超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)がギネス世界記録(R)に認定されました
2019年(令和元年)12月24日
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)が、「Lowest altitude by an Earth observation satellite in orbit」としてギネス世界記録(※1)に認定されましたので、お知らせします。
©JAXA
1.超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)のギネス世界記録について
URL:https://www.guinnessworldrecords.jp/world-records/592663-lowest-altitude-earth-observation-satellite-in-orbit
記録名: | Lowest altitude by an Earth observation satellite in orbit/最も低い地球観測衛星の軌道高度 |
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記録数値: | 軌道高度167.4 km(※2) |
記録詳細: |
Record Text:
The lowest altitude by an Earth observation satellite in orbit is 167.4 km (104 mi) and was achieved by JAXA's TSUBAME (JAPAN) during its mission from 23 December 2017 to 1 October 2019.
Further info:
TSUBAME was a Super Low Altitude Test Satellite operated by Japan Aerospace Exploration Agency, or JAXA. With its ion engine, TSUBAME was able to capture high-resolution satellite images despite the atmospheric drag and density of atomic oxygen present in super low altitudes. It maintained seven different orbital altitudes, with 167.4 km being the lowest. At 167.4 km altitude, Tsubame used both its ion engine system and gas-jet thrusters.
2.「つばめ」(SLATS)の成果や今後の展望について
超低高度衛星のメリットは小さなセンサを用いて高分解能の衛星画像を取得できることですが、「超低高度」と呼ばれる軌道高度200~300 kmでは通常の地球観測衛星が飛行する高度に比べて大気抵抗や衛星材料を劣化させる原子状酸素の密度が1000倍程度となります。このため、超低高度は、精密な姿勢・軌道制御や長期間の衛星運用が求められる地球観測衛星には不向きとされていました。
「つばめ」は、271.5 kmにて軌道を保持した後、段階的に軌道高度を下げ、最終的にギネス認定の世界記録となった167.4 kmにて7日間の軌道保持を行いました。この軌道保持においても、高分解能の衛星画像を取得する実験にて、良好な画質の画像を取得できました。また、大気密度、原子状酸素の密度や大気に曝露した材料サンプルの劣化状況などのデータを取得するとともに、JAXAが開発した材料が長期間の原子状酸素の曝露に耐えることも実証しました。
JAXAは、「つばめ」で得られた知見をさらに発展させ、我が国の科学技術の発展や社会課題解決への貢献となる将来の宇宙利用につなげていきます。
■佐々木 雅範 SLATSプロジェクトマネージャのコメント:
「我が国の科学技術水準の高さ、そして長年培ってきたイオンエンジン技術や衛星の追跡管制技術など人工衛星の開発および運用に関わる総合的な基盤技術があったからこそ、世界に例のない低い軌道を保持できる衛星が実現できたと思います。この成果を将来の科学技術や衛星利用に発展させ、社会課題の解決に一つでも多く貢献して行きたいと思います。」
(※1) | ギネス世界記録はギネスワールドレコーズリミテッドの登録商標です。 |
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(※2) | 軌道高度=平均軌道長半径-赤道半径 |
参考
つばめ(SLATS)について
JAXAは軌道高度にして300 kmより低い軌道を将来の地球観測などで利用するための研究をしています。この軌道は「超低高度軌道」と呼ばれ、これまでの人工衛星にとって未開拓の軌道領域です。この超低高度軌道を利用する最初の地球観測衛星が超低高度衛星技術試験機(SLATS:Super Low Altitude Test Satellite)です。「つばめ」はJAXAが培ってきたイオンエンジン技術を利用して、超低高度衛星を開発するための技術評価を行いました。
項目 | 仕様、実績等 |
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主要ミッションセンサ |
(1)原子状酸素(AO)モニタシステム
(2)小型高分解能光学センサ |
サイズ | 2.5 m(X)× 5.2 m(Y)× 0.9 m(Z) (軌道上展開状態) |
質量 | 383 kg |
発生電力 | 1140 W以上 |
設計寿命 | 2年以上 |
軌道保持結果 | イオンエンジンを用いて7段階の軌道高度において軌道保持運用を実施した。 271.5 km及び216.8 km 38日間、 250 km、240 km、230 km、181.1 km及び167.4 km 7日間 (167.4 kmでは大気抵抗が大きいため、イオンエンジンとRCSを併用して軌道保持を実施した。) |
打上げ年月日 | 2017年12月23日 |
打上げロケット | H-IIAロケット37号機による相乗り打上げ (主衛星:「しきさい(GCOM-C)」) |
運用終了年月日 | 2019年10月1日 |