プレスリリース・記者会見等

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「革新的衛星技術実証3号機のテーマ公募」選定結果について

2020年(令和2年)5月29日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙基本計画で示された「宇宙システムの基幹的部品等の安定供給に向けた環境整備」の一環として、超小型衛星を活用した基幹的部品や新規要素技術の軌道上実証を適時かつ安価に実施することを目的に「革新的衛星技術実証プログラム」を進めています。
 このたび、「革新的衛星技術実証3号機」に搭載する実証テーマを募集し、応募のあった23テーマの中から、別紙のとおり実証テーマ(計15件)を選定いたしましたのでお知らせいたします。
 選定は、JAXA内における応募者資格要件の確認及び基礎点審査、及び外部有識者で構成される選定評価委員による加点審査を踏まえて行いました。

  • 基礎点審査(技術成立性、インターフェース条件への適合、安全要求への適合、軌道上運用の実現性、実施計画の成立性等の観点)
  • 加点審査(意義・価値等の観点)

 選定テーマの中には、JAXAが製作する小型実証衛星に搭載して実証を行うもの(部品、コンポーネント及びサブシステム)、応募者が製作する50kg級の超小型衛星とキューブサットがそれぞれ含まれています。

 なお、今回の公募では、従来の課題に加えて「官民で活用可能なフレキシブルな衛星開発手法、革新的なミッション技術を早いサイクルで宇宙実証し、挑戦的ミッション/システム搭載を通じて政府衛星・政府関連衛星の短期開発・低コスト化と高度化、産業界の競争力強化に繋げる」ことを追加し、5件を選定しました。

 今後、打上げに向けて、必要な取決めの締結、技術調整、安全審査等の準備を進めます。
 なお、今後の検討状況により、実証テーマが変更となる可能性があります。

関連ウェブサイト

「革新的衛星技術実証プログラム」
http://www.kenkai.jaxa.jp/kakushin/index.html

「『革新的衛星技術実証3号機のテーマ公募』選定結果について」
http://www.kenkai.jaxa.jp/kakushin/news/202005_1.html

