理事長定例記者会見
奥村理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします
日時:平成29年11月10日(金) 13:30-14:15
場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム
司会:広報部報道・メディア課長 永松 愛子
「きぼう」日本実験棟における超小型衛星放出プラットフォーム利用の事業化(事業者募集)に向けた情報提供依頼(RFI)の実施について
「きぼう」日本実験棟からの超小型衛星放出は、2012年10月に星出宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在時から始まり、これまでのところ、日米あわせて200機の衛星放出実績があります。この活動は各方面から高く評価されております。国際親善、国際友好といった観点からも高く評価されており、JAXAにとっても貴重な財産になっております。「きぼう」のエアロックやロボットアームを含むユニークな放出機構が価値を生み出す源になっています。現在の放出能力は年に10ユニット(U)程度ですが、2020年ぐらいには年100Uぐらいにしたいと考えております。
超小型衛星の国内外のマーケットを私たちなりに調べた結果でも、また他機関の調査結果でも、将来性や多くの需要が見込まれます。今後大いに成長する分野として、ぜひ民間事業者のお力を借り、超小型衛星放出事業を担っていただきたいと考えております。
本日の会見後、事業者募集の意見提案要請(RFI)を発出する予定です。発出後、11月下旬に説明会を2回開催したいと考えております。
「飛翔」を用いた機体騒音低減技術のFQUROH飛行実証試験について
9月の定例記者会見でも報告しましたが、2014年から「飛翔」を用いた機体騒音低減技術の実証実験を行ってきました。今回、能登空港で最後の実証実験を実施しました。結果につきましては、フラップや主脚等、騒音低減が難しい部位においても、設計の期待値どおりの低減が出来たことを確認できました。具体的には、新たな機体に適用した場合には、4dBぐらいの機体騒音低減効果が見込める結果でした。過去50年間低騒音化の努力をしてきましたが、50年間でエンジン改良等によって約10dB下がってきたのに対して今回のプラス4dB低減ということで、効果としては大変大きいと考えております。社会的インパクトとしては、空港進入時の旅客機の騒音基準を超える地域を半減できる、あるいは空港に着陸する着陸料に係る騒音課金制度の料金を下げることが出来る経済的効果も期待できます。当初計画では、この技術を三菱リージョナルジェット(MRJ)で実証する予定でしたが、MRJの進捗状況を踏まえて、引き続き航空機の実証を、実用の中で検討していくことになるかと思います。
この技術については、共に開発をしている川崎重工業株式会社、住友精密工業株式会社、三菱航空機株式会社、3社と共同研究をしておりますので、これら各社に技術移管をして、それぞれ実証、さらには将来の事業展開をご検討いただくように進めたいと考えております。
アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)について
11月14日(火)~17日(金)の間、インドのベンガルールでアジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)が開催されます。これは、文部科学省とJAXAが主催し、インド宇宙庁(DOS)、インド宇宙研究機関(ISRO)の共催により開催され、私も出席します。
APRSAFも今年で24回目の開催となり、実績を積み重ねてきました。今回は、各宇宙機関の機関長等9名がご出席の予定です。元々APRSAFは、国を超えて宇宙機関同士のニュース共有の場として開催されていました。最近、私共JAXAが進めております、宇宙情報を社会課題の解決に貢献させていきたいという方向性について、各宇宙機関とも協力・同調していただき、今回はさらに一歩進めた形として、アジア・太平洋地域の国々の宇宙機関が集まり、これまでの成果を初めて共同宣言のようなものがまとめられないか、現在調整を進めております。
この地域は、世界の2/3以上の人口を抱え、また様々な自然災害が起こる地域でもあり、文化的にも民族的にも多様性にとんだ地域であります。こういった地域で、宇宙技術の社会課題解決への貢献ということが共同宣言としてまとまれば、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)について、こういったことにもこの地域からの貢献として発信できるのではないかと考えており、是非とも成功させたいと思います。
今回のもう一つの特徴は、各国からは政府の宇宙政策担当者にご出席いただきます。日本からは、内閣府及び文部科学省の審議官にご出席いただけると聞いております。このセッションで、各国の宇宙政策をそれぞれご紹介していただき、政策レベルでの共有・連携の可能性についても議論する予定です。これまでのAPRSAFとは趣の変わった姿を、今回からお見せすることになると思います。
また、この機会を利用して、来年3月に開催される「第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF-2)」に向け、この地域の宇宙機関からの出席者と、宇宙探査活動が社会経済にもたらす効果等の議論等を行う機会を設けたいと考えております。
さらに、ベトナムとの関係ですが、JAXAとベトナム国家宇宙センター(VNSC)との間で、協力協定を締結する予定です。ハノイ市郊外ホアラックハイテクパークに、日本の政府開発援助(ODA)で宇宙展示館が出来るということで、そこの運営協力に、私共の力をお貸しすることにしております。
今回インドで開催されるAPRSAFは、各国代表とも十分結果に満足できるようなものにしていきたいと考えております。
気候変動枠組条約第23回締結国会議(COP23)について
今週から、ドイツのボンで気候変動枠組条約第23回締結国会議(COP23)が開催されておりますが、JAXAは日本政府を支援し、サイドイベントを主催および共催しております。COP23に向けて、日本政府の発出した「日本の気候変動対策支援イニシアティブ2017」が公表されておりますが、この中に、私共JAXAの温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による、全球規模での継続的な観測等を通じ、各国の排出量把握及び削減取組の透明性担保に貢献、との役割がはっきりと記載されております。この役割を果たすべく、サイドイベント等を通して、各国の代表にアピールしていきたいと考えております。
この後、2019年にIPCCにてガイドラインの改訂が計画されております。このガイドラインの正式名称は、「気候変動に関する政府間パネル国別温室効果ガス排出インベントリガイドライン」と言い、各国が温室効果ガスをどれだけ排出したかを一覧にまとめたインベントリ作成や比較の仕方についてのガイドラインをまとめたものです。温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」が宇宙から観測したCO2あるいは地球温暖化効果ガスの役割を明記し、より適切な地球温暖化予測と対策に生かしてもらおうと、日本政府を中心に、JAXAも協力してこの活動を進めております。
JAXA理事長表彰技術「IV&V」の体系化及び産業育成について
JAXAでは、毎年1回、顕著な業績を挙げた個人、組織を表彰しておりますが、今年個人で理事長表彰を受けた方を紹介します。
研究開発部門第三研究ユニットの片平真史研究領域総括です。
宇宙機は両極化してきており、小型の方は徹底して安く小さく、一方私共が主に手掛けている高機能衛星は、より高機能化、複雑、大型化してきております。こういった宇宙システムになりますと、ソフトウェアの占める比率が非常に多くなります。ソフトウェアの信頼性をどう担保するかということが極めて重要で、宇宙機の信頼性確保の土台を支える技術です。
この分野において、JAXAで指導的な役割を長年に亘ってしてきており、まだ独自の技術を開発した片平研究領域総括を理事長表彰として表彰しました。一見皆さんから見え難い分野ですが、我々JAXAの非常に貴重な人材として、私は高く評価しております。