プレスリリース・記者会見等

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地球観測衛星Aqua搭載の改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)
の運用終了について

平成27年12月7日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E(アムサー・イー))について、平成27年12月4日14時30分頃(日本時間)に運用を終了いたしました。

 AMSR-Eは、平成14年5月4日に打ち上げられた米国の地球観測衛星Aqua(アクア)に搭載され、設計寿命を超える9年以上にわたって観測を実施しましたが、平成23年10月4日15時58分頃(日本時間)、定常観測に必要なアンテナの回転速度(毎分40回転)を維持できなくなったため、観測および回転を自動で停止しました。その後、JAXAとNASAの技術者が協力して観測を再開させる方法を模索した結果、平成24年12月4日に、AMSR-Eは低速での回転(毎分2回転)及び観測を再開しました。低速回転のモードによる観測データはエリアに抜けがあるものの、AMSR-Eの後継センサであるAMSR2(アムサー・ツー)(平成24年5月18日打上げの水循環変動観測衛星「しずく」GCOM-W(ジーコム・ダブリュー)に搭載)との相互校正に利用され、AMSR-EとAMSR2のそれぞれのセンサ特性の差異を補正し、一貫性のある長期継続データを作成・提供するために役立てられてきました。
 しかしながら、低速での回転(毎分2回転)についても維持できなくなったため、平成27年12月4日14時30分頃に、観測および回転が自動で停止しました。AMSR-EとAMSR2の並行運用がちょうど3年となり、相互校正に必要な十分なデータを取得できていることから、これをもってAMSR-Eの運用を終了することといたしました。

 現在、AMSR-Eの後継として、同一軌道において、AMSR2が順調に運用を継続しています。AMSR-Eが切り開いた高解像度の全球の水循環変動の長期観測とその現業利用(別添参照)は、AMSR2によって引き継がれ、実利用と水循環・気候変動研究の両面での貢献を継続しています。

[参考]

別添

AMSR-Eの実績・成果

AMSR-Eは、世界トップクラスの空間分解能を有しており、午後軌道に存在する唯一のマイクロ波放射計として、全世界を9年5ヵ月間継続的に観測しました。地球から放射される微弱な電波を観測することで、海氷、海面水温、水蒸気、降水、土壌水分など、地球全体の水に関する情報を昼夜の区別なく、天候にも左右されずに計測が可能であり、広域・定量的な土壌水分分布、雲に影響されない全天候型の海面水温分布等、これまでにないデータセットを作成しました。これらの観測および様々な現業・研究分野での利用は、平成24年(2012年)5月に打ち上げられたAMSR2が引き継いでいます。

(1)実利用分野での貢献

  • 気象庁の数値天気予報や台風の中心位置決定等に利用され、気象予測の精度向上に貢献しました。また、海洋状態監視のための全球日別海面水温作成でも、準リアルタイムで定常的に利用されました。
  • 漁業情報サービスセンター等の漁海況情報作成に利用され、漁船の操業効率化に貢献しました。
  • 海上保安庁のオホーツク海流氷監視、農林水産省の世界の干ばつ状況把握による海外食料需給レポート作成に貢献しました。
  • 米国海洋大気庁(NOAA)、ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)、カナダ国雪氷サービス(CIS)などにおいて、数値天気予報、気象・海象把握に定常的に利用されました。

(2)水循環・気候変動分野での貢献

  • 北極海氷面積の長期間の継続観測により、平成19年(2007年)夏季の観測史上最小面積(当時)や平成23年(2011年)夏季の観測史上2番目(当時)の面積縮小など、温暖化の影響把握に貢献しました。
  • 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会の第5次評価報告書に、近年の北極域等の海氷面積減少に関して、AMSR-Eを含むマイクロ波放射計の解析結果が掲載されました。
  • 複数衛星の観測データを用いた全球降水マップ(JAXAの「世界の雨分布速報(GSMaP)」、NASAの「TRMM複数衛星降水解析プロダクト (TMPA)」、NOAAの「気候予測センター・モーフィング・プロダクト(CMORPH)」等)作成、全球の高解像度海面水温データセット作成において、中心的な観測データとして貢献しました。
  • 国際的な気候変動研究へも貢献しました。

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