平成25年10月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

奥村理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:平成25年10月17日(木) 11:00-

場所:JAXA東京事務所 B1 プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 寺田弘慈

冒頭挨拶

JAXAはこの10月1日で設立10周年を迎えました。この日を念頭に置いて、私が就任以来早々に社内で検討チームを作り、社員一丸となって新しいJAXAをどのような姿にしていくか、検討会を重ねて参りました。その検討結果に私自身の問題意識を加え、10月7日の「JAXAシンポジウム2013 in 東京(メルパルクホール@東京都港区)」、11日の第57回宇宙科学技術連合講演会(米子コンベンションセンター@鳥取県米子市)の特別セッションにおいて、皆様にその骨格をご紹介させていただきました。

特に社員向けに強調したのは、新しい宇宙基本計画でも定義されているように、私どもの仕事そのものが国の仕事であり国家プロジェクトに参画しているという原点についてです。そのことを社員一人一人が再確認する意識改革を強く求めて参りましたし、現在も強く求めております。
これは今後の私どもの一つ一つの活動の方向性を決める「キー」になると考えています。

もう一つは、これまで宇宙開発の成果の中心は所謂アウトプットという世界であったものを、これからはアウトカムという成果の輩出に意識することが必要があるという点です。これはJAXAだけの問題ではなく世界的な流れとしても、従来の科学技術という対象から所謂イノベーションの創出にまで拡張しています。この大きな流れは、当然日本の科学技術政策にも反映されてきています。私もその策定に関わって参りました「第4期科学技術基本計画」、それから新しく策定されました「科学技術イノベーション総合戦略」でも、国の科学技術政策が明確にイノベーションの創出までを視野に入れることが示されています。

従いまして私どもの成果は、活動の指標を示すアウトプットではなくて社会あるいは学会にインパクトを与えるアウトカムというものをより重視したもの、成果創出の活動を社員各自が強く意識して欲しいという考えで、新しいJAXAというものを検討して参りました。
その結果を、前述の「JAXAシンポジウム」「宇宙科学連合講演会」の場で皆様にご紹介させていただいた次第です。

また、これらのことを端的に表す新しい経営方針と行動理念を設定し、コーポレートスローガンを一新しました。

経営理念として「宇宙と空を活かし、安全で豊かな社会を実現します」を設定し、補足として「私たちは、先導的な技術開発を行い、幅広い英知と共に生み出した成果を、人類社会に展開します」 という副文を作りました。「実現する」というところに思いを込め、アウトカムに繋がる前提になるということがポイントの一つです。

私どもJAXAは、政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的実施機関という位置付けですので、副文では国際的な技術のベンチマークを行い先端的技術開発を担う責任があるというように解釈しています。このことが「先導的な技術開発を行う」という表現に表れていると、そうご理解いただきたく思います。

加えて私どもJAXAだけではなく、幅広く日本の各メーカとも、国際協調を進めていくことで、成果を人類社会に展開して行こうという思いをこの短い文章のなかに込めています。

このような理念を実現するうえで、社員一人一人がどのように行動すべきかを行動宣言※として定め、従来より今一歩各人が行動を進めるようにとの思いを込めています。行動宣言として3つ並べましたが、最初の1番目は行動する目的を示しており、2番目、3番目の宣言は1番目を実現するうえで私どもがどう行動するかを示しています。加えて申しますと、これらの宣言はスタートであり、具体的な課題に対して更に検討を進め、内部改革等を実行に移していくという意味合いを持っています。

コーポレートスローガンは従来日本語であったものを「Explore to Realize」という英語表記へ変更し、宇宙に向かう人類の夢や成果など、様々な意味で「形にする」といった思いを込めて策定しました。

関連リンク

経営理念

宇宙と空を活かし、安全で豊かな社会を実現します

私たちは、先導的な技術開発を行い、幅広い英知と共に生み出した成果を、人類社会に展開します

行動宣言

1.人びとの喜び 私たちは、人類社会の生活を進化させることで、人びとの喜びや驚きを生み出します
2.創造する志 私たちは、常に高みを目指し、どんな困難にも立ち向かう創造する志を持ち続けます
3.責任と誇り 私たちは、社会からの信頼と期待に応えるため、責任と誇りをもって誠実に行動します

