理事長定例記者会見
奥村理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします
日時:平成27年10月8日(木) 11:00-11:40
場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム
司会:広報部長 上垣内茂樹
今週はノーベル賞weekでした。大村先生、梶田先生、ノーベル受賞おめでとうございますと私からも申し上げます。日本にとっても大変明るいニュースですし、私もうれしく思っています。
特に梶田先生は、我々の研究のアプローチとは全然違いますが、同じ宇宙の誕生の秘密を探ると言いましょうか、そういう意味で同じ分野の研究者でおられますし、また、我々JAXAのいろいろな委員会や検討会にご参加していただき、その中でご指導をいただいています。その意味でも感謝と同時に、この度の受賞については、心からお祝いを申し上げます。これを機会に、日本の宇宙の研究開発がより世界的にも認められるように、我々も努力しますし、この分野が発展すれば良いと思っています。
超音速機が飛ぶ時によって発生するソニックブームを低減するD-SENDプロジェクトを進めています。実験を行ったはご報告しましたが、少し時間をかけて解析をしてきました。その結果の概略を本日は紹介します。今回得られた結果、測定されたデータが我々の考えているソニックブーム低減の技術をまずは実証したということが、解析結果から得られました。どのレベルのソニックブームの低減なのか、これは正確さを欠きますので、10月27日の記者説明会で正確に報告します。分かりやすく効果を説明しますと、仮に2003年に運用の停止が決まったコンコルドに適用した場合、ソニックブームが約半減、1/2ぐらいになります。ただし、そのレベルでは現在地上を飛行することは許されていません。飛行機側のソニックブームは、我々の開発した形状の効果は大きいですが、もう一つ飛行機の重量にも影響されます。コンコルドをなんらかの形でその重量を半分に軽くすることができますと、ソニックブームはコンコルドの1/4まで低減できます。そうなりますと、市街地を飛ぶ条件の中に入ってきます。一時、民間飛行としてコンコルドが飛んで、環境問題、ソニックブームで運航中止に追い込まれましたが、我々の世界に先駆けた結果が出てきますと、またこの分野の研究開発が盛んになっていくのではないかと考えています。この結果を、国際民間航空機関ICAOのソニックブームを扱うところで報告し、各国の航空機関のご意見を伺う予定です。10月27日に、より正確な内容についてご紹介しますので、どうぞご参加ください。
今週の月曜日(10月5日)に、フランス国立宇宙センターCNESと機関間協定の交換式を行いました。今回は、フランスのヴァルス首相、それから日本の安倍首相の前で交換式を行うという栄誉をもらいました。これまでも、CNESとの間には長いこと機関間協定の下で研究開発を行ってきました。今回改めて機関間協定を改訂しようとした大きな趣旨は、もう少しテーマの選定にあたって両機関の経営層の参加を取り入れ、より重点化された姿で共同研究開発を進めようと、ジャン・イブ・ル・ガル長官と私の合意に基づいて、機関間協定の改定に至りました。ご案内のように、世界の宇宙の状況は、従来とは違って非常に大きく変化をしています。そういった中で、お互い公的な研究機関としての役割についても再検討をする必要がありますし、私共も新生JAXAとして進めていますが、そういうことも共通認識があり、今回の改訂、具体的に言いますと、両機関の企画担当の理事が具体的に課題の設定を行う会合を設けました。これまでは、どちらかというと各研究者間のボトムアップを中心に行ってきましたが、これを替えました。それが1点。2点目は、当面の重要課題として3つの分野を設定しました。将来に向けての共同ミッションを検討するチーム。次に主に衛星情報になりますが、社会に活かす宇宙利用という分野、ダウンストリームと言っている分野です。この分野で課題を具体的に検討します。3つ目は、非常に過酷な宇宙環境下での部品、衛星機器に使う部品の共同開発等を含めたあり方についての検討会、そういったことを趣旨にして今回改訂に至りました。今後推進していくうえで、この改訂の趣旨がいきるような実行を上げていきたいと考えています。
革新的衛星技術実証プログラムをテーマ立てしていますが、これの具体的なテーマの公募を行います。その公募に先立ち、本日(10月8日)になりますが、説明会を開いて皆様方に内容についてご紹介をさせていただきますので、是非ご参加をお願いしたいと思います。このプログラムは宇宙基本計画で定められました「宇宙システムの基幹的部品等の安定供給に向けた環境整備」という一つの政策目的がありますが、この政策目的に沿ったプログラムになります。今後実施していくにあたり、出来るだけ多くの皆様からお知恵をいただきたいと、私どもは考えております。
こうのとり5号ですが、ご案内のように無事にミッションを終了しました。私ども現在進めているきぼうの利用成果の取り組みについても、従来と違う進め方をやってきておりますので、その成果等についてご紹介させていただきたいと思っています。特に、今回きぼうの船外装置の取り換えを行っていますので、これまでの成果等について、あらためて皆様方にご紹介する機会を設けたいと、現在企画をしています。近いうちにお知らせできるかと思いますので、ご参加をお願いします。
はやぶさ2の目指す小惑星の名前がRyugu(リュウグウ)ということで、国際天文学連合に、私どもの希望のとおりの名前をご承認いただきました。多くの国民の皆様に愛される名前になればいいなと、期待しています。外国の方にRyugu(リュウグウ)と言っても通じないかもしれませんが、日本の国民の皆様には広く親しまれている名前ではないかと思っています。
11月24日にH-IIA 29号機の打ち上げ予定が入っています。運ぶ衛星がカナダのTelesat社の通信放送衛星ということで、静止軌道まで運びます。そこに今回初めて基幹ロケット高度化プロジェクトで開発しました技術を使います。第2段機体に適用して、長時間の飛行を行う、あるいは2段エンジンの再々着火を行う、そういう試みをして、衛星側に負担を与えずに静止軌道まで持って行く技術を始めてトライします。この内容についても、別途説明会を予定していますので、近いうちにお知らせできるかと思います。
最後の話題は、地球観測衛星委員会CEOSの取り組みです。この後、職員の石田の方から細かい内容のご紹介がありますが、現在JAXAの山本理事がこの委員会の議長を務めており、全体のリードをしています。11月4日から6日まで京都国際センターにて本会議が開かれる予定になっています。地球観測衛星も日本でも前にご紹介しましたように、実利用に非常に近いところまで来ています。箱根大涌谷の地表の変動では、意思決定に使われたぐらいに、従来とはかなり違うステージに入ってきています。各国とも地球観測衛星のいろいろな意味での重要性について改めて認識してきています。そういうフェーズに入っていると私も認識しています。CEOSの議長を務めていると大変な役目でありますが、今後とも地球観測のデータが様々な分野で実利用に使われることを、私どもも促進してまいりますし、関係機関のご尽力も期待したいと思っています。