平成29年1月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

奥村理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:平成29年1月13日(金) 13:30-14:15

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 庄司 義和

年頭にあたり

 皆様、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します。
小型ロケットSS-520 4号機の打上げを先日予定しておりましたが、天候の影響により延期しました。今の見通しでは、1月15日以降の気象条件が整う日に打ち上げることにしております。実施日が正式に決まりましたら、ご案内を差し上げたいと思います。
 このあと、次年度分も含め、JAXA衛星として打ち上げるものとして、気候変動観測衛星「GCOM-C」、超低高度衛星技術試験機「SLATS」があります。また、強化型イプシロンロケットによるASNARO-2の打上げを予定しています。
 GCOM-Cは、気候変動に及ぼす影響を詳細に調べること、具体的には中国からの黄砂の飛来状況や海洋の観測ができるように設計されております。SLATSは、超低高度で飛行しながら、地球観測を行う機能を持っています。
秋には金井宇宙飛行士の国際宇宙ステーション長期滞在が予定されており、現在準備を進めています。新しい成果を生み出してくれることを大いに期待しております。
 もう少し長いスパンの話をします。平成29年度は、JAXA第3期中期計画の最終年度となります。従いまして、中期計画に計画されている個別の事業を確実に仕上げると同時に、次期中期計画案の作成が大きな仕事になると思っております。特に次期計画を立案するうえで私が社内で強調していることは、世界の宇宙分野の事業環境の変化に留意する必要があるということです。昨年末には宇宙活動法、リモートセンシング法という、いわゆる宇宙2法が成立し、民間企業が宇宙開発に進出しやすい環境整備ができつつあります。そうした中、公的な研究開発機関であるJAXAが担う役割に、各方面から大きな期待が寄せられています。そうした期待に応えられるように、内容を詰めていきたいと考えております。
 一言で申しますとJAXAの役割は、新しいプロジェクトを政府あるいは関係府省に提案して、今後世界に先立つ先導的なミッションを実施していくことと考えております。先導的なミッションを提案するにあたっては、当然、新しい技術が要求されます。新規ユーザーの開拓もJAXAの役割です。我々が新たな宇宙展開の知恵を創出して、政府等に提案してご理解をいただき、その結果、予算をいただくということです。宇宙基本計画に定義されている「政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的実施機関」としてのJAXAの役割を果たせるよう、次の中期計画の立案を行っていく予定でございます。

平成29年度予算について

 平成29年度予算政府原案が決定され、JAXAの予算額は 1537億円と計上されております。この規模は、平成28年度とほぼ同等でございます。このうち2~3項目について、個別に紹介させていただきます。

 ひとつ目はH3ロケットの開発で、191億円が計上されております。平成28年度に比べて、大幅に増えております。2020年度(平成32年度)の打上げを目標にするH3ロケットの開発の山場を今年度迎えます。現在のところ、新しく開発するLE-9エンジンのターボポンプ単体試験を、角田宇宙センターにて始めております。その結果を踏まえて、今後LE-9の基幹部品であるターボポンプを完成させます。ターボポンプの試験が順調に終わったと仮定して、今年3月頃からLE-9エンジンそのものの燃焼試験を種子島宇宙センターにて実施予定です。この試験は今後複数回実施予定ですので、いずれかの機会で皆様にも実験をご覧いただく機会を設けたいと思っております。その際は、改めてご連絡を差し上げます。

 二つ目は、X線天文衛星代替機についてです。新規に23億円が計上されております。前回のようなことが起きないように、社内改革を進めております。また今回も国際協力のもとに事業を進めることとして、具体的な検討に入っております。現在の予定では、2020年度(平成32年度)の打上げを目指して準備を進めております。

 三つ目は次期技術試験衛星の開発で、今回8億円を計上いただいています。平成28年度補正予算で7億円を措置されておりまして、8億円が満額認められますと、実行額としては両方を足した金額となります。
 この技術試験衛星は、民間マーケットの大きな通信・放送分野で役立つ、次世代の画期的な機能を持つ通信・放送衛星を開発しようと、宇宙基本計画に取り込まれたものです。
 具体的には、文部科学省と総務省が主幹省庁となりまして、実行部隊としては、JAXAと総務省傘下の情報通信研究機構(NICT)が担当いたします。この技術試験衛星の開発の進め方のひとつの特徴として、将来事業化を構想して開発当初から民間事業者に入っていただき、主要スペック等については、その民間事業者が事業展開するときの状況を踏まえて設定していただこうとしております。この取り組みは、H3ロケットのときから始めたもので、H3ロケットに関しては、三菱重工業が深く関与されています。将来の宇宙産業の国際競争力強化を目指してこのような仕組みを導入したものであり、技術試験衛星はその方式を採用した第2弾目の取組みになります。通信・放送衛星の動向については、大量の通信を行うことで衛星自体がかなり重くなるために大電力が必要になり通信容量も大幅に上げないといけなくなる、一方、できるだけ不要な部分を減らせないといけないので、従来用いていた化学推進薬ではなく、最近の世界的な動向を踏まえて、この衛星では大出力の電気推進システムに取り組むことにしております。現在は、正式なプロジェクト化の前段階、プリプロジェクト段階ですが、技術開発を進めて速やかにプロジェクト化し、2021年度(33年度)にH3ロケットでの打上げを目指します。

