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清水建設、JAXA、
「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関する共同研究を本格化

2024年(令和6年)1月10日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
清水建設株式会社

 清水建設株式会社(社長:井上 和幸、以下「清水建設」)と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長:山川 宏、以下「JAXA」)は、JAXAの「革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム」(以下「本プログラム」)(※1)のオープンイノベーションによる共創体制の枠組みのもと、「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関する共同研究(以下、「本共同研究」)を進めています。このたび、第1ステージとして積層造形技術の基礎的な成立性を確認できたため、将来の大型タンクへの適用に向け、サブスケール供試体の試作に向けた検討をスタートします。

 本共同研究は、次期基幹ロケットや民間主導による新たな宇宙輸送システムに向け、ロケット構造の抜本的な低コスト化を実現するため、清水建設が保有する金属積層造形(Additive Manufacturing、以下「AM」)のWAAM(※2)(Wire-Arc Additive Manufacturing)技術(写真1)と、JAXAが保有する宇宙輸送システム技術を組み合わせることで、アルミ合金製液体燃料タンク等の大型構造体を低コストかつ短期間で製造する技術の確立を目指すものです。
 2022年7月、本プログラム第2回研究提案募集(RFP)の課題解決型研究として採択され(※3)、これまでに小型部分要素試作により板厚や造形速度、品質、造形品の機械的特性の評価・実証を行ってきました。(写真2

 今後はこれまでの成果を踏まえ、サブスケール供試体の試作に向けた積層造形装置の整備や、造形プロセスの確認等を行い、供試体の試作を通して造形精度や品質安定性などの検証を行います。
 さらに、清水建設では、地上用途としてこの技術を建設材料の製造にも活用していきます。

写真1
清水建設所有のWAAM金属積層造形設備
©清水建設

写真2
WAAM技術で造形した小型タンクの耐圧試験風景
(サイズ:Φ400mm×H600mm)©清水建設

【本共同研究の背景・目的】

 液体ロケットの極低温液体燃料タンク等の大型構造体は金属組立構造を基本としており、部品点数が多く加工・組立工数が嵩むため、ロケット構造の高コスト要因のひとつとなっています。
 よって革新的将来宇宙輸送システムの抜本的な低コスト化を実現するには、部品数や加工・組立工数の圧倒的削減により、大型構造(特に液体燃料タンク)製造費を大幅低減することが課題です。
 それを踏まえ、ロケット大型構造/液体燃料タンクの製造にAMを適用し、材料費・加工/組立費を大幅に低減することを本共同研究の目的としています。
 特に本共同研究では、アルミ合金製・大型薄肉構造・高速/高精度造形に関する技術課題を解決することで、広く他分野の製造技術としても応用可能なAM技術の確立を目指します。

【本共同研究の概要】

 本共同研究ではロケット液体燃料タンクとアルミ外装材の両方に活用できるWAAMの技術開発を行い、基本的な要求性能に対する成立性を以下の3つのステージにて評価します。

 第1ステージ: 小型部分要素試作等により、最小板厚、造形速度、造形品質、造形品の機械的特性の目標に対する評価・実証をし、造形プロセスの基本仕様を設定します。
 第2ステージ: サブスケール供試体のサイズ・形状を造形可能な装置導入や制御プログラム整備を行い、大型化に向けたプロセス開発/検証を行います。
 第3ステージ: サブスケール供試体等の試作を行い、実タンクへの本製造技術の適用可能性を実証するとともに、試作タンクを水耐圧試験および極低温耐圧試験に供し、タンクとしての耐圧・気密性能を確認します。

【本共同研究の役割分担】

清水建設

 WAAM技術による積層とロボット切削加工を組み合わせたハイブリッド造形システムを開発し、清水建設のイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE」内に設置します。このシステムは、直径1.5mの液体燃料タンクの製造に対応でき、また、積層時のデータをリアルタイムに計測することで、製品のプロセス管理が可能となります。

JAXA

 革新的将来宇宙輸送システムに必要となる液体燃料タンクや構造体の仕様や要求性能を検討し、WAAM技術に適した構造様式・形状を評価するとともに、サブスケール液体燃料タンク供試体やWAAM技術検証のための試作・試験の仕様を設定します。

※1 「革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム」
本プログラムでは、宇宙開発に関する国の政策に基づき、国が主導する次期基幹ロケットの初号機打上げを2030年頃に、民間が主導する新たな宇宙輸送システムの実用化を2040年頃に実現することを目標に、システム技術や要素技術の研究開発を進めています。その活動の一環として、2021年より産学官のオープンイノベーション共創体制を構築し、将来の宇宙輸送システムを実現するための革新的な技術を獲得するとともに、非宇宙分野からの参入者が増え、宇宙・非宇宙の双方が新技術のメリットを享受できるようにすることを目指しています。
https://www.kenkai.jaxa.jp/research/kakushinyusou/kakushinyusou.html

※2「WAAM」
アーク溶接による溶接ビードをロボットアームにより積層することで、立体的な造形を達成する技術

※3 革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム第2回研究提案募集(RFP)
「金属AMによる大型極低温推進薬タンク/一般構造の製造技術研究」
https://www.kenkai.jaxa.jp/research/kakushinyusou/request02/rfp-result.html

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