平成28年5月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

奥村理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:平成28年5月12日(木) 11:00-11:40

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 庄司 義和

X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)

 X線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」につきましては、去る4月28日に記者会見を行いましたが、衛星の機能復旧が見込めないと判断し、運用を断念することにいたしました。このような事態を招き、宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事長として大変申し訳なく思っております。
 現在、こういった事象を招いた、事象的には3つの要因分けをし、皆様にはご説明してきましたが、それらの事象が設計・製作・検証・運用といったそれぞれのフェーズのどこに技術的な問題があったのか、そのことを紐づけることによって、より原因を明確にします。設計や運用の支援を担当した企業の協力も得て、引き続き原因究明に取り組んでおります。
 今後、宇宙開発利用部会・小委員会にて、背後要因も含めた原因について説明してまいります。
 また、原因究明を行いつつ、今分かっている範囲内で並行して他のJAXAのプロジェクトへの影響について、特にシステムの品質・信頼性の観点での再確認を指示しております。そこの中でまた何か出てくれば、新たな対策を打つことになるかと思います。本件に関しましては、多くの国民の皆様、あるいはご協力いただいた海外の研究機関、また世界中の天文学者の皆様に、大きな落胆を与えたことだと思っており、大変申し訳なく思っております。

熊本地震に関連したJAXAの活動について

 4月14日に発生しました熊本地震では大変大きな被害があり、被害にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げます。政府や地方自治体が一体となって復興対策に取り組む中で、JAXAとしましても、私共の持っている能力を最大限に生かすべく、防災機関と協力して、衛星及び航空の技術を用いて活動をしております。衛星画像につきましては、災害発生直後から4月19日にかけて、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)で被災地の緊急観測を行うなど、防災機関と一体となって、災害対策への貢献に努めてまいりました。また、だいち2号で地面の隆起を観測する干渉解析という方法を以前にご紹介いたしましたが、様々な所で火山の噴火等発生している中で、私共としてもこの4月から国土地理院のご専門の方にJAXAに来ていただき、このような活動を強化していこうと、そういう方針を固めて、この4月から国土地理院の方に、JAXA内部で働いてもらう体制を整えました。
 また、「科学技術イノベーション総合戦略2016」の素案の中で議論されておりますが、地球環境監視を行う衛星については、継続性を確保し着実に開発を進める必要があるとご議論いただいていると聞いています。そういった議論に応えられるように、JAXAとしては、引き続き、体制、整備、強化を図り努力していきたいと考えております。
 また、今回の熊本地震の航空分野の技術についてもご紹介します。防災用のヘリコプターのネットワーク化、D-NET(災害対応航空技術)と称していますが、今回総務省消防庁の要請を受け、職員を派遣し、現地でD-NETの展開を行ってきました。特に今回の熊本のケースですと、動いて管理できるシステムを搭載していないヘリコプターがありましたが、そこを特別の持ち込みのシステムを搭載して、結果的に防災ヘリ全体がD-NETを通して一元的に運航管理ができる仕組みを作り、県庁に設置されている災害対策本部で、D-NETを通した 一元的な情報管理ができる仕組みを作り上げてきました。もう一つ、災害派遣医療チーム、DMATという活動がありますが、ここのドクターヘリはD-NETとは違う仕組みで運用されておりますが、今回熊本の現場では、関係機関の協力を得て、初めてDMATのドクターヘリとD-NETが協調する仕組みを始めて実現することが出来ました。DMATの方からは救急医療が効率的に行えるようになったとのお声をいただきました。災害、防災に対する宇宙あるいは航空の技術を駆使して、これからも私共は貢献していきたいと考えております。

こうのとり6号機に搭載するバッテリーの公開について

 こうのとり6号機は今年度中に打上げるように準備を進めておりますが、今回運ぶ物資の中でとりわけ象徴的な物が、国際宇宙ステーション(ISS)全体で使うバッテリーの交換を行うことになっており、アメリカ航空宇宙局(NASA)が日本製の株式会社GSユアサ製のリチウムイオン電池を購入しました。これを持って行くのが、こうのとり6号の一つの大きな役割です。今使われているISSのバッテリーはニッケル水素と聞いていますが、搭載後10年、2007年から使い、大分劣化してきており、今回取り換えることになりました。その際に、日本製のリチウムイオン電池が初めてISS全体の共通電源として使われることになり、その運ぶ手段がこうのとり6号機となりました。これは1回だけではなく、1回に6個ずつ運び、4回に分けて合計24個を運びます。これでISSの共通電源として、GSユアサの日本製のバッテリーが使われることになります。今年度は最初の6個を運びます。このバッテリーにつきましては、種子島で積み込みますので、種子島宇宙センターにて記者の皆様には公開する機会を設けたいと考えておりますので、別途お知らせいたします。

アラブ首長国連邦宇宙機関(UAESA)

 3月22日に、アラブ首長国連邦宇宙機関(United Arab Emirates Space Agency:以下「UAESA」)とJAXAとの機関間協定を締結したことを受け、今週、UAESAのルメイシ総裁とアーバビ長官が協定締結後初めて来日され、昨日お会いしてお話しいたしました。
 今回の訪問の主な目的は、機関間協定を結んだ具体的な案件の詰めを進めると同時に、私どもの筑波地区のケイパビリティをご視察いただく。先方からは、JAXAとの連携は非常に戦略的にも重要なパートナーであるという話もいただいておりますので、その期待に添えるように、私共も一緒に力を尽くしてまいりたいと考えております。

大西宇宙飛行士

 6月後半にフライト予定の大西宇宙飛行士ですが、現在ロシアに移動し、最終の訓練を行っています。今後5月末頃にガガーリン宇宙飛行士訓練センター(GCTC)での記者会見を行う予定です。JAXAとしても、5月下旬に、大西宇宙飛行士の長期滞在ミッションに関する記者説明会を予定しています。開催の詳細は、別途お知らせいたします。

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