トピックス

I. 安全保障・防災
II. 教育・普及・国際協力など

I. 安全保障・防災

「しずく」の「2013年日経地球環境技術賞」受賞

GCOMプロジェクトチームは第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)の開発について「2013年日経地球環境技術賞 優秀賞」(主催:日本経済新聞社)を受賞しました。今回の受賞は「しずく」の技術の独自性や社会生活へのインパクトなどが評価されたもので、大変嬉しく思います。

「しずく」は2012年5月18日に打ち上げられてからこれまで、大気中の水蒸気量や海面の温度など数々のデータを提供してきました。これらのデータは、北極海の海氷面積の減少など、地球規模での環境変化の把握に加えて気象予報の精度向上や効率的な魚場検索などにも活用されていますので、冒頭申しましたとおりアウトカムに繋がるところまで努力して参りたいと思っております。

関連リンク

無人宇宙補給機「シグナス」(米国)ミッションにおける、地上運用支援

シグナス補給船実証機(Orb-D1(※1))は、2013年9月18日午後11時58分(日本時間)に米国バージニア州にあるアメリカ航空宇宙局(NASA)ワロップス飛行施設から打ち上げられ、その後、国際宇宙ステーション(ISS)への接近・結合日が予定より延期されましたが、9月29日午後9時44分(日本時間)にISSへ結合されました。

この「シグナス」補給船実証機のミッション実施にあたり、JAXAはNASAからの受託に基づき「きぼう」日本実験棟搭載の近傍通信システム(Proximity Communication System:PROXシステム)を運用しNASAを支援します。これは私どもの技術が世界で信頼を得ている証の一つであると、そう思っています。  なお、米国オービタルサイエンシズ社によれば、「シグナス」のISSからの分離は、日本時間10月22日午後8時30分頃、再突入は、10月24日午前3時18分頃(※2)に予定されています。

※1 米国オービタルサイエンシズ社(OSC)が開発した無人の宇宙補給船。日本が開発した宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)と同じく、ISS近傍運用のために、「きぼう」搭載のPROXシステムを利用している。OSCは、「シグナス」の開発において、PROXとの通信機器を三菱電機(株)から調達。また、(株)IHIエアロスペース社製のスラスタも使用している。
※2 再突入は、日本時間10月24日午前3時16分に実施されました。

若田光一宇宙飛行士搭乗のソユーズ宇宙船の打上げ予定日

若田宇宙飛行士が搭乗するソユーズ宇宙船(37S/TMA-11M)の打上げが、11月7日に予定されています。
日時については、10月17日にモスクワで開催予定のGeneral Designer’s Review(GDR:37S打上げの準備状況審査)において決定されます。
私も打上げの際は、バイコヌール宇宙基地(カザフスタン)に行って見届けたいと思います。

II. 教育・普及・国際協力など

シンポジウム等

「第64回 International Astronautical Congress (IAC)」が、2013年9月23日(月)~27日(金)の日程で、中国北京で開催されました。
(参加登録74カ国 3,727名)

23日に宇宙機関長によるパネルセッションが行われ、私もNASA(米)・ESA(欧)・CSA(加)・CNSA(中)の各機関長とともに参加しました。
パネルセッションでは各機関長がどういう問題意識を持っているか、あるいはこの一年間にどういった成果を挙げたかといった議論がなされ、どの機関もロケットについて相当高い意識を持っているということを改めて実感しました。

また、JAXAの樋口副理事長が会長を務める国際宇宙航行連盟(IAF)の活動として、樋口会長がIACの会合を統括し、開閉会式をはじめ30以上のイベントでスピーチ等を行いました。このように国際的にJAXAの幹部が活躍していることは喜ばしく、国際評価の一つとも思っています。

事業所施設公開

10月19日(土)に筑波宇宙センターの特別公開を予定しています。

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