宇宙法 TOP
目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

(19) 宇宙空間からの地球のリモートセンシング・データの移転及び利用に関する条約
(1979年8月21日発効)

 この条約の締約国(以下「締約国」という。)は、
 宇宙空間は、宇宙空間からの地球のリモートセンシング活動を実施する目的上、平等に基づき、国際連合憲章及び月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約を含む国際法に従って、いかなる種類の差別もなく、すべての国によって自由に利用されることを考慮して、
 当該活動を行うにあたって、国家の主権的権利、特に、その天然資源及びその資源に関する情報を自由にする譲渡不可能な権利が尊重されるべきであることを信じ、
 宇宙空間からの地球のリモートセンシングの分野における活動及びこの目的での国際的な協力が、国家間の平和及び理解を促進すべきであり、その経済的又は科学的発展段階にかかわらず、すべての人民の利益のために行われるべきであることを確認し、
 宇宙技術が、地球の天然資源の探査、地質学、農業、林業、水利学、海洋学、地理学及び製図、気象学、環境管理のために、並びに、国家の科学的・経済的な活動の利益のための地球及びその周囲の空間の体系的な探査に関連するその他の問題の解決のために必要な新しい価値ある情報を提供することができることを確信し、
 宇宙空間からの地球のリモートセンシング・データの効果的な実利用における協力の拡大のための有利な条件及び必要な技術的かつ経済的な要件をつくりだすことを決定し、
 次のとおり協定した。
第1条 この条約の適用上、
(a) 「宇宙空間からの地球のリモートセンシング」とは、自然の要素及び現象、地球の天然資源、その環境並びに人為的に改変した物体及び形成物の位置確定、性質及び時間的変化の記述を容易にする、電磁波の異なる領域における地球の陸地、海洋及び大気の諸要素自体の放射、及びこれらが反射した放射のエネルギー及び偏波特性の観測及び測定をいう。
(b) 「宇宙空間からの地球のリモートセンシング・データ」とは、宇宙物体上に設置されたリモートセンサーによって得られ、その宇宙物体から、電磁信号の形で、又は、物理的に、写真フィルム又は磁気テープの形で遠隔測定によって伝送される初期段階のデータ、並びに、その後の分析のために利用することができるデータの流れから派生した予備処理されたデータをいう。
(c) 「情報」とは、宇宙空間からのリモートセンシング・データを他の出所から得られたデータ及び証拠と組み合わせて処理し、判読しかつ解釈する分析過程の最終結果をいう。(d)「地球の天然資源」とは、人間の居住の自然条件の総体の一部をなす天然資源で、かつ、社会の物質的及び文化的な要件を満たすための社会的生産において利用される人間の自然環境の主要な構成要素をなすものをいう。
第2条 締約国は、宇宙空間からの地球のリモートセンシング・データの移転及び利用において相互に協力するものとする。
第3条 特別なリスト、技術的な要素、上記のデータの量、その受領の日程表及び移転の条件、並びに、その処理及び主題別解釈への関係締約国の参加の程度は、関係締約国の間での二国間又は多国間協定によって決定する。
第4条 他の締約国の領域に関する地上50m以上の解像度を持つ、宇宙空間からの地球のリモートセンシングの初期段階のデータを所有する締約国は、探査された領域が属する締約国の明示の同意のある場合を除いて、これらのデータを公表し、又はいずれかの者に提供してはならないのであり、また、これらのデータ又はその他のデータを当該締約国に損害を与えるような方法で利用してはならない。
第5条 締約国は、宇宙空間からの地球のリモートセンシング・データの判読又は主題別解釈の結果として、他の締約国の天然資源又は経済的潜在力についての情報を得た場合には、探査された領域及び天然資源が属する締約国の明示の同意のある場合を除いて、当該情報を公表し又はいずれかの者に提供してはならないのであり、当該情報又はその他の情報を当該締約国に損害を与えるような方法で利用してはならない。
第6条 締約国は、他の締約国の領域に関する宇宙空間からの地球のリモートセンシング・データの利用における国家活動についての責任を負うものとする。
第7条 締約国は、二国間又は多国間協定に従って、宇宙空間からの地球のリモートセンシングから得られたデータの測定、処理及び主題別解釈を行うために必要な技術的な手段及び方法を作成し及び開発するにあたって協力し、並びに、現代宇宙技術及び宇宙空間からの地球のリモートセンシング・データの早期のかつ最も効果的な実利用を行うための適当な要員を訓練するために協力する。
第8条
1. 締約国は、この条約の履行過程において生ずる問題を互敬の精神において、交渉及び協議によって解決する。
2. この条約の履行に関連して生ずる問題を解決するために、必要な場合には、当該締約国の間の合意によって、関係締約国の代表の会合を開催することができる。
第9条 いずれの締約国も、この条約の改正を提案することができる。改正は、締約国の2/3の承認によって、改正を受諾する各締約国について効力を生ずるものとする。効力を生じた改正は、当該改正を受諾する他の締約国を拘束する。
第10条
1. この条約は、署名国の法律に基づき署名国の承認を必要とする。
 条約は条約の寄託政府を含む5の政府による承認書の寄託によって効力を生ずる。承認書をこの条約の効力発生の後に寄託する締約国政府については、承認書の寄託の日に効力を生ずるものとする。
2. この条約は、5年間有効とする。
 締約国が上記の5年の期間及び継続する5年の期間の終了の6カ月以前に条約から脱退しない場合には、条約は、これらの締約国に対して、各々継続する5年の期間有効とする。
第11条
1. 条約の目的及び原則を共有する他の国は、この条約に加入することができる。加入書は、条約の寄託国に寄託する。
2. 新しい国の加入は、寄託国による加入書の受領の日から30日で効力を生じたとみなす。寄託国は、このことを直ちにすべての締約国に通告する。
第12条
1. 各締約国は、条約の寄託国に通告を与えることによってこの条約から脱退することができる。脱退は、寄託国による通告の受領の日から12カ月で効力を生ずるものとする。
2. 条約からの脱退は、締約国によって締結された作業協定又は契約に基づく締約国の協力機関の義務に影響するものではない。
第13条
1. この条約は、寄託国として行動するソビエト社会主義共和国連邦政府に寄託される。
2. 寄託国は、この条約の認証謄本をすべての締約国に送付し、これらの締約国に寄託国が受領するすべての通告を通知する。
3. この条約は、国際連合憲章第102条に基づき寄託国が登録する。
第14条 この条約は、ロシア語、英語、フランス語及びスペイン語による、本文をひとしく正文とする本書4通が作成される。

BACK English