Q. これまでの日本のX線天文衛星の成果で特に印象に残っているものは何ですか?

ガスや塵に隠れて見えないブラックホールの想像図
日本のX線天文衛星「すざく」とアメリカの天文衛星「スウィフト」の観測で、濃いガスや塵に隠されていた、活動的な超巨大ブラックホールを発見したことです。このブラックホールは一見、普通の銀河に見える天体の中心に埋もれていました。可視光で見ると他の銀河と区別がつきませんが、X線で見ると中にブラックホールがあることが分かったのです。
これまで知られているブラックホールは、ドーナツ状のガスや塵に囲まれていますが、このブラックホールは、ガスや塵が殻のようにブラックホール全体を覆っています。このようなブラックホールは、ブラックホールと銀河が一緒に大きくなる成長期の途中であると考えられています。誕生して間もない銀河やブラックホールは数多く存在すると言われていましたが、実際に見つけたのは初めてでした。
周囲のガスや塵が邪魔をするブラックホールも、ASTRO-Hならエネルギーの高いX線で観測することができます。隠されたブラックホールをたくさん発見することができれば、昔はどれくらいの巨大ブラックホールが存在していたのか、ブラックホールにどれくらい物が落ちているか、ブラックホールがどれだけ成長しているかといった、巨大ブラックホールの起源や進化を理解する手がかりになると思います。
Q. 先生にとって天文学の魅力は何でしょうか?
もともとは子供の頃に本を読んで「銀河など宇宙のことを知りたい」「面白そうだな」と思ったのがこの道に進んだきっかけです。自分が知りたいと思ったことを、今、実際に観測し、そのデータを解析しています。それによって何か自分で最初に見つけられる可能性がある。自分が一番先に新しい天文現象を見ることができるというのが、天文学の魅力ですね。