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プレスリリース・記者会見等

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小型光通信実験装置「SOLISS」が宇宙と地上間の双方向光通信に成功
~ 国際宇宙ステーションからEthernet経由で光地上局が高精細度画像を受信 ~

2020年(令和2年)4月23日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
国立研究開発法人情報通信研究機構
株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長:山川宏 以下、JAXA)および国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長:徳田英幸 以下、NICT)と株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(代表取締役社長:北野宏明 以下、ソニーCSL)は、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に設置した小型光通信実験装置「SOLISS」(Small Optical Link for International Space Station)とNICTの宇宙光通信地上局(以下、光地上局)※1との間で双方向光通信リンクを確立し、Ethernet経由での高精細度(HD)画像データ伝送に成功しました。これは、小型衛星搭載用の光通信機器としてEthernetによる通信を実現した世界初の事例となります。

「SOLISS」から光通信で伝送されたHD画像

「SOLISS」から光通信で伝送されたHD画像
©JAXA/Sony CSL

 「SOLISS」は2019年9月にISSの「きぼう」船外実験プラットフォームに設置され、その後、軌道上と光地上局との間で双方向光通信リンクを確立すべく、各種パラメータを調整しながら天候を踏まえつつ毎週一回程度の頻度で通信試験を行ってきました。その結果、2019年10月25日に光地上局への光ダウンリンク(指向制御)を確立し、2020年3月5日には「SOLISS」と光地上局との間で波長1.5µmレーザ光による双方向光通信リンクの確立に成功しました。さらに3月11日には「SOLISS」から 100 MbpsのEthernetによる通信を用いてHD画像を光地上局で受信することに成功しました。

 JAXAとソニー株式会社は、JAXA宇宙探査イノベーションハブの研究提案の枠組みを利用して、将来の衛星間や地上との大容量リアルタイムデータ通信の実現を目指し、2016年より共同で研究を行ってきました。※22017年からはソニーCSLが基盤研究を引き受け、JAXAとソニーCSLは長距離空間大容量データ通信を目的とする「SOLISS」を共同開発しました。光通信部にはソニー株式会社が長年培ってきた光ディスク技術が使用されています。
 JAXAは、「きぼう」日本実験棟の有償利用制度※3を通じて、2019年9月に宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機にて「SOLISS」をISSへ送り届け、「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームにある中型曝露実験アダプター(i-SEEP)に設置しました。
 NICTとソニーCSLは「SOLISS」と光地上局との間の双方向通信実証に向けて2018年より共同で研究を実施してきました。NICTは「SOLISS」の開発にあたり、NICTが保有している衛星搭載用光通信ターミナルの開発技術を基にした知見を提供し、「SOLISS」軌道上実証試験に必要な計測や実験を共同で行ってきました。
 今回の双方向光通信実験の成功は、NICTが実験運用に関連した技術支援を行い、i-SEEP上における「SOLISS」の軌道上運用をJAXAが支援しながら、ソニーCSLが通信試験を実施した結果となります。

 光には電波と比べて高速大容量の通信を可能とする特長があります。今回、既に確立された光ディスク技術と標準規格であるEthernetによる光双方向通信実験が成功したことによって、今後の宇宙空間における地球周回軌道を始めとした衛星間や地上との超高速(低遅延)データ通信や、大容量リアルタイムデータ通信の実現や汎用化などが期待されます。

 今後、JAXA、NICT、ソニーCSLは実験結果の詳細な解析及び評価を実施する予定です。
 また、「SOLISS」による通信の安定性の向上などを目指した実験運用は2020年6月初旬頃まで継続する予定です。

「SOLISS」による通信の安定性の向上などを目指した実験運用

JAXA理事・有人宇宙技術部門長 佐々木宏のコメント

国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟は、上空約400キロメートルという地球低軌道にある恒久的な実験施設です。宇宙飛行士の支援を受けながら長期間にわたって実証実験ができる「きぼう」の価値が最大限に活用されたことは、宇宙基本計画が示す、ISSの民間利用や技術実証利用の拡大につながる有意義なきっかけとなりました。改めて「SOLISS」による宇宙と地上間の双方向光通信を達成できたことを嬉しく思います。宇宙探査イノベーションハブから生まれたこの技術が月や火星など将来の宇宙探査における地球周回軌道との大容量通信を実現するための礎となることを期待しています。

NICT理事 門脇直人のコメント

NICTは、前身の郵政省電波研究所の時代から50年以上にわたり、日本の衛星通信技術の研究開発を先導してきました。今回、NICTが長年培ってきた光衛星通信技術及び知見を活用し、「SOLISS」による民間主導の研究開発により、宇宙と地上間の双方向光通信という快挙を達成できたことを嬉しく思います。この技術は、従来の静止衛星だけでなく、現在構築が進みつつある低軌道衛星メガコンステレーションによるブロードバンド衛星通信システム等における利活用も期待されています。今後、商用化に向けた技術開発の進展に期待します。

ソニーCSL社長 北野宏明のコメント

ソニーが長年培ってきた光ディスク技術では、1mm以下のとても短い距離で光を制御していますが、今回、この技術が宇宙と地上間という長距離空間でも適用可能なことが実証されました。この技術は高精度、低消費電力だけでなく、機器が小型で量産が容易になることから、今回の実験成功が今後の社会実装や事業化に向けた重要なマイルストーンになったと捉えています。2015年のJAXA宇宙探査イノベーションハブの研究提案からスタートした研究が、JAXAとNICTの協力による、「きぼう有償利用制度」によるトライ&エラーを繰り返すことができる宇宙実証環境及びNICT光地上局の実証設備の利用により、短期間で世界初の宇宙通信の具現化につながりました。

※1 NICT光地上局
宇宙通信に係わる技術を開発するために設置された望遠鏡施設。東京都小金井市に口径1.5m、1.0m、茨城県鹿嶋市に口径1.0m、沖縄県国頭郡恩納村に口径1.0mの計4基の望遠鏡が設置されている。
※2 JAXAが国立研究開発法人科学技術振興機構から受託した「イノベーションハブ構築支援事業」(「太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーションハブ」)において、「長距離空間光通信を実現する光通信モジュールに関する研究」を共同で行う契約を2016年に締結。
※3 科学研究や技術開発へのニーズに応えるため、国内の民間企業等を主な対象として、利用者が独自の目的で「きぼう」を有償で利用し、利用成果を独占的に取得・使用することが可能なJAXAの制度。

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