 以上、来年度の予算案のうちで特徴的な内容を紹介いたしました。

ジオスペース探査衛星「あらせ」の状況

 昨年末12月20日に打ち上げた衛星ERG、「あらせ」と命名した衛星の状況ですが、1月6日にかけて所定の軌道に投入し、現在順調に運用を続けています。今後、ワイヤアンテナの伸展、マストの伸展を予定しており、それが終わるとクリティカルフェーズを終わり、初期運用フェーズに移ります。初期運用フェーズは3月中ごろまで続きます。今後とも慎重に運用を続けて参ります。
 久々のイプシロン打上げということもあり、皆様にも多数、内之浦にお越しいただきました。改めてお礼申し上げます。

国連COPUOSの小委員会議長に向井飛行士が就任

 国連の宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)において、2013年から2014年にかけて、JAXAの堀川技術参与が議長を務めた実績がございます。この委員会の下に2つの小委員会があり、そのうちのひとつの科学技術小委員会の議長にJAXA技術参与・宇宙飛行士の向井千秋さんが選任されております。この会議は1月30日~2月10日までウイーンで開催され、「宇宙デブリ」低減への取組み、「宇宙活動の長期的持続可能性」、国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する宇宙技術利用」などについて議論します。
 女性宇宙飛行士として初めてこの会議の議長に就任するということで、活躍を期待しておりますし、嬉しいニュースと受け止めております。

地球観測衛星30周年記念シンポジウムの開催について

 JAXAは数々の地球観測衛星を打ち上げており、その都度、成果等を皆様にご紹介しております。振り返ると、我が国の地球観測衛星は、1987年2月19日に打ち上げた海洋観測目的の「もも1号」が最初であり、今年はその打上げから30年目の記念すべき年となります。
 「もも1号」には、マイクロ波放射計、可視近赤外・熱赤外領域のセンサーが搭載されていました。これらのセンサーは、現在の地球観測衛星にもさらに進歩した姿で搭載されております。
 30周年を迎えるにあたり、これまでの利用の成果の総括と、今後の地球観測衛星のあり方を公開の場で議論することとし、2月13日に御茶ノ水ソラシティでシンポジウムを開催予定です。詳細が決まりましたら、皆様にご案内を差し上げますので、ぜひご参加ください。

乱気流事故防止機体技術の実証(SafeAvio)プロジェクトについて

 民間事業者にある程度資源を負担いただいて、一緒に開発をする研究開発プロジェクトという仕組みがあります。その中にSafeAvioというものがあり、飛行の安全性を確保する、あるいは向上させるという技術開発に取り組んでおります。民間航空機の事故は乱気流に巻き込まれたという事象がたいへん多く、航空事故原因の約半分を占めており、安全確保上の課題になっております。気象レーダーを利用して乱気流を事前に察知する努力は現在も続けられておりますが、難しいのは晴天時の乱気流の予測であり、技術開発上の課題です。
 飛行中の航空機から、進行方向の乱気流を事前に察知できれば、乱気流を避けて飛ぶとか、乱気流に備えて乗客にシートベルトを装着していただく等、事前に手を打てることが期待できるわけです。飛行機に搭載可能な検出システム(ライダー)はこれまではなく、JAXA航空部門が中心になって、このライダーを開発してまいりました。小型・軽量化の結果、航空機へ搭載可能なレベルまで開発が進みました。このレーザーライダーを使って、1月14日から名古屋空港を拠点に、航空機に搭載して機能検証をする飛行実証試験を実施いたします。
 本件は、ボーイング社と長く共同研究を続けております。航空機メーカーの関心も高く、同時にエアライン各社からも期待と注目をされております。飛行実証実験にて、良い結果が出ることを期待しております。

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