第1条 |
(1) |
国際的な通信衛星システムを設立する。 |
(2) |
締約国政府は、通信システムの企画、設定、運用及び開発における協力及び作業の調整を確保するために、国際組織として「インタースプートニク」(以下「組織」という。)を設立する。 |
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第2条 |
(1) |
「インタースプートニク」は、開放されている国際組織である。 |
(2) |
組織の構成員は、第20条の規定に基づきこの協定に署名しかつ批准書を寄託した政府並びに第22条の規定に基づきこの協定に加入したその他の国の政府とする。 |
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第3条 |
組織の本部はモスクワに置く。 |
第4条 |
(1) |
国際的な衛星通信システムは次の構成部分からなる。
―中継器を搭載した通信衛星、衛星に搭載された設備及び通信衛星の正常な機能を確保するための地上管制システムを含む宇宙部分。
―衛星を経由する通信を相互に行う地球局。 |
(2) |
宇宙部分は組織の所有物であるか又は当該システムを所有する構成員から賃借する。 |
(3) |
地球局は、国家若しくは承認された運用機関の所有物である。 |
(4) |
組織の構成員は自己が建設する地球局を組織の通信システムに含める権利を有する。ただし、当該地球局が組織の仕様書に適合することを条件とする。 |
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第5条 |
国際通信システムは次の段階により設立される。
ソビエト社会主義共和国連邦が組織に無料で提供する通信衛星上の衛星通信回線を利用して、構成員が自国の地球局で行う実験的な作業の段階。この段階は1973年末までとする。
賃借に基づく構成員の通信衛星上の通信回線の利用を含む作業段階。
組織が所有し若しくは加盟国から賃借する宇宙部分を利用した通信システムの商業的運用段階。この段階への移行は、締約国政府が組織の所有する又は組織が賃借する宇宙部分の設定が経済的に望ましいとみなした場合に実施される。 |
第6条 |
組織の所有する通信衛星は、この目的上適切な施設を有する構成員により、組織と当該構成員の間の合意に基づいて打上げられ、軌道に投入され、軌道上での運用が行われる。 |
第7条 |
組織は、国際電気通信連合とその活動を調整しかつ通信衛星の利用に関連するその他の組織と技術上(周波数スペクトルの利用、通信回線及び設備基準の技術上の規格の適用)並びに国際的な規制上協力する。 |
第8条 |
組織は法人格を有し、契約を締結し、財産を収得し、賃借しかつ譲渡し、訴訟を提起することができる。 |
第9条 |
(1) |
組織は、その政府が組織の構成員である国の領域において、組織の目的の達成及びその任務の遂行に必要な法的行為能力を享受する。その法的行為能力の範囲は、当該活動が行われる領域が属する国の権限を有する当局との適切な協定によって定められる。 |
(2) |
組織の活動が行われる領域が属する国の法律は、この協定又は本条(1)に定める協定に含まれないすべての事項に適用する。 |
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第10条 |
(1) |
組織は、組織が保有する資産の範囲内で、組織の義務に関して責任を有する。 |
(2) |
組織は、締約国政府の義務に関して責任を負わないものとし、また締約国政府は、組織の義務に関して責任を負わないものとする。 |
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第11条 |
(1) |
組織の活動を規律するために次の機関が設置される。
理事会――議決機関
事務局――事務局長が統轄する常設行政・管理機関
事務局の設立及びその活動の開始の時期は理事会が定める。 |
(2) |
理事会の議長は、事務局の活動が開始される以前に、第13条(2)に定める、組織を代表する事務局長の任務を遂行する。 |
(3) |
会計検査委員会は組織の活動を監督するために設置される。 |
(4) |
理事会はまた、協定の目的達成のために必要な補助機関を設置することができる。 |
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第12条 |