別紙

区分 募集
課題
テーマ名称 所属機関
(提案代表者)
主な選定理由
部品・コンポーネント・サブシステム 衛星MIMO技術を活用した920MHz帯衛星IoTプラットフォームの軌道上実証 日本電信電話株式会社
(山下 史洋)
世界初の低軌道MIMO通信技術の軌道上実証であり、高速の通信容量をターゲットとしており、軌道上での実証意義は非常に高い。920MHz帯を用いた超広域衛星IoTプラットフォームの技術実証と共に、国際競争力強化、政府衛星の高度化への寄与も期待できる。
フレキシブルな開発手法を用いたソフトウェア受信機 NECスペーステクノロジー
株式会社
(土屋 正治)
民生部品を信号処理ボードに使用した高速なソフトウェア無線機の軌道上実証で、軌道上での機能変更・拡張を可能とし、今後の衛星に大きな波及効果がある。また、シミュレーションによる開発で、即効性のある短期・低コストの衛星開発実現への寄与が期待できる。
民生用GPUの軌道上評価およびモデルベース開発 三菱電機株式会社
(平栗 慎也)
超高速演算が可能な民生用GPUの軌道上実証で、ソフトウェア開発にモデルベース開発を適用する。高速のオンボード情報処理やモデルベース開発の短期化は、今後のデジタライゼーション化に重要であり、官民学の様々なミッションへの大きな貢献が期待できる。
水を推進剤とした超小型統合推進システムの軌道上実証 株式会社Pale Blue
(浅川 純)
安全無毒で取扱性が良い水を推進剤とした超小型な推進システムの実証で、二種の推進系を統合することで多種多様な推進機能を実現し、高い国際競争力を持つ。超低高度衛星や深宇宙探査機など広く適用でき、開発期間の短期化や低コスト化への寄与も期待できる。
小型衛星用パルスプラズマスラスタ(PPT)の軌道上実証・性能評価 合同会社先端技術研究所
(杉木 光輝)
小型で、低電力化・低価格化が可能な電気推進装置(パルスプラズマスラスタ)の実証で、小型衛星時代において技術的実証の意義がある。今後、深宇宙探査機や超小型衛星等への適用が期待できる。
超小型衛星用膜面展開型デオービット機構の軌道上実証 株式会社アクセルスペース
(河村 知浩)
宇宙デブリ問題の解決に資する薄膜展開機構の実証で、時流をとらえた提案である。推進系機器に比べ、空間容積・質量・圧力装置不要の観点で搭載制約が低く、同社の小型衛星等に広く搭載されることで、市場への利用拡大が期待できる。
Society5.0に向けた発電・アンテナ機能を有する軽量膜展開構造物の実証 サカセ・アドテック株式会社
(酒井 良次)
小型衛星の大電力発電/大容量通信/高分解能観測等の高性能化に寄与する膜展開実証であり、軌道実証の意義がある。諸外国よりも技術アイデアが先行している分野で、本実証により開発される太陽電池パドル・膜アンテナ等により、新たなイノベーションが期待できる。
区分 募集
課題
テーマ名称 所属機関
(提案代表者)
主な選定理由
超小型衛星 超小型人工衛星のマイクロISS化実現へ向けた衛星バスシステムの軌道上実証 帝京大学
(河村 政昭)
超小型人工衛星内で、宇宙環境を利用した実験を実施することを可能とするバスシステムの軌道上実証で、低コストに宇宙実験を可能とし、ポストISSという新しいコンセプトが評価できる。また、国内外から様々な利用による新たなイノベーションが期待できる。
理工学が融合した超小型衛星システムの開発と重力波天体のX線観測 金沢大学
(八木谷 聡)
X線・ガンマ線突発天体の観測を行う衛星開発で、超小型衛星による宇宙科学研究分野への貢献が期待できる。また、国際的連携や学内の独立センターへの発展を目指しており、継続的な人材育成も期待できる。
超低コスト高精度姿勢制御バスによるマルチスペクトル海洋観測技術の実証 東京工業大学
(谷津 陽一)
高精度姿勢制御とマルチスペクトルカメラを組み合わせた地球・海洋観測技術の実証で、データ利用サービスを見越したシステム構築を行っており、上流から出口までの実証を行う意義は高い。新規ビジネスを見据えた提案で、今後の衛星関連産業の活性化が期待できる。
キューブサット 回転分離を用いた超小型衛星のコンステレーション形成 名古屋大学
(稲守 孝哉)
連結された超小型衛星を回転分離し編隊を形成する新しい原理のコンステレーション形成手法の実証で、欧米も重要技術として位置付けており、日本も力を入れるべき基盤技術である。幅広いアプリケーションでの利用が期待できる。
民生用半導体と汎用機器の宇宙利用拡大を目的とした軌道上実証 九州工業大学
(増井 博一)
地上用半導体の軌道上劣化観測とUSB機器の宇宙転用実証を行い、地上汎用機器の利用可能性を広げることで、衛星開発のハードルを一気に押し下げる可能性がある。民生部品データベースの価値向上、ユーザ拡大も期待できる。
超高精度姿勢制御による指向性アンテナを搭載した海洋観測データ収集衛星の技術実証・持続可能な宇宙工学技術者育成とネットワーク型衛星開発スキームの実証 米子工業高等専門学校
(徳光 政弘)
LoRa通信方式を用いた安価で効率的な海底地殻変動観測データ収集の技術実証で、今後の衛星IoTにおける利用拡大が期待できる。また、高専という教育機関の人材育成としても意義があり、今後の継続的な宇宙工学やIoT通信技術の人材輩出が期待できる。
衛星筐体の一体成型技術の実証 早稲田大学
(宮下 朋之)
金属3Dプリンタ製フレームを採用したネジゼロ衛星筐体の実証で、衛星構造の軽量化が実現できる。超小型衛星の機能高度化に伴う構造稠密化を支え、次世代の衛星設計への貢献が期待できる。
CubeSat搭載用マルチスペクトルカメラの技術実証 一般財団法人未来科学研究所
(佐鳥 新)
CubeSatに搭載可能な低コスト・小型のマルチスペクトルカメラの実証で、光学観測やコンポ開発として軌道上実証の意義は高い。
募集課題①: 我が国の衛星関連機器・部品の価格競争力、性能、機能などを格段に向上する技術の実証
募集課題②: 宇宙利用の拡大や新たなイノベーション創出が期待される技術・コンセプトの実証
募集課題③: 新しい宇宙利用ビジネス構想により、国内外の宇宙利用市場を新たに創造する技術・コンセプトの実証
募集課題④: 挑戦的ミッション/システムの搭載を通した政府衛星・政府関連衛星の短期開発・低コスト化と高度化を実現するためのフレキシブルな衛星開発手法や革新的なミッション/システム技術の実証

(参考)革新的衛星技術実証3号機 選定評価委員会の構成(順不同)

委員 日本科学技術ジャーナリスト会議 副会長   室山 哲也
委員 東京大学大学院 工学系研究科 教授     中須賀 真一
委員 東京大学大学院 工学系研究科 教授     岩崎 晃
委員 東京都市大学 工学部 教授         三宅 弘晃
委員 名古屋大学大学院 工学研究科 教授     長野 方星
委員 シー・エス・ピー・ジャパン 代表取締役社長 金山 秀樹
委員 一般社団法人日本航空宇宙工業会 常務理事  山北 和之

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