寄附金の種類 イプシロンロケットの進化への貢献に寄附

寄附金の種類

JAXAでは3種類の寄附金を用意しています。寄附者は個人、法人を問いません。

イプシロンロケットの進化への貢献に寄附

イプシロンロケット打上げ画像

©JAXA

イプシロンロケットはこれまで「特別」だった宇宙の敷居を下げ、誰もが積極的に宇宙を使える時代の実現を目指した固体ロケットです。
打上げ失敗を乗り越え、信頼性を高め、今後も多様な小型衛星の打上げ需要に対応し国際競争力を強化していくための研究開発を進めていきます。本事業へのご寄付を通じて、イプシロンロケットはこれからも革新を続けていきます。

寄附の使途

イプシロンロケットの開発、打上げに充当いたします。

伊海田皓史プロフィール写真

©JAXA

Profile

伊海田 皓史

(宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム)
東京都出身。2008年入社。ロケットの構造機構系の研究開発部署を経て2015年より現職。

—イプシロンロケットとは何ですか?

 1955年に初めて水平発射実験を行ったペンシルロケット(全長230mm)に由来する、日本独自の技術を継承する固体ロケットです。2013年の試験機以来、これまで4機の打上げに成功しています。
 「伝統を受け継ぎ、革新を続ける」というイプシロンのキャッチフレーズに象徴されるように、組立や点検などの運用の効率化や、打上げ能力の向上、そして衛星の搭載環境(乗り心地)を改善するための取り組みを継続的に実施してきました。また4号機ではベンチャー企業や大学で開発された衛星を搭載し、全ての衛星を約束した軌道へ正確に投入することに成功しました。
 誰もが積極的に宇宙を使える時代間近に迫ってきた今、宇宙へ確実かつ手軽にアクセスできる輸送システムとして、今まで以上に活躍の場を広げていきたいと考えています。

—これまで皆様から集まりました寄附金はどのように使われていますか?

 いただいた寄附金は、「射点近傍音響計測」と「射点近傍画像計測」という2つの作業に使わせていただいています。この2つの作業について説明します。

(1)射点近傍音響計測

 ロケットの打上げ時には、ノズルから出る噴流(プルーム)によって非常に大きな音響(≒圧力振動)が発生します。この圧力振動はロケットに搭載されている衛星内部の繊細な電子機器等を振動させることになるため、衛星はロケット打上げ時の音響に耐えられる設計にしなければいけません。音響に晒されるのはロケットの打上げ時のみのため、衛星にとって打上げ時の音響は小さければ小さいほど望ましいです。

—どのように音響を低減させるのでしょうか?

 例えば米国等では「噴流への水の注入」によって打上げ時の音響を低減しています。しかし、この手法を使う代表的な設備は40秒の間に1000ton以上もの水を注入する大規模なものです。
 イプシロンロケットの場合、最大限のシンプルな設備を目指し、ロケットを打ち上げる射点の形状を最適化することによって、打上げ時の音響環境を他のロケットに比べて小さくすることに取り組みました。
 この取り組みでは、まずCFDと呼ばれる数値計算を用いて音響が発生する原因を把握し、音響がロケットに対して伝わりにくい射点の形状を設定しています。そのうえで実物の数十分の一のロケット(固体モータ)と射点模型を用いた試験で、音響低減効果を実証するアプローチを採用しました。

図CFD(数値計算)を用いた低騒音射点設計

図 CFD(数値計算)を用いた低騒音射点設計

出典:Tsutsumi, S., Ishii, T., Ui, K., Tokudome, S., and Wada, K., “Study on Acoustic Prediction and Reduction of Epsilon Launch Vehicle at Liftoff” JOURNAL OF SPACECRAFT AND ROCKETS, Vol. 52, No. 2, 2015,
注:音響発生の原因となる射点とロケットの噴流の衝突部形状を最適化し、曲面形状とすることで、ロケットへ音響が伝わりにくくなることを確認。

 この世界最先端の取り組みについて、実際に打上げ時の音響を取得する計測を実施しており、そこに寄附金を使わせていただいています。具体的には音響計測の要であるマイクの購入、射点の近傍にマイクを設置するための作業や、配線を敷設する費用に活用させていただいています。実際に打上げ時に取得したデータから、上記のアプローチによって音響環境が大きく低減することを実証することができました。

