平成30年10月理事長定例記者会見

理事長定例記者会見

山川理事長の定例記者会見のトピックスをお伝えします

日時:平成30年10月12日(金) 13:30-14:15

場所:JAXA東京事務所 B1F プレゼンテーションルーム

司会:広報部長 鈴木 明子

冒頭挨拶

 本日、柴山 昌彦 新文部科学省大臣に金井宇宙飛行士とともに表敬訪問に行ってまいりました。その際にも皆様から質問をいただきましたが、昨日、ソユーズ宇宙船56Sの打上げから数分後、ロケットに問題が発生して、搭乗していた米国とロシアの宇宙飛行士2名は帰還モジュールにより地上に帰還したとの報告を受けました。まずは、宇宙飛行士2名が無事に帰還したことに、安堵しています。
 これからロシアにより原因究明がなされていきますが、今後の事態は、ISS計画参加各国との緊密な連携協力のもと、適切な対応が講じられることが重要と考えます。
 引き続き、状況を正確に把握し、各国と密接に連携を図ってまいります。

国際宇宙会議(IAC: International Astronautical Congress)への参加結果について

 10月1日(月)から10月5日(金)の間、ドイツ・ブレーメン市において国際宇宙会議(IAC)が開催され、私も出席してきました。
 今回は宇宙機関・大学・産業界などから、過去最高の83か国から6,500人以上の参加を得て、盛大に開催されました。
 私自身は、宇宙機関長が登壇して行うパネルディスカッションにNASA長官、ESA長官、DLR長官らとともに参加したほか、多くの宇宙機関長とのバイ会談を実施いたしました。オーストラリア、イギリスの宇宙機関長とは初の面談でしたが、個人的な信頼関係を構築できたのではないかと考えております。
 私以外にも、IACの主要プレナリセッションに大西宇宙飛行士、松浦宇宙利用統括が登壇したほか、若田理事が有人宇宙関係の複数のセッションに登壇しました。
 折りしもIAC会期中、にDLR(ドイツ航空宇宙センター)とCNES(フランス国立宇宙研究センター)が製作した小型着陸機MASCOTが「はやぶさ2」から放出され、小惑星リュウグウへ着陸する運用が重なりまして、多くの人の注目を集めました。MASCOT放出当日にはDLR長官、CNES総裁とともに、記者会見に登壇して、放出成功を発表しました。
 併せて、MASCOTの次のステップとして、JAXAで検討中の火星衛星探査計画(MMX: Martian Moons eXploration)においてもCNES、DLRが共同で小型着陸機を開発することとし、三者で共同声明を発表しました。また、X線分光撮像衛星(X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission: XRISM)におけるNASAとの協力に合意いたしまして、了解覚書を締結いたしました。
 更に、国連宇宙部(UNOOSA)との協力により共同メディアブリーフィングを持ち、KiboCUBE(国連宇宙部との連携協力による国際宇宙ステ-ションの日本実験棟「きぼう」からの超小型衛星放出機会の提供)に関する第4回公募開始を発表しました。
 全体としてJAXAの存在感を示すことができたのではないかと考えております。

宇宙科学探査についての進捗について

(1)「はやぶさ2」について

 「はやぶさ2」については、先月の定例会見から大きな進捗がございました。
皆さまもご存じのことかと思いますが、9月21日には、小惑星上をホッピングで移動して観測を行う小型探査ロボット「MINERVA-II1」(ミネルバ・ツー・ワン)の分離運用が成功しました。

