下の次の書簡第257に言及する光栄を有します。

 (アメリカ側書簡略)
 私は、閣下の書簡に示された提案が、イタリア政府にとって受諾し得るものであることを閣下に通知し、従って、閣下の書簡がこの返簡と共に、この問題に関する両国政府間の合意を構成することに同意する光栄を有します。
 G.V. Soro
   Gardner Ackley大使閣下
    在ローマ・アメリカ大使館

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