図 イプシロンロケット射点形状概要

注:CFD解析結果を踏まえ、ランチャ(機体下部)とフレームダクトでロケットに対して音響が伝わりにくい形状を実現

図イプシロンロケット射点形状概要

©JAXA

(2)射点近傍画像計測

 寄附金で実施しているもう一つの作業が「射点近傍画像計測」です。イプシロンロケットの1段目の一番後ろの部分は「サーマルカーテン」と呼ばれる、機体の内部を熱から守る毛布のような構造物になっています。これは機体の姿勢を制御するために可動式になっている1段目のノズルの動きを妨げず、かつ機体内部にある電子機器を熱から守るために必要になるものです。射点からイプシロンロケットが飛び上がる際、射点とロケットの周囲の流れは複雑な挙動をすることが予想されていたため、布状のサーマルカーテンはその影響を受けると考えられていました。数値解析(CFD)によって事前に予想したサーマルカーテンの挙動を確認するために、打上げ直後の機体を直下(機体から約15メートル)から撮影するのが、この「射点近傍画像計測」の主な目的です。

—皆様からの寄附金はどのように活かされているのでしょうか?

 3号機より、計測用の配線やカメラの購入、そして噴煙に晒されるカメラを防護するための特注カバーの製作に使わせていただいています。3号機ではロケット発射時の噴煙によるケーブル断線等によって、設置した一部のカメラしか計画通りに動作させることができませんでしたが、4号機では、リフトオフ時に発出される信号によりシャッターを切り続ける改善を施し、設置した全てのカメラでデータを取得することが出来ました。
 機体に極めて近い撮影は国内では初めてとなるチャレンジングな試みでしたが、サーマルカーテンの挙動も極めて明確に確認することができました。次号機以降も再現性の確認としてデータ取得を計画しており、今回準備したカメラも保護カバーも再度使う予定です。

射点近傍画像計測4号機取得結果

©JAXA

射点近傍画像計測 4号機取得結果

—イプシロンロケットの開発に携わるうえでの苦労や楽しさはありますか?

 イプシロンは先ほど紹介したような音響低減の取り組みだけでなく、先進的な技術を多数取り入れていますので、開発が想定通り進まずに頭を悩ませることもあります。一方で、ロケットに携わるエンジニアとして、自分の担当したロケットが打上げに成功することの喜びは何にも代えがたいものであり、非常に大きな仕事のモチベーションになっています。もちろん一人ではロケットの打上げはできませんので、チーム全体で力をあわせ、課題を乗り越えて目標を達成する一体感もロケットの醍醐味と思っています。

—最後に寄附者の皆様へメッセージをお願いします。

 寄附金を使用して取得する音響や画像データは、どちらも打上げの時にしか取得できないもので、JAXAのみならず日本の宇宙開発にとって非常に貴重な財産となっています。また先ほど述べた通り、ロケットの開発では技術的な課題に直面することもありますが、皆さんから頂くご声援や、ご支援として頂いた寄附が開発チームの精神的な支えになっています。これからも皆さんが応援したくなるような、魅力的なロケットにイプシロンを仕上げられるよう、チーム一同力をあわせて頑張ります。

(取材日:2019年12月)

  • 生きている間に、民間人が気軽に宇宙へ旅立てること夢見て。それを達成できるよう、ささやかながら応援します。
  • 人類の未来に向けて希望を持てる素晴らしい技術の開発に期待いたします。
  • あなた方の活動が多くの人に夢と感動と未来を作り出してくれると確信しております。今後も益々のご発展をお祈り申し上げます。
  • ささやかながら一天文ファンとして支援させていただきます。
  • 固体燃料ロケットの夢を見させてください!
  • 「科学は人を幸せにするためにある」JAXAの技術者の皆様、大変な苦難の道のりかと思いますが、未来の日本の子供たちのために頑張ってください。世界を変えるのは、いつだって日本なのだから!
  • 応援しています!日本のため、世界のために頑張ってください!
  • これからもずっと、空へ挑み、宇宙を拓き、未来への道を翔けて行って下さい。わずかばかりですが、応援しています。
  • 日本の技術を世界に伝え、未来に繋がるすばらしい事業だと思います。これからも頑張って下さい、応援しております。
  • イプシロン打ち上げおめでとうございます!打ち上げの様子を見て感動しました。
  • イプシロン打ち上げ成功、おめでとうございます。わずかですが、お祝いの気持ちを込めて。今後の日本の、世界の宇宙への開発をけん引してください。
  • 世界中の衛星をイプシロンで打ち上げられることを願って。応援します。
  • イプシロン応援します。宇宙への敷居は少しずつ下がっていると感じます。

など

PAGE TOP