(1) |
理事会は組織の構成員から各1名の代表で構成する。 |
(2) |
組織の構成員は理事会で1票を有する。 |
(3) |
理事会は少なくとも年1回の通常会期を開催する。臨時会期は組織のいずれかの構成員又は事務局長の要請によって、組織の構成員の1/3以上がその召集に賛成する場合に開催する。 |
(4) |
理事会の会期は通例組織の本部所在地で開催する。理事会は、その政府が組織の構成員であるその他の国の領域において、当該構成員の招請によって、会期の開催を決定することができる。
理事会は、事務局の活動が開始される以前に、ロシア語での国名のアルファベット順に、その政府が構成員である国において順次会合する。この場合、当該会期の開催経費は開催者たる構成員が負担する。 |
(5) |
理事会の会期の議長職は、ロシア語での国名のアルファベット順に、組織の構成員の間で順次交代で行う。副議長は、アルファベット順に、次の構成員の代表が行う。議長及び副議長は次の理事会の通常会期まで在任する。 |
(6) |
理事会は、この協定に含まれる問題を討議する権限を有する。
理事会は次のことを行う。
1. |
宇宙部分の設定、収得又は賃借及び運用のための措置を検討しかつ承認すること。 |
2. |
組織の通信システムの開発及び改良計画を承認すること。 |
3. |
組織の通信衛星の仕様書を定めること。 |
4. |
組織の通信衛星の軌道投入計画を検討しかつ承認すること。 |
5. |
組織の構成員間での通信回線の割当計画並びにその他の利用者による通信回線の使用のための手続及び条件を承認すること。 |
6. |
地球局の仕様書を決定すること。 |
7. |
組織の通信システムに含める申出が行われた地球局が仕様書に適合しているかどうかを決定すること。 |
8. |
事務局長及び事務局次長を選出し、かつ、事務局の活動を監督すること。 |
9. |
会計検査委員会の委員長及び委員を選出し、かつ、委員会の作業手続を承認すること。 |
10. |
事務局の構成及びその職員並びに事務局の職員規則を承認すること。 |
11. |
次の暦年度の組織の活動計画を承認すること。 |
12. |
組織の予算及びその実施に関する報告並びに組織の財務諸表及び利益の配分を検討し及び承認すること。 |
13. |
事務局の活動に関する事務局長の年次報告書を検討し及び承認すること。 |
14. |
会計検査委員会の報告を承認すること。 |
15. |
協定に加入を希望する政府の公式声明に留意すること。 |
16. |
比例拠出額の支払手続及び期日を決定すること並びに第15条5の規定に基づき拠出割当額の比率を再調整すること。 |
17. |
1単位の情報の伝送料率又は組織の通信衛星回線の賃貸料率を設定すること。 |
18. |
この協定の改正案を審議し、かつ、これを第24条に定める締約国政府の承認を得るために提出すること。 |
19. |
理事会の手続規則を採択すること。 |
20. |
この協定に起因するその他の問題を検討し、かつ、決定を行うこと。 |
|
(7) |
理事会は、その決定を行うにあたっては全会一致となるよう努める。理事会の決定は、全会一致に達しない場合には、理事会のすべての構成員の2/3以上が投票する場合に採択されたものとみなす。理事会の決定は、その採択に賛成せず、かつ、書面で留保を付託した構成員を拘束しない。ただし、当該構成員は、事後にこの決定に参加することができる。 |
(8) |
理事会は、本条の(6)に定める任務を遂行するにあたって、締約国政府が定める資金の枠内で行動する。 |
(9) |
理事会の第一会期は、この協定の発効後3カ月以内に組織の本部所在国の政府により召集される。 |
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第13条 |
(1) |
事務局は事務局長及び事務局次長並びに必要な職員で構成する。 |
(2) |
事務局長は不可分な権限の原則に基づいて行動し、組織の行政職員の長であり、その資格において、組織の活動に関するすべての事項について組織の構成員の権限を有する当局との関係において及びその政府が組織の構成員ではない国との関係並びに理事会が協力の必要を認める国際機関との関係において組織を代表する。 |
(3) |
事務局長は理事会に対して責任を有し、かつ、この協定及び理事会の決定によって事務局長に与えられる権限の範囲内で行動する。 |
(4) |
事務局長は次の任務を行う。
