理事長定例記者会見
奥村理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします
日時:平成30年3月9日(金) 13:30-14:10
場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム
司会:広報部長 庄司 義和
第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)を終えて
2月28日から3月4日まで、宇宙探査における国際協力の促進を目的として、閣僚級の政府間対話・意見交換等の会合とサイドイベントが開催されました。サイドイベントは前回会合にはなく、日本開催に当たり用意したものです。
3月3日の本会合には、私どもJAXAは政府とともに議論に参加して、一定の役割を果たしたのではないかと思っています。特に、宇宙機関を含む各国の方々と宇宙探査における国際協力について意見交換ができたと感じています。
また、この機会を利用して、会合にお見えになった各国の宇宙機関長、例えばNASAライトフット長官代行をはじめ、ESA長官、CNES、DLR、UAEなど主要な国の宇宙機関長と2機関間の会談を行いました。その成果の一つとして、持続的な月探査に向けた技術実証ミッションの検討を行うとして、ESAとの共同声明を3月3日にプレスリリースしました。
さらに、林文部科学大臣及びISSに参加している5極の宇宙機関長が一堂に会し、ISSにおける今後の協力や、月軌道のプラットフォームゲートウェイをはじめとする今後の宇宙探査における協力について意見交換を行いました。今後の国際宇宙探査においても、ISSの経験を有するこの5極が中心、中核となって協力していこうと、確認したところです。
星出彰彦宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在及びISS船長就任の決定について
既に3月2日の林文部科学大臣の閣議後記者会見で発表していただいたとおり、ISSの多国間調整パネルの承認をいただきまして、星出宇宙飛行士が国際宇宙ステーションの第64次/65次の長期滞在ミッションに搭乗すること、及び第65次のISS船長(コマンダー)に就任することが決まりました。私からも改めて報告させていただきます。
2019年の終わりごろから半年間、ISS第62次/63次の長期滞在の野口宇宙飛行士の滞在に引き続いて、2020年の5月ごろから約半年間、星出宇宙飛行士がISSに搭乗する予定です。
2020年7月24日から東京オリンピックが始まりますので、この期間に星出宇宙飛行士はISSに搭乗しているタイミングになるわけです。ISSからのエールやコラボレーション活動も実現できればと考えておりまして、今後、具体的な企画を進めていきたいと思います。
以前に紹介したとおり、2020年の東京オリンピックに向けてのJAXAの協力は、既に組織委員会との間に合意ができておりまして、具体的な活動も始まっています。そのひとつに、東京2020応援パラパラ漫画があります。これは、金井飛行士が、宇宙空間でも、パラパラ漫画、ぱらぱらっとこうやって見ると動画のように見える漫画ですが、軌道上でこれにチャレンジするということで、3月20日にJAXA YouTubeチャンネルでその様子を配信する予定です。ご関心あればご覧ください。
このように、この2020年は、日本人宇宙飛行士が1年にわたってISSに滞在するという、これまでにない年であり、さらには、この年に次世代の基幹ロケットH3の試験機1号機が打ち上げられるという計画もありますし、リュウグウに到達したはやぶさ2が地球に帰還する年でもあります。そういった意味でも、この2020年はまさに宇宙イヤーと申し上げても過言ではない年です。JAXAにとっても大変やりがいのある大きなチャレンジの年でもあり、その準備を着々と進めていきたいと考えております。
はやぶさ2の現状
はやぶさ2は、現在、順調に飛行しており、今日現在では、リュウグウから100万キロの位置にございます。
今年6月から7月にかけてのリュウグウへの到着を目指して、現在、第3回目のイオンエンジンの長期間の連続運転をしています。リュウグウへ到着後、リュウグウ表面の広範囲の観測を行い、タッチダウン地点を決定する必要があります。さらに、ヨーロッパとの共同開発による着陸機MASCOTや、国内で準備したローバーMINERVA-Ⅱを小惑星表面に投下して、表面の科学観察を行います。到着後、最大3回のタッチダウンを計画しておりまして、表面物質を採取し、それを持って帰る予定で、2020年に回収サンプルとともに地球に帰還予定です。状況が許せば、この3回目のタッチダウンはクレータの中の地下物質の採取を試みます。人工的なクレータを小惑星に作る試みは世界初となります。
今年6月、リュウグウに接近する頃から、定期的に記者の皆様方への説明会開催を計画しております。正式な日時は改めて案内させていただきます。
AI搭載自動運転システムの品質保証に関する協力連携について
すぐれた技術に関しJAXA理事長賞という表彰制度があり、そのひとつに今年選ばれたのが「IV&V」です。昨年11月、この場にて、その技術の概要と、研究リーダーを紹介させていただいたところです。
この技術は、今後、システムの機能を確実に担保するうえでますます重要となるソフトウェアの信頼性を担保するということで、品質保証の重要な役割を担っています。自動車業界からこの技術を使えないだろうかというお話がございました。
将来、AI搭載自動車の自動運転化を行う場合、さまざまな走行環境のもとでAIがみずから判断を行うための動作予測が非常に難しいことが課題となっています。ルールのもとで安全な制御を実現するための品質保証をどのように行うかが大きな技術課題になっており、この課題に対して、私どもが現在持っている2つの技術を紹介します。
その一つの技術は、私どもが日常的に扱っている巨大かつ複雑なシステム技術による宇宙機を安全に制御するソフトウェアの安全評価するための解析手法であり、安全性評価解析技術と呼んでいます。この技術と、それを独立的に品質保証する「IV&V(インディペンデント・ベリフィケーション・アンド・バリデーション)」の2つの技術を組み合わせて、AI搭載自動車の安全運転に関する品質保証の検討を、今後、向こう1年間かけて、来年の3月に検討結果をまとめることを目指し、一般社団法人日本自動車工業会と合意をしたところです。
JAXAは、このような協力で得られた技術、成果を用いて、AI搭載自動車のみならず、宇宙機における安全なAI搭載システム、あるいは自動車以外の産業でも加速するAIの活用についても、私どもの技術が適用可能かどうか検討してまいります。
さらに、AIの安全性に関しては海外においても重要な課題になっていますので、将来にわたっては、国際展開も期待しています。