理事長定例記者会見
奥村理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします
日時:平成30年2月16日(金) 13:30-14:15
場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム
司会:広報部長 庄司 義和
SS520 5号機の打ち上げ実験実証実験について
2月3日にSS-520 5号機の実証実験を実施し、分離・軌道投入に成功しました。いろいろな方に大変ご協力いただきました。ここで改めて関係各位にお礼申し上げます。
今回の実験は、民生品を活用した宇宙機器の軌道上実証実験として、経済産業省の宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業のご支援をいただき行ったものです。小型ロケットの実証実験を通して、日本の民生品の宇宙品質を証明することができたのではないかと思っております。
また、今回の実験成功の結果、民生品を使いこなすための基準、あるいはロケットを小型化するうえでの技術基準をまとめ、民間事業者でこの分野を実施したいという企業があれば、今回の知見成果をご活用いただくように進めてまいりたいと思っております。
それと同時に、今後とも実証実験機会を確保し、さまざまな新しい技術チャレンジを成功に導くことによって、民間活動とJAXAの活動成果を有機的に結びつけ、ウィンウィンの関係を続けていきたいと考えております。
金井宣茂宇宙飛行士の活動状況について
すでにご案内のとおり、金井宜茂宇宙飛行士は、2月16日夜から未明にかけて船外活動を行うことになっております。
今回の船外活動では、ロボットアーム先端の把持機構の移設や船内回収作業を、米国のヴァンデハイ宇宙飛行士と協調して行います。その様子は、本日19時半から、NASAテレビにおいて放映される予定です。それに先立ちまして、19時から19時半までの間、JAXA放送にて、大西卓也宇宙飛行士と尾藤日出夫インクリメントマネージャーが、船外活動に関する解説を行う予定です。ご関心のある方は、是非ご覧いただきたいと思います。
また、アジアン・トライ・ゼロGの実験を、2月13日(火)に実施いたしました。JAXAでは、これまでも「きぼう」日本実験棟のアジア太平洋地域における利用推進を目的に、APRSAF参加国の学生さんから応募いただいた実験アイデアを選抜し、それをJAXAの宇宙飛行士がきぼう日本実験棟で実施するスキームを作ってきました。この取り組みは既に過去5回行っており、今回が第6回目です。
実施に当たっては、各国の実験提案者である中高校生、今回に関していうとインドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン及び日本ですが、更に各国の大使館、宇宙機関関係者が筑波宇宙センターの運用管制室で実験の様子を見守りました。
日本人宇宙飛行士の長期滞在機会を生かしてこうした実験を継続することは、アジアで唯一のISS参加国である日本にとって非常に重要な役割だと考えており、こうした機会をより積極的に生かしていきたいと思っております。
ジオスペース探査衛星「あらせ」の科学成果について
ジオスペース探査衛星「あらせ」は、一昨年12月に打ち上げて、昨年の3月から定常観測に入っておりました。その定常観測開始から1年経つ前に目覚ましい研究成果が出まして、15日にネイチャーに発表いたしました。
今回の成果は、「あらせ」と地上のオーロラ観測カメラとの同時観測によって、これまでの観測では得られなかった極めて決定的な証拠を得たというものです。
具体的にはJAXAのホームページで詳しく紹介しておりますので、そちらをご参照いただければと思います。カーテン状のオーロラのほかに斑点状のオーロラが出てきて脈動オーロラができますが、その発生メカニズムについて、過去に積み上げられてきた理論を裏付ける決定的な証拠が、「あらせ」と地上との同時観測により得られたということです。
冒頭触れたように定常観測開始から1年ですが、その早い時期に、このような立派な科学成果が得られるのは、極めて幸いなことです。定常観測移行後比較的すぐに、この貴重な実験結果を観測できたことから、1年足らずの間に論文として成果発表する運びとなりました。
あらせは、現在も順調に動いておりますし、今後とも新しい科学成果が次々出てくると期待しておりますので、皆さま方もご関心を持っていただけたらと思っております。
災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)協力に対する総務省消防庁長官からの感謝状について