1. |
理事会の決定の履行を確保すること。 |
2. |
システム全体の企画に関する問題及び組織の通信衛星用の衛星搭載設備の要素及びユニットの企画、製造、引渡しに関する問題について、組織の構成員の通信当局、企画機関及び製造企業体と交渉すること。 |
3. |
組織のための通信衛星の打ち上げに関する問題を交渉すること。 |
4. |
理事会に代わって及び理事会が決定した権限の範囲内で国際的その他の協定を締結すること。 |
5. |
次の会計年度の予算見積を作成し、これらを理事会による承認のために提出し、かつ、前会計年度の予算の実施につき理事会に報告すること。 |
6. |
事務局の前年度の活動報告を理事会に提出するために準備すること。 |
7. |
組織の活動計画並びに通信システムの開発及び改良計画を作成し、かつ、これらを理事会による承認のために提出すること。 |
8. |
理事会の会期の準備、召集及び開催を確保すること。 |
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(5) |
事務局長及び事務局次長は、その政府が組織の構成員である国の国民の中から4年の任期で選出されるものとする。事務局次長の任期は通常1期とする。事務局長及び事務局次長は同じ国の市民であってはならない。 |
(6) |
事務局の職員は、専門的能力及び衡平な地理的配分に妥当な考慮を払って、その政府が組織の構成員である国の国民で構成される。 |
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第14条 |
(1) |
会計検査委員会は、その政府が組織の構成員であるそれぞれ異なった国の国民の中から3年の任期で選出された3人の委員で構成する。会計検査委員会の委員長及び委員は組織内にいかなる事務所をも置いてはならない。 |
(2) |
事務局長は会計検査委員会が会計検査に必要なすべての資料及び記録を提供する。 |
(3) |
会計検査委員会の報告は組織の理事会に提出する。 |
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第15条 |
(1) |
法定基金(固定資産及び流動資産)を組織の活動の経費を賄うために設立する。法定基金の設立及びその規模は、理事会の勧告に基づいて締約国政府が決定し、特別議定書により正式に承認される。組織の構成員の法定基金への比例出資額は、当該構成員の通信回線の使用量に応じて定められるものとする。 |
(2) |
通信システムの改良に伴い、法定基金の増額の必要性が明らかになる場合、追加拠出額は、この増額に同意した組織の構成員の間で分担される。 |
(3) |
法定基金への組織の構成員の出資金は組織の次の経費に充当する。
1. |
宇宙部分及び地球局に関する研究、設計及び実験的作業。 |
2. |
宇宙部分の企画、製造、取得又は賃借。 |
3. |
組織の通信衛星の打上げ及び軌道への投入。 |
4. |
組織の活動に関連するその他の目的。 |
|
(4) |
組織は、法定基金が設立されるまでの間、各暦年毎に作成される特別予算に基づいてその活動を行う。事務局の職員の維持、理事会の会期の開催、その他の管理上の活動のための予算に計上された経費は、理事会の勧告により締約国政府が定める比率で組織の構成員が負担し、及び、特別議定書によって正式に承認される。 |
(5) |
組織への新しい構成員の加入によって又は組織からの脱退の場合に、各残留構成員の出資率は変更される。 |
(6) |
法定基金及び組織の予算への出資金の払込通貨は、理事会の勧告に基づき締約国政府が決定する。 |
(7) |
組織は、構成員が定められた期日までに払込を行わなかった場合には、その総額に年率3%の延滞金を課する。 |
(8) |
理事会は、組織の構成員が1年以内にその財政上の義務を履行しない場合には、組織の構成員の権利の一部又は全部の停止を決定する。 |
(9) |
組織の構成員は、通信システムの運用により生ずる利益をその出資額に応じて配分する。構成員はその利益を法定基金の増額又はその他の特別基金の設立に充当する決定を行うことができる。 |
(10) |
組織の目的の履行に関連して召集された、理事会の会期を含む、会議及び会合の参加者の維持経費は、当該会議及び会合に出席する締約国政府が負担する。 |
|
第16条 |
(1) |
組織は、この協定の規定に基づき構成員その他の利用者に通信回線を提供する宇宙部分を運用する。 |
