プレスリリース・記者会見等

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宇宙での全固体リチウムイオン電池の実用化に向けた
実証実験の実施を決定
~2021年秋以降に「きぼう」日本実験棟に向けて打ち上げ予定~

2021年(令和3年)2月2日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
日立造船株式会社

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長:山川 宏 以下、JAXA)と日立造船株式会社(社長兼COO:三野 禎男 以下、日立造船)は、世界で初めての宇宙での全固体リチウムイオン電池の実用化に向けた実証実験に関する共同研究契約を締結しました。

全固体リチウムイオン電池(サンプル)

i-SEEP/SPySE外観図と全固体電池設置場所

 JAXAと日立造船は、宇宙探査イノベーションハブの研究提案公募の枠組みの下、2016年から全固体リチウムイオン電池の共同開発を行ってきました(※1)。全固体リチウムイオン電池は、次世代電池の本命として注目されており、様々な機器への搭載が見込まれています。
 従来、宇宙で使用されているリチウムイオン電池は、液体を使用している点や使用温度領域が狭い点から、真空かつ温度の高低差が激しい過酷な宇宙環境下では使用が困難なため、衛星等の設備内部に設置され、温度を管理しながら使用されています。
 そのため、真空状態や厳しい高温・低温環境においても使用可能となる全固体リチウムイオン電池の実現を目指して、これまで共同で検討および試作の開発を行ってきました。このたび両者は、試作した電池を実際の宇宙環境において評価・検証を行うべく、軌道上で実証実験を行います。
 実証実験では、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置される中型曝露実験アダプタ(i-SEEP)上の船外小型ペイロード支援装置(SPySE)(※2)に全固体リチウムイオン電池を設置し、過酷な環境で全固体リチウムイオン電池が稼働できるかを確認します。
 今後、全固体電池の宇宙実証に必要となる装置の開発、及びその検証試験等を行い、2021年秋以降にISSに向けて打ち上げ、2021年末より約半年間、実証実験を行う予定です。
 全固体リチウムイオン電池を用いることで、温度管理が不要となるため、宇宙環境で利用する設備の小型・軽量化や低消費電力化に寄与することが可能となります。さらには、より過酷な温度環境である月・火星探査機や、月面で活動するモビリティとなるローバや観測機器等での活用が期待できます。

【本実証実験で使用する全固体リチウムイオン電池の概要】
日立造船が2016年に開発したものを元に、JAXAおよび日立造船が共同で研究開発してきた全固体リチウムイオン電池を使用します。

サイズ:65㎜×52㎜×2.7㎜
質 量:25g
容 量:140mAh(15セル並列接続により約2.1Ahの電源とする予定) 特 長:  ① 固体電解質を用いるため、低温で凝固することがなく、また高温でも固体電解質が分解しないため、-40℃~120℃という環境下でも安定動作が可能です。
② 液体材料を使用していないため、液漏れがなく、固体電解質が難燃性のため、発火、発煙、破裂等の危険性がありません。
③ 揮発成分を極小化した電池構成を実現し、真空下でもほとんど膨張することがありません。

※1   JAXAが国立研究開発法人科学技術振興機構から受託した「イノベーションハブ構築支援事業」(太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーションハブ)において、「全固体リチウムイオン二次電池の開発」を共同で行う契約を2016年に締結。 ※2   ISSの「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置されている中型曝露実験アダプター(i-SEEP)の利用の多様化・拡大を目指し、JAXAが開発を進めてきた実験インフラ。i-SEEPの装置搭載エリアの片方に取り付けて、最大8個の小型装置(面積10cm四方、高さ最大30cm)を相乗り可能とするインターフェースを提供する。JAXAは、全固体電池の搭載を通じてSPySEの機能検証も行う。

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