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「いぶき2号」搭載 雲・エアロソルセンサ2型(CAI-2)の
初画像取得について

平成30年11月9日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成30年10月29日に打ち上げた温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)※1の初期機能確認運用※2を実施していますが、11月5日および6日に、同衛星に搭載された「雲・エアロソルセンサ2型(TANSO-CAI-2、以降CAI-2)」の初観測を行いましたので、その画像※3を公開いたします。

「いぶき2号」には、温室効果ガス濃度を観測する「温室効果ガス観測センサ2型」とともに、その観測に誤差を及ぼす雲の有無や大気浮遊物質(エアロソル)の分布を把握するために、CAI-2を搭載しています。2009年に打ち上げた「いぶき」に搭載されたCAIに比べ、PM2.5や黒色炭素の濃度推定などエアロソルの観測能力を強化するために、CAI-2では観測波長帯の増加や、前方・後方を見る機能※4(前方視、後方視)に改良しています。
今回の初観測で、図1に示す画像を取得できたことから、CAI-2の健全な動作を確認しました。また、ほぼ同時刻に観測した「いぶき」の結果を比較したところ、CAI-2ではアラビア海での砂塵の流出やインド北東部での野焼きによる黒色炭素の浮遊をより高感度に捉え、エアロソルの観測能力が向上できていることを確認しました。

今後も引き続きセンサを含む衛星の初期機能確認(約2.5カ月)を行った後、定常的な観測運用へ移行する予定です。

(補足)

※1 環境省(MOE)、国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)およびJAXAの3機関による共同プロジェクト。
※2 センサを含む衛星が所定の機能性能を軌道上で有していることを確認する運用。
※3 「いぶき2号」と地上局の通信確認のための試験電波により、2018年11月5日および6日(日本時間)に取得された観測画像。
※4 「いぶき」では、雲・エアロソルの観測は直下視のみ。

図1 11月5日午後1時~6時頃(日本時間)、「いぶき2号」搭載のCAI-2による460m空間分解能の観測データを用いた画像。

「いぶき2号」搭載のCAI-2では、「いぶき」の直下視に対して前方視・後方視としたことにより、砂塵等のエアロソルの観測能力が向上しました。図2の画像は、CAI-2および「いぶき」搭載のCAIが2018年11月5日午後6時頃(日本時間)にイラン・パキスタン国境付近のアラビア海沿岸から海に向かって砂塵が流れ出している様子を捉えたものです。取得した画像(右図)に対してCAI-2の特長である紫外の波長を用いて処理をしたものが①及び②です (①が前方視、②が後方視)。また③は、CAIがほぼ同時刻に直下視で取得した画像です。
直下のみを見ている「いぶき」のCAIと比べて、「いぶき2号」のCAI−2は前方視と後方視の異なる散乱量※5により情報が増えていることに加え、より短い紫外の波長帯を有していることで、砂塵の識別感度が高まっています。

図2 CAI-2によるアラビア海周辺の画像(右)と、イラン・パキスタン沿岸の画像(左)
(①がCAI-2前方視、②がCAI-2後方視、③がCAI直下視)

※5 同じ砂塵でも、見る角度によって見え方が異なります。砂塵による光の散乱は前方散乱が強い特性を有しており、図2の観測においては、CAI-2前方視でこの前方散乱を観測しており、濃い砂塵の吹き出しだけでなく、その周囲に分布する薄い砂塵の分布までを捉えています。(衛星の位置によって、前方視と後方視の見え方は変わります。)

CAI-2には、新たに紫外光の339nmの波長帯を追加したことにより、大気汚染物質であり、温暖化の原因ともなる黒色炭素の濃淡を捉えることができており、定量的な推定の可能性を示しました。図3(上)の画像は、CAI-2が2018年11月6日午後4時40分頃(日本時間)にインド北東部の畑地帯の上空で、野焼きにより発生したと考えられる筋状の煙を捉えたものです。野焼きにより発生した煙には黒色炭素、いわゆる煤(すす)が含まれ、可視光より紫外光を吸収する性質があります。波長441nm(可視光)と339nm(紫外光)の観測データの比をとることにより、黒色炭素の紫外吸収の度合いを示したものが図3(下)です。紫外光の吸収が強いほど赤く表現されています。

図3 CAI-2によるインド北東部の画像(上)と紫外吸収の度合いを示す画像(下)

(参考:「いぶき2号」ホームページ)http://www.satnavi.jaxa.jp/project/gosat2/

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