プレスリリース・記者会見等

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小型合成開口レーダー(SAR(※1))技術の小型軽量化技術を確立

2021年(令和3年)3月10日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は、株式会社Synspective(以下Synspective)、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻中須賀・船瀬研究室(以下東大中須賀・船瀬研究室)、東京工業大学工学院廣川研究室(以下東工大廣川研究室)、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科白坂研究室(以下慶應義塾大学白坂研究室)と共同し、内閣府主導による革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」(以下ImPACTプログラム)の一つである「小型合成開口レーダー衛星システムの研究開発」、及びその成果を応用した小型SAR(※1)衛星の共同開発連携(軌道上実証含む)において、小型合成開口レーダー(SAR)技術を開発、確立しました。

 衛星搭載SAR技術は、これまで小型軽量化が難しいといわれており、大きな技術課題でした。
 JAXAでは、これまでの地球観測プロジェクトで蓄積したSAR技術などをベースに、本技術の小型軽量化に関する基礎研究から始めた成果を集約。東工大廣川研究室や各機関と連携する中で、実応用可能な技術レベルまで引き上げるに至りました。
 確立した主な技術には、①小型衛星の太陽電池とSARアンテナを表裏に配置することで大幅な小型化を実現(※2)、②SARアンテナの表面スリットから均一にレーダー照射する技術の確立、③衛星の小型化に欠かせない大電力増幅技術や大容量・高速通信装置の開発があげられます。
 小さく打ち上げ、大きく使うことを低コストで実現し、SARの特徴である「気象条件に関わらずいつでもどこでも地球観測が可能な重要技術」を前進させました。

 本技術の利用拡大を図るべく、2019年2月からは、「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)(※3)」による共創活動を通じて、ImPACTプログラムで得られた技術成果の民間利用促進や将来計画の検討、SARコンステレーション技術を活用したソリューションの事業化検討を開始しています。

小型SAR衛星イメージ ©JAXA

小型SAR衛星イメージ ©JAXA

※1:SAR:Synthetic Aperture Radar

※2:SAR実現方式として、世界の2大潮流である「アクティブフェーズドアレイ方式」と「パラボラ方式」のどちらでもない第3の方式として「受動平面展開アンテナ方式」を選択。

※3:「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC:ジェイ・スパーク)」とは、宇宙ビジネスを目指す民間事業者等と事業化に向けた双方のコミットメントを得て、共同で事業コンセプト検討や出口志向の技術開発・実証等を行い、新しい技術を獲得し、新しい事業を創出する共創型研究開発プログラムです。始動した2018年度以降、30を超えるプロジェクト・活動を進めています。事前対話活動、コンセプト共創活動、事業共同実証活動に加え、事業化に資する活動(新規市場創出に向けたコンソーシアム運営や共通的技術基盤の整備など)も併せて推進しています。
https://aerospacebiz.jaxa.jp/solution/j-sparc/

<参考>
 ImPACTプログラム及び小型SAR衛星”StriX-α”共同開発に参画した各機関の役割

【Synspective】
 小型SAR衛星の開発と運用、そして高頻度観測を可能にする衛星群を構築し、その衛星から得られるデータの販売、および、それらを利用した政府・企業向けのソリューションを提供しています。同社初となる実証衛星”StriX-α”は、2020年12月15日にニュージーランドのマヒア半島にある発射場からRocket Lab社のElectronロケットにより打ち上げられ、予定通りの軌道(太陽同期軌道、高度500km)へ投入されました。その後、順調に運用を開始し、2021年2月8日に初画像の取得に成功しました。民間の小型SAR衛星(100kg級)の画像取得は日本初となります。Synspectiveは今後2023年までに6機、2020年代後半には30機のコンステレーション(衛星群)構築を目指します。低軌道を周回する30機のコンステレーションにより、世界のどの地域で災害が発生しても、2時間以内に観測することが可能になります(6機では24時間以内)。

*関連情報
Synspective報道発表資料(2021年3月9日(火))
「日本初の画像取得に成功した小型SAR衛星”StriX-α“共同開発の成果を発表」
https://synspective.com/jp/news-press/joint-press-conference/ 外部リンク

【慶應義塾大学白坂研究室】
 ImPACT白坂プログラムにおいて、白坂成功教授がプログラムマネジャーとして全体を統括するとともに、小型SAR衛星の運用・サービスを行うことを想定した総合システムの構想設計を白坂研究室が行いました。その後、Synspective社との共同研究契約に基づき、同研究室で開発した衛星データ活用手法や多方面のネットワーク等を活用した研究により、多様な想定ユーザーとの調整に貢献しました。

【東工大廣川研究室】
 JAXA宇宙科学研究所齋藤宏文名誉教授とともに、同プログラムにおいて、SAR衛星に搭載する軽量ハニカム導波路構造平面アンテナパネル、アンテナパネル間の非接触電力伝送用チョークフランジ、小型電力合成器の開発を担当しました。引き続きStriXの開発では、Synspective社との共同研究契約に基づき、平面アンテナパネルの特性向上、高機能化に取り組んでいます。

【東京大学中須賀・船瀬研究室】
 ImPACTプログラムにおいて、SAR衛星に特徴的な大出力電源部や姿勢制御部を含む衛星バスの開発を担当しました。StriX-αの開発においては、Synspective社との共同研究契約に基づき、これまで開発してきた超小型衛星(100㎏以下の衛星の総称)の各種技術を適用し、短期かつ確実な開発・運用に貢献し、本StriX-αは同研究室の13基目の衛星となります。

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