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JAXA、環境省、国立環境研究所、NASA間の
温室効果ガスに関する衛星データ相互比較等の協力継続の決定

2024年(令和6年)12月12日

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
環境省
国立研究開発法人国立環境研究所

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)、環境省及び国立環境研究所、並びに米国航空宇宙局(NASA)の4者は、温室効果ガスに関する衛星データの相互比較等の協力※1を継続するため、「日・米宇宙協力に関する枠組協定」に基づく実施取決めの署名を行いました。
 人工衛星によるリモートセンシング技術※2を使った温室効果ガスの観測は、観測の精度を高める必要があるとともに、広い範囲を高い頻度で観測し、地球全体において温室効果ガスの分布変化を把握することが重要となります。
 これまで、4者間の協力で、日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)、「いぶき2号」(GOSAT-2)及び米国の炭素観測衛星「Orbiting Carbon Observatory-2」(OCO-2)、「OCO-3」から取得した温室効果ガス関連の観測データについて、日米の相互比較等※3を実施し、データの精度向上を実現してきました。また、観測データの相互利用を進めることで、温室効果ガスの地球規模での分布変化の把握に貢献してきました。
 今回の協力の継続は、日米間で温室効果ガス観測の取り組みの重要性を再認識し、JAXA・環境省・国立環境研究所が開発を進める「GOSAT-GW」及びNASAの大気質観測衛星「Tropospheric Emissions: Monitoring of Pollution」(TEMPO)による観測データを新たに追加することで、更なる精度と均質性の向上、並びに日米の相互利用を加速することを目的としています。国際社会が取り組む温室効果ガスの排出削減目標への貢献、地球温暖化対策への貢献を目指します。

【関係者のコメント】

・JAXA 瀧口理事
 15年以上にわたり全球規模の観測を継続しているGOSATシリーズの温室効果ガス濃度データは、世界的に広く活用されて高い評価を得ています。今般、日米がそれぞれ新たに開発した衛星を追加して協力を継続し、さらに協力を拡大することとしました。地球温暖化対策は人類の喫緊の課題であり、JAXAは関係機関とより一層協力して衛星データ相互評価等の活動を推進し、2050年までの脱炭素社会の実現に向けて貢献します。

・環境省 松澤地球環境審議官
 本取り決めは、従前からの日米間の協力を継続するとともに、GOSAT-GW等の新衛星の活用、データの相互利用を加速することにより、両国の協力関係をさらに強化するものです。本協力で得られた科学的成果が、パリ協定やIPCCなどの枠組みを通して、日米はもちろん世界中で、温室効果ガス削減や大気汚染対策など、各地域の社会課題の解決に活用されることを期待しています。

・国立環境研究所 木本理事長
 今回締結された実施取決めに基づく日本のGOSATシリーズと米国のOCOシリーズ、さらには昨年打ち上げられた米国の最新衛星であるTEMPOとの協力は、日米両国のみならず気候変動や大気汚染問題に取り組む数多くの国々を含む国際社会への重要な貢献になるでしょう。共同研究に取り組む日米の科学者による今後の研究成果にぜひご期待下さい。

・NASA カレン・サンジャーメイン地球科学部長
(原文)
 This Implementing Arrangement with Japan formally extends our cooperation and ensures our high-impact partnership will continue to thrive. The close collaboration of our science teams is the fuel that drives the success of our missions at NASA and at JAXA. We learn faster when we work together, and this Implementing Arrangement will enable significant advancement in our study of the atmosphere.
(仮訳)
 この度の実施取決めの署名は、日本との間の協力関係を正式に拡大するものであり、影響力の大きい我々のパートナーシップが今後も繁栄し続けることを保証するものです。我々のサイエンスチームの緊密な協力こそが、NASAとJAXAにおけるミッションの成功を推進する原動力となっています。両者が協力し合うことでより早く学ぶことができます。この実施取決めにより、我々の大気の研究は大きく前進することが期待されます。

※1: 宇宙航空研究開発機構、国立環境研究所、及び環境省並びに米国航空宇宙局との間のGOSAT、OCO-2及びGOSAT-2ミッションに係る協力に関する了解覚書の署名について(お知らせ)(平成27年3月19日付け環境省報道発表)
https://www.env.go.jp/press/100757.html 外部リンク

※2: JAXA第一宇宙技術部門Webサイト「Earth-graphy」
https://earth.jaxa.jp/ja/eo-knowledge/remote-sensing/index.html

※3: JAXA、環境省、国立環境研究所及びNASAは、「GOSAT」、「GOSAT-2」、「OCO-2」及び「OCO-3」のミッション機器の相互校正、データプロダクト及び算出アルゴリズムの比較及び評価、共同サイエンスチームの設置及び国際会議等への参加を行ってきました。

(参考情報1)実施取決めの対象となる各衛星について
 JAXA、環境省及び国立環境研究所が提供するデータは、「GOSAT」(2009年打上げ)、「GOSAT-2」(2018年打上げ)及び「GOSAT-GW」(打上げ予定)の各衛星により取得されるものです。NASAが提供する衛星は、OCO-2(2014年打上げ)、OCO-3(2019年打上げ)及びTEMPO(2023年打上げ)です。

(参考情報2)実施取決めの下での協力概要
 JAXA、環境省、国立環境研究所及びNASAは、「GOSAT」、「GOSAT-2」、「GOSAT-GW」、「OCO-2」、「OCO-3」及び「TEMPO」から得られたデータを用いて、以下の協力を行います。

打上げ前データ、地上観測データ、航空機実験データ及び衛星観測データを用いたミッション機器の相互校正

データプロダクト及びその算出アルゴリズムの相互比較及び評価

衛星データ利用のための共同アプリケーションチームの設置及び国際会議等への参加

(参考情報3)これまでの成果概要 
 本取り組みに基づき日米合同にて実施している代替校正実験を通じ、日米の温室効果ガス観測センサの校正を実施するとともに、それぞれのセンサプロダクトの改善を実施し、共同で科学論文にも発表しています。

日米共同代替校正実験をまとめているwebサイト
https://www.eorc.jaxa.jp/GOSAT/GHGs_Vical/index.html

関連する科学論文:
1. Kuze, A., O'Brien, D. M., Taylor, T. E., Day, J. O., O'Dell, C., Kataoka, F., Yoshida, M., Mitomi, Y., Bruegge, C., Pollock, H., Basilio, R., Helmlinger, M., Matsunaga, T., Kawakami, S., Shiomi, K., Urabe, T., and Suto, H.: Vicarious calibration of the GOSAT sensors using the Railroad Valley desert playa, IEEE Trans. Geosci. Remote Sens., 49, 1781-1795, doi:10.1109/TGRS.2010.2089527, 2011.
2. Kataoka, F.; Knuteson, R. O.; Kuze, A.; Suto, H.; Shiomi, J.; Yoshida, S.; Kondoh, N.; Saitoh : Calibration, Level 1 Processing, and Radiometric Validation for TANSO-FTS TIR on GOSAT, IEEE Trans. Geosci. Remote Sens., 57, 3490-3500, doi: 10.1109/TGRS.2018.2885162, 2019.
3. Carol J. Bruegge, David Crisp, Mark C. Helmlinger, Fumie Kataoka, Akihiko Kuze, Richard A. Lee, James L. McDuffie, Robert A. Rosenberg, Florian M. Schwandner, Kei Shiomi, and Shanshan Yu. : Vicarious Calibration of Orbiting Carbon Observatory-2 (OCO-2), IEEE Trans. Geosci. Remote Sensing, 57, 5135 - 5145, doi: 10.1109/TGRS.2019.2897068, 2019.

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