プレスリリース・記者会見等

このエントリーをはてなブックマークに追加

デブリ接近衝突確率に基づくリスク回避支援ツール(RABBIT)の
無償提供開始のお知らせ

2021年(令和3年)3月22日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、人工衛星のデブリ回避運用を容易にするために『デブリ接近衝突確率に基づくリスク回避支援ツール』(RABBIT※1[ラビット])を開発し運用に活用してきました。この度、このツールをスペースデブリ衝突回避に取り組んでいるほかの人工衛星運用機関(国内外の公的機関、企業、大学含む)に向け無償提供することといたしましたのでお知らせいたします。

 人類の宇宙開発が始まって以来、スペースデブリ(宇宙ごみ)は増加の一途をたどっています。小さなスペースデブリであっても、人工衛星を破壊する可能性があるため、人工衛星の運用においては、スペースデブリとの衝突回避が最優先事項の課題となっています。
 現在、人工衛星を運用する各機関は、米国の連合宇宙運用センター(CSpOC※2)から、接近通知(CDM※3)を受け取っており、この通知により数日以内のスペースデブリとの衝突の可能性を把握しています。しかしながら、CDMには衝突回避のために、いつ、どれくらいの軌道制御を実施すれば良いのか、という情報までは記載されておらず、各衛星の運用機関が自力で計算する必要があり、従来は軌道力学の専門家による解析が必須でした。そこで、JAXAは人工衛星とスペースデブリ接近回避を容易にするツールとしてRABBITを開発し運用に活用してきました。

 CDMをRABBITに入力する事により、人工衛星(低軌道衛星※4)を、いつ、どれだけ軌道制御すればスペースデブリとの衝突を回避できるのか、衝突確率と最接近距離を解析した上で、等高線図として視覚的に分かりやすく表示することができます。(図1)

 この図を使えば、スペースデブリ衝突回避運用に長けた軌道力学専門家がいなくても、得られた等高線図から、最適な衝突回避手段を見つけ出す事が可能となります。(図2)

 JAXAは、RABITTの無償配布を通じて、JAXAの人工衛星のみならず、多くの人工衛星をスペースデブリの脅威から守ることに貢献してまいります。

◆RABBITの入手方法◆

 下記RABBITのホームページより、必要事項を記入し、利用規約に同意いただくことで、無償でRABBIT(利用手引き含む)のダウンロードが可能となります。なおRABBITは標準的なWindows10ベースの計算機上で動作します。

図1:RABBIT GUI画面

図1:RABBIT GUI画面

図2:RABBITを用いた衝突回避制御計画

図2:RABBITを用いた衝突回避制御計画

※1 RABBIT:Risk Avoidance assist tool based on debris collision proBaBIliTy

※2 CSpOC:Combined Space Operations Center, 連合宇宙運用センター

※3 CDM:Conjunction Data Message, CSpOCが提供しているデブリ接近情報

※4 低軌道衛星:おおむね平均軌道高度2000km以下で運用される人工衛星。地球観測衛星、大学衛星のほとんどが低軌道衛星。

PAGE TOP