月近傍有人拠点(Gateway)の開発に向けた多数者間調整会合(MCB)共同声明
平成31年3月12日
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
2019年3月5日、国際宇宙ステーション(ISS)多数者間調整会合(Multilateral Coordination Board: MCB)が開催され、JAXAは文部科学省のもと、ISSに参加する宇宙機関として参加いたしました。ISS MCB会合は、ISS計画の上級国際調整会合であり、ISSの運用や利用等に関する重要な事項について定期的に議論するものです。
今回の会合では、米国、カナダ、欧州、ロシア、日本の代表が、ISSの運用状況や科学的・技術的成果の創出とともに、人類の活動領域を拡大するための技術的検討状況を確認し、その内容を共同声明としてとりまとめました。
多数者間調整会合 共同声明
(仮訳)
2019年3月5日、国際宇宙ステーション多数者間調整会合(International Space Station Multilateral Coordination Board: ISS MCB)が開催されました。ISSの最初の構成要素が打ち上げられてから20年を迎え、ISS参加機関間(*)の揺るぎない協力関係を確認しました。また、この国際協力により、ISSの建設と日々の様々な活動が行われていることに加えて、ISSが人類の恩恵につながる成果を創出していることを共有しました。
ISSを通じて得られる科学的・技術的成果は、地上社会の持続的な発展に貢献するとともに、宇宙における人類の活動領域の拡大につながります。本会合では、100カ国以上の国々が研究や教育目的でISSの利用に関わったことに着目するとともに、ISSが地球低軌道における経済活動の拡大に貢献していることを共有しました。
本会合では、約50年前の人類初の月面着陸の偉業を想起し、人類の活動領域を月さらには火星へと拡大するためにISS参加宇宙機関によって行われた技術検討の状況を確認しました。 また、持続的かつ実現可能な宇宙探査の重要性を認識し、月近傍の有人拠点となるGatewayの構築が次のステップとなることを共有しました。Gatewayは、地球とISSの距離の約1000倍離れた月周回に位置し、月面探査のための中継拠点となる予定です。
オープン・アーキテクチャによって実現される有人月面探査のなかで、本会合ではGatewayが重要な役割を担うことを確認しました。Gatewayは有人および無人による月面への到達を可能とし、将来の火星有人探査に向けた重要な経験の場となるとともに、ISSと大きく異なる環境に位置するため、深宇宙における重要な科学的発見や月面探査を可能とする拠点となります。また、その軌道は、地球と月面間の通信の中継において、非常に良い環境を提供します。
これらは、高度な技術の発展を促し、新興宇宙産業の成長に寄与し、そして、地球上の人々への宇宙探査による社会的な恩恵として、継続的に影響を及ぼすこととなります。 更には、国際パートナーおよび産業界による有人宇宙探査への参加、研究、技術開発を可能とし、月周回と月面における人類の持続的な活動のための基盤となります。
数年間にわたる、ISS参加宇宙機関によるGatewayに関する技術検討の報告を受け、本会合はGatewayの開発を進めることを支持することとしました。
また、各参加機関が、技術検討の結果として示された分担案に基づき(下図を参照)、各関係ステークホルダーからの承認や資金の確保についての調整を進める意向であることを共有しました。
本会合では、2019年2月28日のカナダによるGatewayへの参画表明および高度なロボット技術による貢献により、CSAがGatewayに参加する最初の機関となったことを歓迎しました。
最後に、熱意と将来を見据えた決断がApolloとISSの成功に繋がったことを想起し、Gatewayが宇宙探査における新たな成果をもたらし、月以遠の持続的な探査に向けた次なるステップとなり、科学技術の国際協力の象徴として次世代を鼓舞することに期待します。
(*)NASA、CSA、ESA、Roscosmos、文部科学省の代表