平成27年1月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

奥村理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:平成27年1月15日(木) 11:00-11:30

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 上垣内茂樹

 国際宇宙ステーション(ISS)におけるアンモニアリークについて、現在判明している状況をご説明します。日本時間1月14日17時49分にISS Node2船内において、アンモニアリークの疑いがあるとして、アメリカ航空宇宙局(NASA)が緊急事態を宣言しました。同時にクルーのロシアモジュールへの退避、電源系切り替え等のISS緊急処理手順を実施しました。その後、アンモニア検知の情報をISS各極合同で解析した結果、アンモニアリークの事実はなく誤検知であると判断され、クルーはアメリカモジュールへ再入室し、電源系復旧作業を開始しています。現時点で「きぼう」の運用に関して支障も出ていないという報告を受けております。現在ISSは、正常な状態へ復帰しつつあるという状況です。JAXA関連の実験についても緊急対応から通常の作業へ復旧しつつあるとご理解ください。

新「宇宙基本計画」の決定

 1月9日の宇宙開発戦略本部において新宇宙基本計画が決定されました。安倍内閣総理大臣から関係省庁及びJAXAに対し、この計画をしっかりと実現していただきたいとのご発言がありましたので、JAXAは政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核機関として、計画に記載されている人工衛星、ロケットの研究開発、宇宙探査、研究開発等について、引き続き実施機関として着実に推進していきます。

平成27年度当初予算案の閣議決定

 平成27年度当初予算案が1月14日に閣議決定されました。JAXAの予算総額は 1,541億円 となり、平成26年度予算1,545億円に比べ約4億円の減となります。ただし、平成26年度補正予算が299億円措置されており、平成27年度の予算と合わせた額では1,840億円となり、補正予算を考慮した金額ベースで比較すると平成26年度の1,815億円に比べ約25億円の増となっています。
 平成27年度予算での主なポイントは以下の通りです。

  • 平成32年度に初号機を打ち上げる予定の新型基幹ロケットについて、平成26年度に比べて55億円の増額となる125億円が措置されました。
  • 他国にない広域かつ高分解能の陸域観測を実現する「先進光学衛星」の開発に着手するための予算として、新たに51億円が措置されました。
  • 光通信により電波の2倍以上のデータ伝送速度(1.8Gbps)を実現する「光データ中継衛星」の開発に着手するための予算として、新たに31億円が措置されました。
  • イプシロンロケットにより小型衛星を打上げ、革新的な宇宙技術を実証する革新的衛星技術実証プログラムを立ち上げるための予算として、新たに9億円が措置されました。
  • 次期X線国際天文衛星「ASTRO-H」について、平成27年度の打上げに必要な経費として114憶円が措置されました。

 この様に新しいミッションが立ち上がることなどから予算を頂いておりますので、しっかりと対応をしてまいりたいと考えております。

新年にあたっての抱負

 今年1年の動きについて簡単にご紹介したいと思います。
 4月からJAXAは国立研究開発法人としての活動が始まりますが、この施策の趣旨を活かすような組織運営をしていく必要があります。
 特に研究開発法人として求められていることは、「我が国全体としての研究開発成果を最大にすること」であり、JAXA単独で頑張るだけでは無く、日本全体のイノベーション創出に貢献できるように日本全体にJAXAの成果が広がることが求められています。従ってJAXA内部における仕事の仕方についても従来とは変わってくるところが出てくると思います。
 5月末から11月にかけては、油井亀美也宇宙飛行士が第44次・第45次長期滞在クルーとして国際宇宙ステーションに滞在し、宇宙実験等を行います。
 また、12月ごろには、小惑星探査機「はやぶさ2」の地球スイングバイ、金星探査機「あかつき」の金星周回軌道への再投入を予定しています。
 平成27年度のJAXAの打ち上げ予定として、宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機、次期X線国際天文衛星「ASTRO-H」を打ち上げる予定です。
 この様に様々なイベントが続く中で新しいミッションも計画され研究開発法人として大きな役割の一端を担わなければならないというこの1年は、JAXAにとって大きな1年になると考えているところです。

航空分野での新規研究開発プロジェクト

 航空分野において研究開発プロジェクトとして「高効率軽量ファン・タービン技術実証(aFJR)プロジェクト」と、「機体騒音低減技術の飛行実証(FQUROH)プロジェクト」の2つが1月からスタートしました。
 研究開発プロジェクトとは、一般名称である研究開発とは違い、航空本部が実施主体となりますがJAXA全体でステアリングしていくことと、産業界とも連携しターゲットを共有して進めて行くものと定義しています。この2つのプロジェクトだけではなく研究開発プロジェクトとして今後も創出していきたいと考えています。
 どちらのプロジェクトも、国の施策として文部科学省の「戦略的次世代航空機研究開発ビジョン」の中で優先的に取り組むべき課題と設定されているものです。

第3回国連防災世界会議

 3月14日(土)から18日(水)に、第3回国連防災世界会議が仙台で開催されます。その中の活動の一つでもあるCEOS(Committee of Earth Observation Satellites)は、議長機関であるJAXAが主導となり、国連防災会議に向けて、宇宙技術の防災にかかる貢献の取り組みを行っています。JAXAとしても、近々、国連防災世界会議の開催に合わせて防災に対する国際協力による宇宙の防災への取り組み、JAXAの取り組みについて報道機関の皆様にご紹介する機会を設ける予定にしています。

防災・減災に関する国際研究のための東京会議

 1月14日(水)から16日(金)の3日間東京大学において、防災・減災に関する国際研究のための東京会議が開催されています。(主催:日本学術会議、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)、災害リスク統合研究(IRDR)、東京大学伊藤国際学術研究センター。) JAXAからは、昨日、樋口副理事長がハイレベルパネル会議にパネリストとして登壇し、宇宙技術の防災・減災への取り組みについて紹介しました。衛星利用による防災・減災に関する活動の強化ということもJAXAにとっての大きな取組の一つとしていきたいと思っています。

小惑星探査機「はやぶさ」の電力技術の応用

 研究・開発の民生転用の活動の一環として、小惑星探査機「はやぶさ」の技術に端を発した電力ピークカット制御に係る技術を提案しています。
 この度、この技術を家電機器に応用するための通信情報をオープンプラットフォームにて公開致しました。この通信情報により、赤外線による通信メディアをベースとして、多種の家電機器の電力を優先度をつけて同時に制御することが可能となります。オープンプラットフォームに搭載することで、多くの家電機器に適用していただけることを期待しています。
 また、民間の皆様に本技術を活用していただくために、技術的内容等に関しての説明会等を1月20日(火)に行う予定としています。

太陽観測衛星「ひので」の研究成果

 平成18年(2006年)の打ち上げ以来、太陽観測衛星「ひので」は着々と成果を上げているところです。今般、太陽フレアに関する最新の研究成果と今後の展望について、報道機関の皆様にご紹介する説明会を1月20日(火)に行う予定としています。

小惑星探査機「はやぶさ2」の状況

 はやぶさ2の状況についてお知らせします。現在、地球から約1,700万km離れた場所を航行中です。引き続き搭載機器や地上の追跡管制設備の初期機能確認を行っています。また、イオンエンジンについては、12月下旬から初期機能確認を行っていますが、4台搭載しているエンジンが推力を発生していることを確認しており1月下旬まで試運転を実施する予定です。

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