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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(1) 情報の自由な流通、教育の拡大及び文化交流の展開のための衛星放送の利用の指導原則に関する宣言
(1972年11月15日ユネスコ総会で採択)

 1972年にパリで開催された第17会期で、国際連合教育科学文化機関の総会は、
 集団又は個別の受信者に番組を放送することができる通信衛星の発展が国際通信に新次元を確立することを認識し、
 ユネスコの目的は、その憲章に従って、教育、科学及び文化を通じて、諸国民の間の協力を促進することにより、平和及び安全の維持に貢献することであり、かつ、この目的の実現のために、機関は、あらゆるマスコミ手段を通じて、人民の相互の知識及び理解を促進する作業において協力し、かつ、そのために、言葉及び映像による思想の自由な流通を促進するために必要な国際協定を勧告することを想起し、
 国際連合憲章は、権利の平等の原則の尊重に基づく国家間の友好関係の発展、国家の国内管轄権に属する問題への不干渉、国際協力の達成、並びに人権及び基本的自由の尊重を国際連合の目的及び原則の中に含めていることを想起し、
 世界人権宣言が、すべての人は、あらゆる手段により、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える権利を有すること、及びすべての人は教育を受ける権利、社会の文化的生活に自由に参加する権利、並びに自己が創作する科学的、文学的又は芸術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有することを宣言していることを考慮し、
 宇宙空間の探査及び利用に関する国家活動を律する法原則に関する宣言(1963年12月13日の国連総会決議第1962号(第18会期))並びに1967年の月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用に関する国家活動を律する原則に関する条約(以下「宇宙条約」という。)を想起し、
 平和に対する脅威、平和の破壊若しくは侵略行為を引き起こし又は奨励するための又はそのような性質の宣伝を非難する1947年11月3日の国際連合総会決議第110号(第2会期)(同決議は、宇宙条約前文が確認するように、宇宙空間に適用可能である。)を考慮し、
 そしてまた、衛星通信が、実行可能な限りすみやかに、世界的かつ非差別的な基礎に基づいて利用できるべきである旨を宣言する1961年12月20日の国際連合総会第1721号D(第16会期)を考慮し、
 その第14会期でユネスコの総会によって採択された、国際文化協力に関する原則宣言を考慮し、
 無線周波数がすべての国に属する限られた天然資源であること、その使用は国際電気通信条約及び無線通信規則によって規制されること並びに無線周波数の適切な割当が教育、科学、文化及び情報のための衛星放送の利用に不可欠であることを考慮し、
 加盟国及び放送協会を含む地域的及び国際的な機関が、すべての参加当事者に衛星放送の地域業務の創設及び運用に参加することを可能にするために、地域的その他のレベルでの国際的協力を促進し及び奨励すべきである旨を勧告する1970年12月16日の国際連合総会の決議第2733号(第25会期)を考慮し、
 更に、同決議が、ユネスコに対して教育、訓練、科学及び文化の進歩のための衛星放送の使用を継続して促進するように求め並びに関係政府間及び非政府間機関並びに放送協会と協議した上で、その任務に属する問題の解決に向けて努力するように勧誘していることに留意し、
 1972年11月15日、この「情報の自由な流通、教育の拡大及び文化交流の展開のための衛星放送の使
用の指導原則に関する宣言」を宣言する。
第1条 宇宙空間の利用は国際法により規定されており、衛星放送の発達は、国際法の原則及び規則、特に国際連合憲章及び宇宙条約により規律される。
第2条
1. 衛星放送はすべての国家の主権及び平等を尊重しなければならない。
2. 衛星放送は非政治的であり、かつ、国家及び国際法によって認められるような個人及び非政府団体の権利に妥当な考慮を払って実施されるものとする。
第3条
1. すべての国家は、その発展の程度にかかわりなく、差別なく、衛星放送からの利益を享受すべきである。
2. 衛星放送の利用は、国際的、世界的及び地域的、並びに政府間及び専業者間の国際協力に基づくべきである。
第4条
1. 衛星放送は、知識を広め、人民の間のより良い理解を促進する新しい手段を構成する。
2. これらの可能性を実現することができるように、聴衆の必要及び権利並びに人民の間の平和、友好及び協力、及び経済的、社会的及び文化的な進歩の目的を考慮しなければならない。
第5条
1. 情報の自由な流通のための衛星放送の目的は、世界の人民の間に、先進国及び開発途上国にかかわらず、すべての国に関するニュースの可能な限り広範な放送を確保することである。
2. 世界的規模でのニュースの即時の配信を可能にする衛星放送は、聴衆が受ける情報の事実の正確さを確保するために、あらゆる努力が払われることを必要とする。ニュース放送は、適当な場合にはニュースをニュース・ソースに基づかせながら、ニュース番組全体について責任を有する機関を明確にしなければならない。
第6条
1. 教育の普及のための衛星放送は、教育の発展を早め、教育の機会を拡大し、教育番組の内容を改善し、教育者の育成を促進し、文盲に対する戦いを促進し、かつ、生涯教育を確保するのに貢献することを目的とする。
2. 各国は、衛星により自国民に放送される教育番組の内容を決定する権利を有し、当該番組が複数の国の協力の産物である場合には、自由かつ平等に番組の立案及び制作に参加する権利を有する。
第7条
1. 文化交流の促進のための衛星放送の目的は、視聴者に、かってない規模で、芸術の実演及びスポーツその他の行事を含む相互の社会的、文化的生活に関する番組の享受を可能にすることにより、人民の間のより大きな接触と相互理解を強化することにある。
2. 文化番組は、すべての文化を豊かにすることを促進しながら、それらの文化の個々の性格、価値及び尊厳並びにすべての国家及び人民が有する自己の文化を人類の共同財産の一部として保存する権利を尊重すべきである。
第8条 放送責任者並びに国家的、地域的及び国際的な放送協会は、番組の制作及び交換並びに技術者及び番組担当者の訓練を含む衛星放送のあらゆる分野で協力することを奨励すべきである。
第9条
1. 前記諸項に定められた目的を促進するために、国家が情報の自由の原則を考慮して、その放送の発信国以外の国家の視聴者によって直接受信される衛星放送に関して、事前の合意に達し又はそれを促進することが必要である。
2. 商業広告に関しては、その放送は、発信国と受信国間における特別協定の対象となるものとする。
第10条 他の国家の視聴者に対する直接放送番組の準備においては、複数受信国の国内法制間に存在する差異を考慮するものとする。
第11条 この宣言の原則は、人権及び基本的自由に妥当な考慮を払って適用しなければならない。

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