プレスリリース・記者会見等

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新型コロナウイルス感染症に対する地球観測衛星データの活用に向けた
ハッカソンの開催結果について

2020年(令和2年)8月5日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、米国航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)、フランス国立宇宙研究センター(CNES)、カナダ宇宙庁(CSA)と協力し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するバーチャルハッカソン(※1)「Space Apps COVID-19 Challenge(5月30日、31日開催)」を開催し、優勝6チームを選定しました。

 「Space Apps COVID-19 Challenge」の参加チーム数は150か国から2,000以上にのぼり、JAXA、NASA等が提供する様々な地球観測データを利用して、新型コロナウイルス感染症に起因すると考えられる地球環境や経済活動等の変化の分析がなされました。そして最終的には1422件の新型コロナウイルス感染症がもたらす課題への解決策(プロジェクト)が提出され、第一次審査でファイナリスト40チームを選出、最終審査を経て優勝6チームを選定いたしました。日本から参加のうち1チームがファイナリストに残りました(※2)

 今回のハッカソンへの協力として、「JAXA地球観測衛星データの情報を提供」、「提出されたプロジェクトの審査」などを実施し、JAXAの地球観測衛星データを世界に広く知ってもらう機会となりました。これを契機に、JAXA衛星データの利活用拡大、社会の課題解決に貢献することを期待しています。また、JAXAでは、COVID-19による地球環境等の変化を継続して解析し、社会科学等の多様な分野における専門家と今後も協力、連携していきます。

1.バーチャルハッカソン「Space Apps COVID-19 Challenge」の開催実績
  • 日時:2020年5月30日(土)、31日(日)
  • 参加者:15,333人(150か国)
  • 提出されたプロジェクト数:1422件
2.優勝6チームのプロジェクト概要
賞/チーム名(地域) プロジェクト概要
Best Use of Data (データアクセスをし易く、またはユニークなデータ活用をしている賞)
G.I.D.E.O.N(東アジア・太平洋)
COVID-19の影響と、それが経済や環境へ及ぼす影響の把握を目的とした統合的な公共政策情報ポータルサイト。夜間光及び二酸化窒素(NO2)からロックダウンの影響と将来を予測し、どの国が感染率を管理しながら、ロックダウンを解除し大気質を制御しているか検知する手法を提案。
Best Use of Technology (最も革新的な技術の活用例を示している賞)
Elavo(東アジア・太平洋)
NASAの技術を用いて空気を洗浄し、エレベーターや電車、バスの表面を自動的に無菌状態に保つことで、通勤の安全を確保することを目指す。熱カメラでくしゃみや咳を自動で検知し、感染の可能性が検出された場合には気流の流れを早めるシステム。
Best Mission Concept (成立しうるコンセプト、デザインの賞)
Shelter in Space(北米)
既存の健康管理、自己啓発、ソーシャルコネクションアプリと統合して、ゲーム化した没入型の宇宙ミッションシナリオを作成するスマートフォンアプリ。これにより、心身の健康対策を講じる。
Galactic Impact (地球上や宇宙での生活を向上させる可能性が最も高い賞)
PANAL(ラテンアメリカ・カリビアン)
COVID-19リスクのリアルタイム分析と予測のためのアプリ。世界の人口統計、気象データ、各政府の公式データなどを収集した情報プラットフォームであり、感染のヒートマップを表示。
Most Inspirational (解決策が心に響く賞)
The Maskes Scales(北米)
自作の楽器とNASAのデータを使用してCOVID-19の影響を音楽で表現したミュージカル。ロックダウン中の道路の騒音・排気・光等の計測機器を作製。計測結果を、マリンバ(光)、ビブラフォン(排気)、ピアノ(騒音)、フルート(トロントのCOVID感染事例)の楽器を用いミュージカルに変換。音楽のテンポに、夜間光等を使用。
Best Use of Science (科学的手法や科学を有効活用している賞)
Michiganers Researching Coronavirus(北米)
NASAのUV指数、NO2排出量、地表面温度、夜間光の衛星データや、JAXAのGCOM-Wの降水量データを使用する独自の「ホットスポットインデックス」を用いて、ホットスポットの予測マップを作成、COVID-19に最も影響を受けやすい郡を特定し、予防的な行動をとれるようにしたことが特徴である。

なお、優勝6チームに対する特典として、NASAより宇宙センターへの打上げ見学の招待(旅費は自己負担)、JAXAよりALOS-2データ(限定域)の提供が予定されています。

本ハッカソンの最終審査にあたってJAXA審査委員からのコメント

JAXA 沖理子(第一宇宙技術部門地球観測研究センター、研究領域上席)
世界の様々な地域からの多岐にわたる提案を拝見し、世界が直面する課題を解決したいという思いは同じであることに感銘を受けました。これからも安全でより良い暮らしのために、宇宙技術や宇宙からの地球観測を上手に使っていただけたらと思います。

JAXA 小野田勝美(ワシントン駐在員事務所、所長)
COVID-19問題に宇宙データや技術を使って取り組みたいという参加者の熱い思いが伝わってきました。このハッカソンをきっかけに、宇宙が人々の役に立ち、生きる力になることを願っています。

※1 :ハッカソンとはエンジニアなどがチームを作り、共通の課題に対してアプリケーションやサービス開発し成果を競う開発イベントです。

※2 参考:ファイナリストに選ばれた日本チームのプロジェクト概要

  • プロジェクト名:tkhs-lab
  • 参加者:佐藤舜、濱武孔篤、Sadikshya Pandey(サディクシャ パンディ)、山下陽央
  • プロジェクト概要:
    地震や豪雨などの自然災害の被害と、ウイルス感染という問題への対処をいかに両立させ、防止するかという観点で検討。災害時の避難場所を推奨するモバイルアプリを衛星データで検出した建物情報や衛星測位情報を用いて作成。アプリはCOVID-19の症状や健康状態に応じて避難所候補をユーザに提案する。
  • ファイナリストに選ばれた日本チームからのコメント
    この度は、グローバルファイナリストに選出していただき光栄に思います。災害大国の日本だからこそ、コロナ×避難所というアイディアを生み出すことができたと思います。コロナという大きな課題に対して、全員が意見を出し合い協力する良い機会となりました。今後も社会課題の解決を目指して精進していきたいです。
図1

図1:モバイルアプリのイメージ図

(左より、避難者用の①健康チェックと②避難場所の候補、
運営者用の③地域の避難場所リスト、④⑤避難場所の情報)

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