 小惑星まで55mの高度まで降下し、2機のMINERVA-II1を分離、着陸させました。2機のMINERVA-II1はいずれも表面でホップを行ったことが確認され、リュウグウ表面からの多数の鮮明な画像を送っています。「はやぶさ」では初代MINERVAの小惑星着陸はできませんでしたが、今回、MINERVA-II1の成功によって、小天体上で移動するローバは世界初の快挙を成し遂げました。
 また、先ほどもお話ししたように、IAC国際宇宙会議の期間中に放出した小型着陸機MASCOTも無事にリュウグウへの着陸が確認されました。DLRによると、MASCOTは分離から17時間動作し、すべてのデータを「はやぶさ2」へ送信、10月4日に運用を終了したとのことです。取得データはドイツのMASCOTチームへ伝送しており、本日(10月12日)にも、DLRから最初の成果発表を行うとのことです。
 昨日の記者説明会では、「はやぶさ2」のタッチダウンに向けたリハーサルとタッチダウンの方針についてご案内いたしました。これまでの降下運用における航法誘導の実績や、リュウグウ表面の観測結果を考慮し、来年1月以降に第1回タッチダウン運用を実施する予定です。2019年1月以降の運用スケジュールは、今月予定している計2回のタッチダウンリハーサルの終了後、11月から12月の期間中に検討を行います。来年のタッチダウンに向け、慎重かつ着実に準備を進めていきます。

(2)国際水星探査計画BepiColomboの打上げについて

 JAXAとESAが共同で進める大規模な水星探査ミッション「BepiColombo(ベピコロンボ)」ですが、いよいよ今月10月20日(土)日本時間10:45に、フランス領ギアナ宇宙センターよりアリアン5ロケットにて打上げ予定です。
 先月に、JAXA担当の水星磁気圏探査機「みお」(Mercury Magnetospheric Orbiter: MMO)とMPOの2機の水星探査機が最終コンフィギュレーションにて結合し、ESA担当の水星表面探査機MPOおよび推進モジュール(Mercury Transfer Module: MTM)への燃料充填を終了しました。その後、2機の水星探査機「みお」とMPOに、推進モジュールが機械的にも電気的にも結合が完了し、打上げ状態となりました。いよいよ打ち上げに向けた最終準備へと向かっております。
 今月からはロケットのフェアリングの組み立てなども始まっており、探査機がロケットに組み付けられ、そしてロケットと探査機との間のインターフェース部品の結合や多層断熱材の取り付けなどの打上げ準備も順調に進行しています。
 ギアナ宇宙センターの他、ドイツのダルムシュタットにありますESAのミッションコントロールセンターにも、運用担当者や研究者が集まり、探査機の運用にも備えています。
 JAXA担当の水星磁気圏探査機「みお」は、水星磁場が作るバリア(磁気圏)や水星がもつごく薄い大気に対して強大な太陽風が与える影響を詳細に調べることが目的です。ESAのMPOはより水星本体に着目し、地表の地形や鉱物・化学組成などを調べます。MPOと「みお」が協力して、太陽風が水星の環境や表層にどのような影響をもたらしているかについても明らかにすることが期待されています。
 打上げ時には、このプレゼンテーションルームにプレスセンターを開きます。ESAから配信される打上げ実況中継に日本語通訳を供しながら、JAXA宇宙科学研究所 藤本副所長および久保田研究総主幹が技術解説を実施いたします。また皆様からのBepiColomboに関するご質問をお受けいたします。休日ではありますが、どうぞご参集ください。

H-IIAロケット40号機による温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)の打上げについて

 すでにプレスリリースでお知らせいたしました通り、今月29日に、種子島宇宙センター大型ロケット発射場より、H-IIAロケットにて打ち上げる予定です。先月2日は、種子島宇宙センターにて、いぶき2号の機体公開も行いました。
「いぶき2号」(GOSAT-2)は、JAXAと環境省(MOE)、国立環境研究所(NIES)の3機関による共同プロジェクトで、2009年に打ち上げた世界初の温室効果ガス観測に特化し、かつ全球分布の測定を行う技術衛星「いぶき」(GOSAT)の後継機です。「いぶき2号」は、2014年から開発に着手し、「いぶき」よりも大幅に精度を向上させた温室効果ガス観測センサを搭載しています。二酸化炭素の観測精度は8倍に、メタンの観測精度は7倍に向上しています。
 なお、設計・製造を担当するプライムメーカは三菱電機株式会社です。
 地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」のもと、地球規模で排出抑制策を考えていかなければなりませんが、そのためには、まず、全球の温室効果ガスの排出量について、排出源も含めて精度よく把握することが極めて重要となります。
 「いぶき2号」は、二酸化炭素・メタンの観測精度を高めるとともに、新たに一酸化炭素を観測対象に加え、人間活動に由来した温室効果ガスの排出の推計に資するデータ取得を目指しています。
 また、地球温暖化対策の政策決定に必要な、信頼性の高い全球規模のデータを提供するためには、ひとつの衛星からのデータだけでは十分ではなく、各国の宇宙機関が協力して、各国の衛星による温室効果ガス観測データの品質を向上させることはもとより、衛星毎のデータの齟齬をなくし、プロダクトの均一性を図っていくことも必要です。
 そのため、JAXAは国立環境研究所とともに、NASA、ESA、CNES及びDLRをはじめとする宇宙機関と協定を締結し、互いのデータの齟齬をなくし、プロダクトの均一性をはかる取り組みを行っています。GOSAT-2については、打上げ1年後のデータリリースに向け、年明けごろから、協力相手方の宇宙機関にデータを提供し、相互に校正・検証を行う予定です。
 現在、「いぶき2号」は、推薬の充填も完了し、ロケットと結合するための作業を順調に進めております。

