理事長定例記者会見
奥村理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします
日時:平成29年10月13日(金) 13:30-14:00
場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム
司会:広報部長 庄司 義和
国際宇宙会議(IAC:International Astronautical Congress)について
2017年9月25日~29日にオーストラリアのアデレード市にて、第68回国際宇宙会議(IAC)が開催されました。この会議は、世界各国の宇宙機関、産業界、大学等の関係の皆様が集まり議論する場で、宇宙に関する世界最大の会議です。私も毎年必ず出席しております。今回も各国の宇宙機関長が多数おみえになり、活発な議論を行いました。会議全体としては、宇宙機関長がプレナリーに登壇して、統一されたテーマで議論、意見交換をしました。今回のテーマはやや難しく、「Business before Science or Science before Business」という、やや抽象的な標題でした。全スケジュールを通して、参加者は約4,500人だったそうです。
今回のIACでは、JAXAからは樋口技術参与がIACの運営母体である国際宇宙航行連盟(IAF)の前会長の立場で出席したほか、向井宇宙飛行士/技術参与、若田宇宙飛行士/国際宇宙ステーションプログラムマネージャが、それぞれプレナリーイベントに登壇し、JAXAの取り組みについて紹介してもらっています。
IACへの参加以外に、何か国かの宇宙機関長と個別のバイ会談を行い、それぞれの機関との協調関係の現状確認や今後どのように協力を進めるのか意見交換も行いました。
また、この会期中、オーストラリア政府から、オーストラリアにも新しい宇宙機関を設立するとのニュースも発表になり、大変盛り上がった会議になりました。来年はドイツで開催される予定です。
国際宇宙航行アカデミー(IAA:International Academy of Astronautics)について
IACの前日に国際宇宙航行アカデミー(IAA)が開催され、宇宙分野で顕著な業績を挙げた世界の研究者、技術者の講演などが行われました。この会議の場で今回7つの賞が授与されておりますが、このうちの3つをJAXAの関係者が受賞するという、大変ありがたいことになりました。1つ目は、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」のチームが、その先端的な推進システムを実証したということで、「IAA Laurels for team achievement award」を受賞しました。2つ目は、基礎科学、エンジニアリング、ライフサイエンス、および社会科学の4分野あるセクションの表彰のうち、「ライフサイエンスアワード」を向井宇宙飛行士/技術参与が受賞しました。宇宙医学生物学研究室をJAXA内に立ち上げ、この関係の研究者を糾合して、この分野の発展に大きな貢献をしたことによる受賞です。3つ目は「エンジニアリング・サイエンス・アワード」で、木部特任参与が受賞しました。木部特任参与は、長年スペースデブリの問題に取り組み、国際的な研究開発あるいは技術調整といった面で活動してきました。こうした長年に亘る業績が高く評価され、今回の受賞に至りました。7件中3件をJAXA関係者が受賞したことは大変嬉しいニュースで、私も大変誇りに思っております。
また、木部特任参与においては、IACを運営するIAFという団体、前に樋口技術参与が会長を務めておりましたが、その副会長にこの度選任されました。任期は向こう3年です。日本・アジア地区の代表として、世界のコミュニティと協力しつつ、活躍することを期待しております。
金井宇宙飛行士の搭乗準備状況について
金井宇宙飛行士の搭乗については、12月17日の打ち上げをロシアの国営企業ROSCOSMOSが発表しております。正式にはJAXAあるいは国際宇宙ステーション(ISS)に参加している機関が飛行準備審査会を経て、問題が無ければ打ち上げることになりますので、「打ち上げ目標日」とご理解下さい。審査会が終わり、正式に打ち上げ日時が決定しましたら、改めてお知らせいたします。
金井宇宙飛行士は日本での最後の訓練の機会として、今月、JAXAに戻ってまいります。その機会をとらえて、10月26日の午後、パシフィコ横浜にて開催予定の打ち上げ直前のイベント「SPACE MEETS YOKOYAMA~きぼう、その先へ~」に参加してもらう予定です。同時に、新しい世代の宇宙飛行士である油井宇宙飛行士、大西宇宙飛行士にも参加してもらうことになっております。国際宇宙ステーションや「きぼう」日本実験棟の成果、将来展望について語ってもらおうと思っております。是非、皆様にもお越しただきたいと思います。
「きぼう」日本実験棟でのマウス長期飼育ミッションの近況について
少し前に、第1回目のマウス実験の報告をいたしました。生きたままでマウスを打ち上げ、生きたままで帰還させ、現在詳細解析中です。このようなマウスの軌道上での長期飼育および生存帰還に関する、Multiple Artificial-gravity Research System(MARS)と呼んでいる飼育装置のシステムや実験速報について、9月7日に公表したところですが、Natureの姉妹紙であるScientific Reportsに3大学と一緒に共著論文として掲載されました。重力のみの影響を抽出した基礎研究として、マウスを用いた可変重力環境研究が本格的に進められています。
引き続き第2回目のマウス長期飼育ミッションを8月17日~9月16までの30日間実施し、今回も全数12匹を生きたまま打ち上げ、生きたまま帰還させることが出来ました。今後予定される第3回目のミッションでは、初めて遺伝子改変をしたマウスをゼロG環境で飼育しようと計画しており、JAXA内にあります遺伝子組換え実験委員会、あるいはPIの先生の所属する大学で同様の審査機関にて審査され了承されております。このような実験は世界でも私共だけですので、積極的に宇宙環境を活かした新しい知見を発掘して参りたいと考えております。
女性の活躍度を示す「えるぼし」のJAXA認定取得について
9月28日付けで、厚生労働大臣から、JAXAの女性の活躍推進に関する活動状況についてご評価いただき、3段階ある最上位の認定を受けました。愛称「えるぼし」と言います。女性活躍推進法に基づく認定で、JAXAでは2013年10月に男女共同参画推進室を作り、女性の力を宇宙航空分野に積極的に取り込みたいという考えで、職場環境の改善、あるいは職員の意識改革といったことを強力に進めてきたつもりです。これらの地道な活動状況が厚生労働大臣のもとでご評価いただけたものとして、大変喜んでおります。こういったことを機会に、優秀な女性の方がJAXAで働きたいと集まってくだされば、私としても大変嬉しいです。
現在は、男女共同参画推進室を改めてワークライフ変革推進室に変え、全職員の働き方改革を施策として進めております。職員一人一人の労働生産性を上げるべく、様々な改革をさらに進めていき、より良い成果を皆様に提供できるように頑張ってまいりたいと思っております。