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商業デブリ除去実証フェーズI「定点観測」の画像を公開

2024年(令和6年)6月14日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

 宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)が進める「商業デブリ除去実証(CRD2)(※1)フェーズI」の実証衛星ADRAS-J(※2)が、非協力的ターゲット(※3)であるスペースデブリを「定点観測」にて撮影した画像を、株式会社アストロスケールが公開しました。

図1:「定点観測」によるCRD2のターゲットスペースデブリの連続画像のうちの1枚
    (2009年に温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)を打上げたH-ⅡAロケット上段,
    H2A R/B, International designator: 2009-002J, Catalog Number: 33500, 画面下が地心方向)

図1:「定点観測」によるCRD2のターゲットスペースデブリの連続画像のうちの1枚
(2009年に温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)を打上げたH-ⅡAロケット上段,
H2A R/B, International designator: 2009-002J, Catalog Number: 33500, 画面下が地心方向)

 「定点観測サービス」は、CRD2フェーズIにおいてJAXAが契約相手方企業に求める4つの「サービス」(※4)のうちの1つで、対象デブリの軌道座標系(※5)上の定点から対象デブリを観測し、所定の画質・データ量のターゲット連続撮像画像を提供する内容です。

 5月23日、株式会社アストロスケールが運用するADRAS-Jは、「定点観測サービス」を、JAXAが定める安全要求(JERG-2-026 軌道上サービスミッションに係る安全基準(※6))を遵守しつつ、ターゲットとの距離約50mで実施し、図1に示す連続画像の撮影に成功しました。

 「定点観測サービス」の仕様は、「世界的にも情報の少ない、軌道上に長期間存在するデブリの運動や損傷・劣化がわかる映像を取得する」ために十分と考えられる画質・データ量であることに加えて、契約相手方企業が、積極的デブリ除去をはじめ幅広い軌道上サービスのミッションに活用できるランデブ・近傍運用(Rendezvous and Proximity Operations: RPO)技術を、これらのサービスの達成によって獲得でき、かつ、JAXAが持つ技術知見に基づき実現可能であることを踏まえて設定されたものです。今回、株式会社アストロスケールのADRAS-Jがこれらのサービスの安全な履行に成功したことで、CRD2が掲げる二つの目的「深刻化するスペースデブリ問題を改善するデブリ除去技術の獲得」と「日本企業の軌道上サービス市場への訴求力向上の実現」の達成に向け、着実な一歩となる成果が得られました。

図1の画像等により、ターゲットのスペースデブリの運動が、地心方向に沿った直立姿勢であるだけでなく、その機体の機軸周りの回転もほとんどない状態であることが確認できました。また、このスペースデブリに大きな損傷がないことなど、表面の様相について確認ができました。なお、機体の左右に観察されるひも状のものは、打上げ時の画像にも見られた機体の表面保護用のテープと、現状画像状況より推定されます。これらは、今後のCRD2フェーズIIで捕獲を行うにあたり重要な知見です。

 株式会社アストロスケールはADRAS-Jの運用を続け、今後、「周回観測」や、企業自身が企画し実施する「企業ミッション」を実施し、最後に、「ミッション終了サービス」(ターゲットに衝突しない安全な軌道に遷移する)を実施する予定です。JAXAはこれまで、軌道上ランデブにかかる知見を中心に非常に多くの技術アドバイス・試験設備供用・研究成果知財提供を行い、ADRAS-Jの開発・運用を支援してきました。今後も、ADRAS-Jの運用を技術的に支援するとともに、本プロジェクトで得られた画像の詳細な分析を進める予定です。

※1

商業デブリ除去実証(CRD2)
商業デブリ除去実証は、深刻化するデブリ問題を改善するデブリ除去技術の獲得と、日本企業の商業的活躍の後押しの二つを目的とする JAXAの新しい取り組みです。株式会社アストロスケールは、商業デブリ除去実証フェーズIの契約相手方として選定されました。本事業において、JAXAは技術アドバイス・試験設備供用・研究成果知財提供を行い、選定企業を技術的に支援しています。
商業デブリ除去実証ウェブサイト

※2

ADRAS-J(アドラスジェイ、Active Debris Removal by Astroscale-Japan の略)」
株式会社アストロスケールが開発・所有・運用する、CRD2フェーズIの実証衛星。

※3

非協力的ターゲット
他の宇宙機による接近や捕獲を支援するための機能(姿勢制御機能、通信機能等)や装置(GPS受信機、レーザー反射器、画像処理マーカ、ドッキングメカニズム等)を具備していないターゲット物体のこと。これらを具備した物体(例:国際宇宙ステーション)と比較して接近や捕獲の技術的難易度が高い。

※4

CRD2フェーズIにおけるJAXAの要求サービス
「デブリ接近計画に対する実績の確認」、「対象デブリの定点観測」、「対象デブリの周回観測」、「ミッション終了処理」の4つのサービスが規定されている。
商業デブリ除去実証ウェブサイトの該当ページ

※5

軌道座標系
軌道上物体の重心を原点とし、地心方向、軌道面に垂直な方向、それらと右手系をなす方向(円に近い軌道ではおおよそ速度方向)の3軸で構成される直交座標系のこと。地球を周回する物体の姿勢や、それに対する相対位置を表現するために、よく用いられる。

※6

JERG-2-026 軌道上サービスミッションに係る安全基準
サービス衛星が、相手方となる人工衛星等に接近、接触、結合などを行う際、運用中の故障やヒューマンエラー等で衝突すると大量のスペースデブリをまき散らすような破砕や、サービス衛星自体がデブリになるような事故に繋がる恐れがあるため、サービス衛星が考慮すべき安全対策をJAXAが基本要求として定めたもの。

「定点観測」によるCRD2のターゲットスペースデブリの連続画像

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