航空技術部門で実施している災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)については、ヘリコプターに情報交換機器を積み、相互の連絡を取り合って、災害救助の際により効果的効率的にヘリコプターの運航を行うということで、かねてより消防庁と連携を組んで開発・実用を進めてまいりました。
昨年7月の九州北部豪雨において、総務省消防庁との技術協力の推進に係る取り決めに基づき、JAXA職員を現地の災害対策本部、及び霞ケ関の消防庁に派遣して、D-NETとそれを進化させたD-NET2を活用いたしました。
そのことにより、緊急消防援助隊の活動を支援し、人命の救助及び災害の軽減に貢献したとして、2月8日に消防庁長官から感謝状をいただきました。
JAXAは今後ともD-NETの高度化、汎用化の取り組みを続けていきます。より具体的には、人工衛星との情報交換、例えば、だいち2号、あるいはそれ以外の衛星との連携、あるいは小型無人飛行機による災害情報収集などを、より一層情報の一元化を図って、救助対策の効率化に貢献してまいりたいと考えております。
この話を、皆さんに紹介する趣旨は、国全体として研究開発成果の最大化を図るという私どもの役割があるからです。この趣旨に則って、ほかの機関と協力して成果をご利用いただけるよう努力してきたわけで、今般、その成果が出たのではないかと思い、紹介させていただきました。
晴天乱気流検知システムの飛行試験の実施について
昨年の8月に紹介したとおり、晴天乱気流検知システムについて、飛行中の乱気流を検知する仕組みの開発を行い、事前にこれを回避しようというプロジェクトを立ち上げ、これまで進めてきたところです。いよいよボーイング社の実用飛行機に搭載して実証実験をする機会がまいりました。
搭載する装置は共同研究相手方である三菱電機株式会社と開発したもので、今年3月から4月にかけて、ボーイング777を使って、実証実験を行うことになりました。
2月22日に、アメリカ・シアトルにあるボーイング社の格納庫で、今回の飛行実験で使用する777が公開される予定です。機体にはJAXAロゴを含めたデザインデカールが施されます。
また、この晴天乱気流検知システムをはじめ、今回の飛行実験で実証する技術を展示して、概要説明も行われる予定です。日本のメディアの方も参加可能だと聞いておりますので、ご関心のある方はお問い合わせください。
宇宙ビジネス投資等マッチング・プラットフォーム(S-Matching)への協力について
宇宙ビジネス投資等マッチング・フォーラムは、13日の閣議後記者会見で、松山宇宙政策担当大臣が発表された件ですが、内閣府と経済産業省が共同で、我が国における宇宙関連ベンチャー企業等の創出を目的に、新たなビジネス・アイデア等を有する個人・ベンチャー企業と投資家・事業会社とのマッチングを円滑化するというための場を設定しました。この場が、宇宙ビジネス投資等マッチング・プラットフォーム、略称S-Matchingです。
このS-Matchingにおいて、JAXAは新規アイデアと投資とのマッチングの際の技術的な助言、協力等を期待されており、そういう役割で参加いたします。この活動により、宇宙関連ベンチャーが日本でも数多く誕生して、日本の宇宙産業がより活発になることを期待しております。
去年紹介したとおり、日本政策投資銀行との連携により、我々が保有する宇宙分野におけるネットワークや関連技術のノウハウを、銀行の投資判断に生かしてもらおうと、既に協力協定を結んで協力してきたところです。
こうしたことも、研究開発法人の一つの役割ではないかと考えております。
第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)について
第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)が3月3日に開催されます。開催まであと2週間ほどですが、この閣僚会合に合わせて3つのサイドイベントを企画、準備しております。
一つ目は、産業界を対象にしたI-ISEF。2つ目は、ヤングプロフェッショナルを対象にしたY-ISEF。それから、3つ目が、高校生向けのS-ISEFです。
2014年にワシントンで開かれた第1回目のISEFに、私も当時の大臣に随行してISEFに出席しておりますが、こういった試みはありませんでした。そういった意味では、今回、新たに日本独自で工夫した取り組みであります。
そういう意味で、新しい取り組みを含め、大変重要な時期に開かれるこのタイミングに合わせて、文部科学省をはじめ関係府省に協力して、我々としても全面的にISEF2を支援してまいりたいと考えております。