機構元役員による収賄事案に関する調査検証チームの活動状況

 本件につきましては、9月の定例会見の時点では、調査検証チームが鋭意調査中であり、具体的な内容について述べることは控えさせていただきました。調査・検証活動が一定程度進んだだめ、現時点で申し上げられる範囲で報告させていただきます。
 JAXAのホームぺージでもお知らせいたしましたとおり、8月15日の機構元役員の起訴を受け、同日、JAXAの調査検証チームを設置しております。本チームの調査・検証の目的は、機構元役員が捜査を受けたことを契機として、JAXAの業務運営上の問題の有無を明らかにし、再発防止のための業務改善案を検討することと考えております。
 このJAXAの調査検証チームは、同日に文部科学省大臣決定により立ち上げられている「文部科学省幹部職員の事案等に関する調査・検証チーム」が実施する文部科学省職員の服務規律の遵守状況等の調査とは異なる目的のものであり、文部科学省の調査検証活動とは連携をしない、独立した調査検証チームでございます。
 調査検証チームは、人事担当理事である鈴木理事をチーム長として、評価・監査部長、経営推進部長、人事部長が構成員となっています。外部有識者として、外部弁護士2名に入っていただいております。
 これまで4回の会合を実施しておりますが、現時点での調査検証活動の進捗について、ご報告いたします。
 JAXA調査検証チームでは、(1)機構の業務に関する問題の有無等、(2)法令遵守等に関する対応状況について、調査・検討の対象としております。
 まず、(1)機構の業務に関する問題の有無等については、機構元役員が図ったとされる「便宜」の事実関係をJAXAとしても確認し、JAXA業務とその執行に問題がなかったかを調査しております。調査対象は、公訴事実として挙げられた2件に限定せず、報道を通して把握している4つの案件、

東京医科大100周年記念事業への宇宙飛行士の講師派遣
通信衛星を用いた防災事業
ロケット打上げ視察
大手流通会社イベントへの宇宙飛行士の派遣

としております。

 加えて、現在、JAXA全職員に対してアンケートを行っており、機構元役員と同時に逮捕・起訴された関係者との接触の有無等を調査しています。
 次に、(2)法令遵守等に関する対応状況についてですが、現職の役員及び理事補佐に対し、外部有識者がヒアリングを行いました。これは、現在の倫理規程の運用状況の把握と今後の運用方策検討につなげるための情報収集として行っています。
 この他、JAXA調査検証チームの調査検証結果や、これから行われる公判の推移を踏まえ、JAXA調査検証チームが必要と判断する案件があれば調査対象を広げていきます。
 今後、11月中を目途に中間報告をまとめ、JAXAホームぺージおよび定例記者会見にてご報告予定です。
 また、調査検証チームの調査検証の結果を待って、もし、改善を要する問題点があれば、社内の仕組みの改善を行ってまいります。
 なお、本事案を受けて、既に全JAXA役職員に対しては、法令遵守の徹底を指示しておりますが、引き続き、研修や講習等の機会も活用しつつ、各役職員のコンプライアンス意識の維持向上を図ってまいります。

PAGE TOP