(2) |
組織が有する通信回線は、組織の構成員の間で構成員の回線の必要に基づき配分する。組織のすべての構成員の全体の需要を越える通信回線は他の利用者に賃貸することができる。 |
(3) |
利用に供される通信回線の支払は理事会が定める料率に従って負担される。当該料率は金フランで計算された平均的な世界的水準に設定される。通信業務についての支払は理事会が決定する方法で行われる。 |
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第17条 |
(1) |
いずれの締約国政府も、寄託国政府に宛てた当該主旨の文書による通知によって、この協定を廃棄することができる。当該締約国政府による協定の廃棄は、この廃棄の寄託国政府への通知の日から1年の期間が終了する財政年度末をもってその効力を生ずる。当該締約国政府は廃棄が効力を生ずる財政年度中に払い込むべき出資額を理事会が定める期間内に支払うものとし、またその他のすべての財政上の義務を履行する。 |
(2) |
締約国政府が協定を廃棄した場合に払い込むべき補償金額は、固定資産の物理的及び精神的な減価を正当に考慮して、当該締約国政府が組織の法定基金に払い込んだ出資総額に基づき理事会が決定する。補償金は廃棄が効力を生ずる財政年度の予算報告を理事会が承認することによって払い込まれる。 |
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第18条 |
(1) |
この協定はすべての締約国政府の同意により終了させることができる。この協定の終了は組織の解散とする。組織の解散の手続は理事会が決定する。 |
(2) |
組織の解散の際に、その固定資産は換金され、組織の構成員は、その固定資産の物理的及び精神的な減価を正当に考慮して、通信システムの設定に要した資本経費への参加に応じて補償金の支払を受ける。利用可能な流動資産については、組織の義務の履行に充当する部分を除いて、組織が解散した日現在に実際に払い込まれた出資金の割合に応じて組織の構成員の間で分配する。 |
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第19条 |
組織の公用語を、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語とする。公用語の使用範囲は、組織の実際的必要によって理事会が決定する。 |
第20条 |
この協定は、1972年12月31日までモスクワにおいて署名のために開放する。この協定は批准されなければならない。批准書はこの協定の寄託政府とされたソビエト社会主義共和国連邦に寄託されなければならない。 |
第21条 |
協定は6カ国の批准書の寄託により効力を生ずる。 |
第22条 |
(1) |
この協定に未署名のいずれの国の政府も協定に加入することができる。加入の場合に当該政府は、組織の活動の目的及び原則を共有し、かつ、この協定に基づく義務を履行する旨の公式声明を組織の理事会に付託する。 |
(2) |
この協定の加入書は寄託国政府に寄託する。 |
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第23条 |
この協定の効力発生の後に批准書又は加入書を寄託する政府については、その効力は当該文書が寄託された日に効力を生ずる。 |
第24条 |
この協定の改正は、その改正案を締約国政府の2/3が承認することによって、改正を受諾する各締約国政府について効力を生ずるものとする。効力が発生した改正は、他の締約国政府による当該改正の受諾後、当該他の締約国政府を拘束する。 |
第25条 |
(1) |
この協定の寄託国政府は、すべての締約国政府にそれぞれその署名の日、それぞれの批准書及び加入書の寄託の日、この協定の効力発生の日及び寄託国政府が受理したその他のすべての通告を通知する。 |
(2) |
この協定は、国際連合憲章第102条に基づき、寄託国政府により登録される。 |
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第26条 |
この協定は、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語の本文をひとしく正文とし寄託国政府に寄託する。この協定の認証謄本は、寄託国政府が締約国政府に送付する。 |