超音速機技術の研究開発に関する国内産業界との協定の締結について
-超音速機技術の実用化を目指した国内体制の構築に向けて-
2021年(令和3年)6月16日
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)、一般財団法人日本航空機開発協会(以下「JADC」)、一般社団法人日本航空宇宙工業会(以下「SJAC」)、三菱重工業株式会社(以下「MHI」)、川崎重工業株式会社(以下「KHI」)、株式会社SUBARU(以下「SUBARU」)及び株式会社IHI(以下「IHI」)は、2021年3月31日に、我が国の超音速機※1技術の研究開発を連携して進めていくための協定(以下「本協定」)を締結しましたのでお知らせします。
本協定に基づき、JAXA、JADC、SJAC、MHI、KHI、SUBARU及びIHIは、我が国の産業界が2030年頃に想定される超音速機の国際共同開発に参画することを目指し、技術ロードマップ※2の策定や国際共同開発に向けた協力体制を実現するための活動を協議するJSR(Japan Supersonic Research)協議会を設置しました。
音より速く飛行する超音速機は、飛行時間を大幅に短縮し、航空輸送に大きな変革をもたらします。しかし、その実現には経済性や環境適合性の観点で技術的な課題があり、JAXAはこれらの課題解決に向けた超音速機技術の研究開発※3を進めてきました。
また、こうした成果を産業界を通じて実用化する体制面でも課題がありましたが、JSR協議会の設置によって、JAXAと産業界が連携して研究開発を推進する国内体制構築が可能となりました。
今後、JAXAはJSR協議会の活動を主導し、我が国が一体となった超音速機技術の研究開発を通じて、我が国の航空機産業の拡大に貢献してまいります。

超音速機旅客機のイメージ©JAXA
※1:超音速機
現在の航空機は音よりも遅く、マッハ0.8程度で飛行しており、日本から欧米までの飛行時間は12時間以上かかる。しかし、音よりも速く、例えば倍の速度で飛行できれば、飛行時間は半分になり、日本から欧米への飛行時間は6時間ほどになる。
※2:技術ロードマップ
超音速機技術に関する技術課題、技術目標、研究開発構想等を記載した文書。
※3:超音速機技術の研究開発
①空気抵抗を下げて燃費を良くする技術(経済性の観点) 燃費を改善する超音速機の機体形状を適用した「NEXST-1(小型超音速実験機)」を用いて2005年にオーストラリアのウーメラ実験場で飛行実験を行い、コンコルドに比べ約13%空気抵抗を低減できる技術を実証した。
②ソニックブームが小さくなる機体設計技術(環境適合性の観点)
ソニックブームは、航空機が上空を超音速で飛行する際、機体から発生する衝撃波が大気中を伝播し、地上において2度の急激な圧力変動を引き起こす現象。人には瞬間的な爆音として聞こえる。
このソニックブームを低減させるための機体形状の設計概念を適用した「D-SEND#2(低ソニックブーム設計概念実証機)」を用いて2015年にスウェーデンのエスレンジ実験場で飛行実験を行い、コンコルドに比べソニックブーム強度を半減できる技術を実証した。
現在は鍵技術である全機ロバスト低ブーム設計技術の飛行実証に向けた活動を進めている。当該技術は、ソニックブームを広範囲に低減でき、超音速機の騒音基準を満たしうる機体設計技術。本技術を飛行実証することにより、国際民間航空機関(ICAO)が策定する国際基準策定に貢献する。