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JAXAとNEC、静止軌道上で国内初のGPS航法を実現
-光データ中継衛星搭載の静止衛星用GPS受信機を活用して-

2021年(令和3年)2月19日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
日本電気株式会社
NECスペーステクノロジー株式会社

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、日本電気株式会社(NEC)及びNECスペーステクノロジー株式会社(NECスペース)は、2020年11月29日に打ち上げられた光データ中継衛星に搭載した「静止衛星用GPS受信機」(図1。以下「本受信機」という。)を活用して、GPS衛星からのGPS信号を利用して衛星の時刻・位置・速度を高精度に決定するGPS航法(注)を国内で初めて静止軌道上で実現しました。

 GPS航法はこれまで、低軌道衛星において高精度な軌道決定、衛星搭載システムの時刻基準の高精度化や自律的な軌道制御による運用効率化等に広く用いられており、衛星の能力向上に貢献しています。しかし、GPS衛星は地表に向かってGPS信号を送信しているため、GPS衛星よりも高い高度(約36,000km)に位置する静止衛星には、地球のほぼ反対側にある遠く離れたGPS衛星からの微弱なGPS信号は届きます(参考図)が、この微弱なGPS信号をとらえることは難しいため、静止衛星でのGPS航法の利用は普及していませんでした。

 本受信機は、JAXAとNECが共同で開発した微弱なGPS信号の捕捉・追尾・メッセージ復号を可能とする技術を用いており、静止衛星において軌道上でGPS信号を4機以上のGPS衛星から受信して安定したGPS航法を継続できることを確認しました(図2)。これにより、自律的な航法及び軌道制御による運用効率化、衛星画像の幾何補正精度向上、衛星搭載システムの時刻基準の高精度化等、静止衛星の能力の大幅な向上に寄与することができます。

 これらの研究開発成果を踏まえ、衛星用通信装置を国内外の多数の衛星に搭載した実績を有する衛星搭載機器メーカーのNECスペースが本受信機の開発・製造・販売を担当し、2021年春より国内外に販売を開始いたします。静止衛星でのGPS航法の利用の普及を通じて、静止衛星の能力の向上に貢献していきます。

 JAXAとNECは本受信機のさらなる改良を継続しており、JAXAで現在開発中の技術試験衛星9号機(2023年度打上げ予定)では、改良した「静止衛星用GPS受信機」を用いた自律的な軌道制御を実施する計画です。

 (注)GPS航法とは、GPS衛星から送信されているGPS信号を利用して、GPS受信機と複数のGPS衛星の間の距離と、GPS受信機の時刻のずれを測定することで、GPS受信機の時刻・位置・速度を高精度に決定すること。原理的に、4機以上のGPS衛星からの信号を受信することが必要となる。GPSは地表で利用されることを前提としたシステムだが、地球から遠く離れた宇宙空間でも、GPS信号の受信ができれば、GPS航法は可能。

図1:光データ中継衛星搭載静止用GPS受信機のフライトモデル

図1:光データ中継衛星搭載静止用GPS受信機のフライトモデル
(左から、GPS受信機のアンテナ、ローノイズアンプ、信号処理装置)
©JAXA

図2:光データ中継衛星搭載静止衛星用GPS受信機での航法状態と受信GPS衛星数

図2:光データ中継衛星搭載静止衛星用GPS受信機での航法状態と受信GPS衛星数
©JAXA

参考図:静止軌道におけるGPS信号の受信イメージ

参考図:静止軌道におけるGPS信号の受信イメージ
©JAXA

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