宇宙空間におけるプロバイオティクスの継続摂取による
免疫機能および腸内環境に及ぼす効果に係る共同研究を開始
平成26年3月19日
株式会社 ヤクルト本社
宇宙航空研究開発機構
株式会社ヤクルト本社(社長 根岸 孝成、以下「ヤクルト」)および独立行政法人宇宙航空研究開発機構(理事長 奥村 直樹、以下「JAXA」)は、国際宇宙ステーション(以下「ISS」)を利用した共同研究を、平成26年4月から開始することで合意に達しました。
記
- 1.共同研究の名称
- 閉鎖微小重力環境下におけるプロバイオティクスの継続摂取による免疫機能及び腸内環境に及ぼす影響の検討
- 2.共同研究の実施期間
- 平成26年~平成32年(予定)
- 3.共同研究の意義
- 宇宙空間に長期滞在する宇宙飛行士について、プロバイオティクスの継続摂取による免疫機能および腸内環境に及ぼす効果を科学的に検証することで、宇宙飛行士の健康管理や、来るべき宇宙時代における生命科学の発展に寄与する。また、得られた知見をもとに、地上でのプロバイオティクス研究の発展につなげ、人々の健康増進に貢献したい。
- 4.主な研究項目
- (1)閉鎖微小重力環境下(宇宙空間)におけるプロバイオティクスの継続摂取による免疫機能および腸内環境に及ぼす効果の科学的検証
(2)生菌(乳酸菌 ラクトバチルス カゼイ シロタ株)の搭載性評価とその技術的知見の獲得
参考
<本共同研究の背景>
ヤクルトは、平成24年2月、JAXAが国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟の利用促進を目的に設立した「きぼう利用フォーラム」に参加し、「腸内環境改善研究会」を発足させました。研究会では、地球上で実証されている乳酸菌摂取による腸内環境の改善や免疫力の回復・維持について、宇宙での検証をめざして議論してきました。その過程で、この分野における共同研究をJAXAに打診しました。
一方、JAXAでは、平成19年4月に宇宙医学生物学研究室を設立し、宇宙飛行士を対象とした医学研究や、生物全体を対象としたライフサイエンスの研究などを行っています。宇宙飛行士が活動する宇宙空間は、微小重力、宇宙放射線、宇宙船内の閉鎖空間といった過酷な作業環境であり、免疫機能低下、骨密度低下、筋萎縮などの人体リスクが報告されています。有人宇宙飛行を成功させるためには、宇宙飛行士の心身の健康を維持し、パフォーマンスを最大限発揮させることが必要です。JAXAでは、このような課題への対応策の一つとして、プロバイオティクス※などを利用した機能性宇宙食の活用を検討しており、海外の宇宙開発機関でも研究を始めようとしています。
(※プロバイオティクス: 腸内環境を改善し、人などに有益な作用をもたらす生きた微生物のこと)
そこで、ヤクルトとJAXAは、宇宙空間におけるプロバイオティクス分野でのヒトを対象とした共同研究を世界に先がけて開始することに合意しました。
本共同研究は、ISSに長期滞在する宇宙飛行士を対象に、プロバイオティクス(ラクトバチルス カゼイ シロタ株)の継続摂取による免疫機能および腸内環境に及ぼす効果の科学的検証を目標とし、さらにプロバイオティクスの効果の宇宙環境での変化についての研究につなげることを目指します。ヤクルトがこれまでに培ってきた独自の腸内細菌研究ノウハウと、JAXAの宇宙医学生物学の知見や宇宙での実験技術を組み合わせた共同研究を行うことで、宇宙飛行士のパフォーマンスを最大限に発揮させるだけでなく、地上での応用も期待される「究極の予防医学」ともいわれる宇宙医学の発展に貢献していきます。
![]() 国際宇宙ステーション(ISS) |
![]() 乳酸菌 ラクトバチルス カゼイ シロタ株 |